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Dull Blue - Intro / SHE'S

 記憶の中にタイムマシンで帰ってくるイメージだという、SHE'Sの最新アルバム『Memories』のイントロ曲。タイトルの「Dull Blue(くすんだ青色)」は、時間が経過して色褪せたかつての青春(=青)をイメージさせる。

 初めに聞こえてくるウ"――というざらざらした音は、古いレコードやゲームの機械音のようでどこか懐かしい。そこに重なる鳥のさえずりは爽やかかつ穏やかで、木漏れ日の差しこむ森の中へそっと足を踏み入れるようなイメージが浮かんでくる。

 12秒あたりから流れるピアノのメロディーは、とにかく優しい。たまらなく大切で愛しい宝物を丁寧に包み込むような優しいまなざしを感じる音。大切な人の手に撫でられながら微睡んでいるかのような温もりと安心感のある音色に、自然と郷愁を誘われる。その印象は、眠りから覚めてすぐのまだ意識がふわふわとしているときの感覚にも似ている。井上竜馬さんの奏でるピアノの音色は楽曲によっていろいろな色を見せるけれど、ときどき泣きたくなるくらいに優しい音色を聴かせてくるときがある。じんわりと温かくほっとするのに、同時に胸がきゅっとなるような切なさがあるのだ。

 やがてピアノが止むと、鳴り続けていた機械音とざわざわとしたノイズ音は段々と大きくなっていく。それは波がザザーンと押し寄せる音にも似ていて、懐かしい記憶に触れたことで溢れ出した感情が一気に押し寄せてくるような感じがある。埃の被った宝箱をそっと開ける瞬間のような、懐かしさと静かな高揚感。


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