ただの言葉
本を読みながら、こう考えた。わたしは、面白いことを考えていない。ひねりのきいた文章を書く気力がない。細かい設定を練る暇がない。
そんな暇があったら、新しい、読み捨てられる文章を書く。演奏するイメージで、ジャズとか、ストリートピアノのイメージで、町中のベンチを見つけ、膝の上で書く。
書くことについて書く、といっても著述トリックではない。多分、書く以前のことで躓いて、書く瞬間に戸惑って、書こうとしても「書いている」という事実に圧倒されて。
やっと書けた言葉が「わたしは書いている」ぐらいのものにしかなっていないのだろう。ただ、それが楽しいと思っているからまた書き始めてしまう。
何気なく放たれた、面白くもなんともない言葉が、頭の中に漂っている。
日々書く時間をさがしてあえいでいる。見返すことはないし、後悔もしていない。紙の上に残ったものを見ると、まだ生々しいものだけが残っていて、これは一体何だろうと思う。
息をするように書きたい。呼吸のように何でもない行為として、ただの言葉を書きたい。
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