小心者、火を焚く。
少し前にキャンプへ行った。
キャンプ場というよりは川沿いの自然公園的なところで、汲み取り式の便所がひとつあるだけ、水道はない、スマホの電波も入らないという、まあ、穴場というやつだ。
設営が終わると火を起こす。わたしのキャンプはとにかく焚き火である。少しずつ薪を足しながら、深夜までひたすら火を眺めた。
3時頃にようやく眠る気になったが、さて、ここで持ち前の気の小ささが出る。
熊が恐い。
※なお、この辺りは熊が出ないどころか近隣でも目撃情報すらない。
目は痛いわ乾くわで、寝なければいけないことは百も承知だが、とにかく寝入った途端に目が覚める。マインドが野営に向いてなさすぎる。仕方ないので、横になって外の音ばかりを聴いていた。
同行者のテントが開いて、しばらくして閉まる音。
木から落ちたどんぐりがテントを転がる音。
鹿の長い鳴き声。
狐の短い鳴き声。
脚の長い鳥が、空を飛びながら鳴く声。
小さな獣の兄弟がじゃれ合いながらテントの後ろを通り過ぎる声。
ふくろうの低く響く声。
雀のさえずり。
近くのキャンパーが起きて火を起こす音。
軽い雨音。
朝だ。
どこから夢でどこまでが現実なのか、分からなかった!
テントから這い出してみると、どうやら熊は来ていないし、雨は降っていたようだったが……。山にはいろいろ棲んでいるようだし、物珍しさで見に来たのかもしれん。
昼前までダラダラしてから、お邪魔しましたーと言って山を後にした。
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