【夢日記】タカクボの舟
地震以降コンクリートブロックで囲って入れなくしていた「死の内海」が、市長の尽力によりようやく漁で使えるようになった。
コンクリートブロックを取り除くために、内海で作業している漁師に声をかけることになった。今はそこで作業をする漁師は1人しかいないということだった。私はこの漁師が密漁者かそのような者だと思っている。
コンクリートブロックの近くに長い棒を刺して深さを測っている。取り除くための測量である。老いた漁師はそれを見ていた。
市長は、ブロックを取り除くので、立ち退いてほしいと言った。
漁師は立ち退かなければいけないことは分かっているようだったが、食い下がっていた。内海の出口にほど近い部分に漁師は立ち、動こうとしない。そばに行くと舟が沈んでいた。
長い棒を近くに刺すと舟が浮かび上がってきた。
木造の舟は先の大地震で真っ二つになっていた。断面は痛々しく「…栄丸」と船の名が書かれた部分だけが残っている。
漁師は訛った話し方で市長にタカクボを返してくれと言った。舟に乗っていた息子の名だろうと思った。
市長は低い声でそれはできないんです、と答えた。
漁師は静かに、どうして出来なんだ。と泣いた。
(2020.5.22)
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