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マッチングアプリで出会った男たちの話
アプリの男たち
マッチングアプリを使ってかれこれ10年近く経つだろうか。
その10年間ずっと使い続けたわけではなく、アプリをスマホから削除したり、アプリがあっても一切開かない期間なども含む。
その中で出会ってきた中で強烈な印象を残した数人をここに記録しておこうと思う。
①遅刻男
これは私が地元の東北を出て関東で暮らすようになり、最初に会った相手である。
彼は遅刻魔だった。
私の友人にも遅刻魔がいる。約束の時間から30分遅刻、1時間遅刻は当たり前、なんなら待ち合わせの時間に起きたと連絡が来ることもある。だからこの友人に関しては遅刻をするものだと思って理解しているので、逆に遅刻するであろう時間帯に合わせてこちらが行動することもある。
その友人でなく、誰が相手であっても、5分や10分、15分程度の遅れであればまったく気にはならない。なんならそのくらいの遅刻は私もよくしでかす。だから待ち合わせ相手の遅刻に関しては寛容なほうだと自分では思っている。
アプリで知り合った彼、ここは仮にAさんと呼ぶ。私がAさんと初めて会う約束をした日、Aさんから電車に乗り遅れそうだから集合時間に遅れると連絡があった。
「わかりました、ゆっくりでいいので気を付けて来てくださいね」と返事をしたと思う。いつも遅刻をした相手にはこのように返信するからだ。
それから彼は結構遅れて待ち合わせ場所にやってきた。
そしてへらへら笑いながら、「乗る予定の電車に乗り遅れそうだから諦めて、駅前でやっていた犬や猫の譲渡会を覗いてきてさらに電車に乗り遅れた」と言い放ったのである。
ハ?
と言いそうになったのを堪え、ニコニコと挨拶をして食事に向かったので、そのときの私は偉かったと思う。
そして食事である。どこのお店で食事を取るか決めていなかった。場所は池袋だ、カフェでも居酒屋でもなんでもある。だから適当に駅前の店に入ろうと歩き始めた。
するとAさんは鳥貴族に行きたいと言った。鳥貴族にしか入らないと。
当時私は鳥貴族がない東北から出て来たばかりだったので、よく話に聞く居酒屋という認識しかなかった。だからむしろ行ってみたかったし、鳥貴族の名前を聞いて焼き鳥を食べたくなった。だから特に違和感は感じなかった。
駅前、金曜の夜19時だったか20時だったか。そんな時間の鳥貴族など混んでいるに決まっている。一番近くにあったトリキは満席。待ち時間もかなりありそうだった。
Aさんは待つのを嫌がった。そして、近くにある別のトリキに行こうと言った。
私は都会の店など知らない。座って食事ができてお酒を飲めれば何でもよかったので、また別のトリキにもついていった。
2軒目のトリキも満席だった。当然である。
こうなれば席が空くまで待つかすぐに入れそうな別の店に行けばいいではないか。彼はトリキにこだわった。3軒目のトリキに向かうことになった。
3軒目だって満席である。こうなるとAさんはさすがに諦めたのか、ここで席が空くまで待とうと言った。
なぜトリキでなければならなかったのか? それは彼がケチだったからである。
トリキで無事食事を済ませ、話も弾んだのでハシゴして2軒目に行こうとなったとき、あの店は高いからダメそこも高いからダメ、あそこなら安いからいい、と全国にある居酒屋チェーンに入った。店名は覚えていないが、本当にどこにでもある居酒屋だったのを覚えている。
そんな感じで、毎回ものすごい遅刻、よくわからない言い訳、最安価の店を巡る男だった。
3度目のデートでも遅刻をされて、私が待ち合わせ駅に着いてからも言い訳しまくりで面倒だったので、「もう今日会うのやめる?」と聞いたら「やめる、帰る」と返信が返ってきたのでイラッとしてそれでその後会うのはやめにした。誠意というものを感じない。
遅れてでも会いたいと言ってくれるのであれば待とうと思ったが、会うたびに自分の価値をすごく安く見られているような気になってそれも嫌だった。
年上の男性だったが、まったく頼りがいがない。きっと誰が相手でもこのように遅刻癖が抜けないのだろう。友人であれば許せるが、恋人候補として見ている相手にこれほど誠意がないとなるとそんな候補には入れられない。
ひどい遅刻男だった。同時に、5分、10分であれば大丈夫かと思って軽く遅刻をする私自身もそこを改めなければならないと自戒させられる相手だった。
②ケチ男
ケチ男と言うとかなりの悪口になるが実際そうだった。ここではBさんと呼ぼう。
Bさんは今時の若者で、細身でこじゃれたイケメンだった。最初に会った日も、彼の方から新宿のこじゃれたカフェを提案し予約してくれた。パンケーキが有名なお店で、隠れ家的な印象の半地下っぽいカフェだ。
そうして1軒目はいい感じだった。Bさんとは会話も弾んで雰囲気も悪くなかったと思う。しかしまあ、お金の話ばかりするのだ。どうやって節約してるだとか、どうやって稼いでるだとか、貯金だとか株だとか。お金の使い方に関し自分の親を馬鹿だ頭が悪いどうして効率よく金を作り貯めないのかと罵ったりもした。
本当はデートで会って、ランチを食べて街を歩いて疲れたらお茶をして、それから夕食まで一緒に食べるそれすらお金の無駄だと思っているらしかった。
全体的に話を聞くとかなりケチで、そして他者を下に見ていたように思う。その中でも元カノのことが大好きで大好きで、フラれたときはかなり落ち込んだしあれ以上好きになる相手はいない、とも言っていた。
彼の話すことを聞くと人間が嫌いなのだろうな、世の中全員を馬鹿だと思っているのだろうなという印象を受けたが、そんな彼が大好きだったという元カノがどんな人だったのかものすごく気になった。彼と同じくものすごく倹約家だったのか、それとも彼に合わせて自分を極限まで押し殺していたのか。一度その元カノの話も聞いてみたくなった。
Bさんとはその後新宿をぶらついてデートをして、また別のカフェに入ってお茶をして解散した。
ちょっとした違和感はあったが、悪い人ではないと思った。だからまた次も会おうと笑って別れたのだった。
2回目のデートは池袋、サンシャインシティだ。ひたすら、ひたすらぶらぶらして、その他駅ビルなど池袋にある商業施設をぶらついてだべって、そうして過ごした。
デートらしいことを、とサンシャインの水族館や展望台に行きたいと言ったが、金がかかると言って行かせてもらえなかった。
2回目のデートはちょっとダレていた。お互いあまり会話も弾まず、歩くのにも疲れ、でも休む場所もなく。商業施設の中の私の好きなお店を見て、欲しい香水の話やもうすでに持っている香水の話をすると値段を聞かれ、100mlで2万円程度だと答えると高すぎると言われた。その印象が強い。
ダラダラ、やることもなく行く場所もなく、ダラダラダラダラ歩いて、それでも気が付くと西部デパートが閉まる時間になって。今思えばそんなにやることがないならとっとと解散すればよかったとも思うが、当時ちょっといいなと思っていた男性と一緒にいられるならなんでもよかったため、ただひたすらダラダラ過ごしたのだ。
デパートも閉まるしもう見るものもないし、とその日はそこで解散になった。
それから、LINEでまたダラダラやりとりをして、3回目のデートの話が進んでいった。そしてもう少しで約束の日だ、というところで彼から届いたLINEはというと。
「これ以上君と会っても時間と金の無駄だから、もう会うのはやめにしよう」
これである。
ハ?
マジでない。
マジでないわ!!
これでケチ男との連絡は途絶えた。
異常にケチであったりお金の話ばかりする男はろくなやつではない、ということを思い知った出来事だった。いい教訓になった、と言いきれるほど私は精神的に大人ではないので今でもイラッとするが、まあもう2度と会うこともないので! あばよケチ男!!
③無言男
とにかく女慣れしていない、というか人慣れしていないのではないかと思う男性だった。ここではCさんと呼ぶ。
まず、マッチングアプリでやりとりをしている間は普通だった。それでやりとりを重ね、実際に会ってみようとなったのだ。
集合場所は池袋駅前西口。どこのお店に入るかは決めていなかった。だから合流して、どこに入ろうか話しながら決めるつもりだった。
Cさんはひょろっと背の高い男性だったような朧げな記憶がある。合流して、名前を名乗って、すると何も言わずCさんは西口の繁華街に向かった。
私は慌てて後についていった。どこかいいお店ありますかねー、と話しかけてもCさんは無言だ。そして無言のまま、繁華街の入り口からすぐのところにあった地下の居酒屋に一人で入っていった。
えっ。えっ?
びっくりするではないか。ここはどうかな? とか、ここがいいな、とか、一言言ってくれてもいいではないか。Cさんは地下に向かう階段をどんどん降りていった。私も急いで後を追う。
店内はそこそこ賑わっている。私が追い付くよりも先にCさんは店員に話をして、先に店の中を進んで先にテーブルについていた。
私も慌てて席につく。それまで無言。
このまま会話もないのもどうかと思って、今日はお仕事だったんですか、とかここのお店よく来るんですか、とかとりあえず会話をしようとした。Cさんははいかいいえくらいしか話さなかった。
冗談だろと思ったが、とにかく話をしなければと思った。アプリで彼と知り合ったきっかけはお互いがオタクだから、とりあえずアニメかまんがの話をすればいいと思い、当時まだアニメ化していなかった鬼滅の刃とゴールデンカムイの話をした。
同時期に読んだせいで、ゴールデンカムイではいい大人たちが本気で殺し合う上に主人公は不死身の男だが、鬼滅の刃ではまだ子どもである主人公たちがボロボロになって死にかけていてとてもではないが見ていられない、という話をしたと思う。大体この時期には誰に対しても同じ話をしていた記憶がある。
その話から始まり、ずっとアニメとまんがとゲームの話をした。その間Cさんは普通に笑って話を聞いて、お酒も入ると普通にこちらにも話をしてくれた。さっきの無言は何だったのかと思うくらい普通に話をした。
そうして2時間ほど飲んだ頃だろうか。そろそろ帰りますか、と私が言うと、Cさんはすっと立ち上がってそのまま会計に向かった。無言のままである。
私は慌てて上着を着てかばんを持ってCさんのいるところまで向かう。が、Cさんは私が追い付くよりも前に会計を済ませて勝手に一人で店の外に出た。
また私は必死に彼の後を追った。地上に向かう階段をどんどん登っていく彼の背中には追い付けず、彼は地上に出ると駅までひとりでガンガン歩いて行った。
私って一人でここに来たんだっけ? この人って赤の他人だったっけ? 一緒に来たんじゃなかったんだっけ? 私ってこの人にとって何? 会話も待ちもする必要のない人間? とどんどん悲しくなっていった。
そしてCさんは駅に着くと、楽しかったのでまた会いましょうと言った。
私はへらへら笑って誤魔化して、返事はしなかった。内心では、もう! 会わない!! と大声で言っていた。
何が楽しかっただ、ならば相手を大切にしろ! 礼儀くらいあるだろ! と思った。
彼とはそれきり、また会おうとアプリでも連絡が来たが無視した。もっと人付き合いが上手になってから出直してきてください。
④カラオケ男
普通に雰囲気のいいイケメンだった。ここではDさんと呼ぶ。
Dさんはゲーム会社に勤めている男性だった。社名も、作っているゲームの話も普通に私に聞かせた。有名なソシャゲを作っていると自慢げに話していた。ゲーム会社は守秘義務がものすごく厳しいと聞くがべらべら話して大丈夫だったのだろうか。彼は一体何だったのだろうか。
出身大学も話してくれたしLINEも本名でやっている。本名をGoogleで検索すると、顔写真と経歴と共に仕事で作っているゲームについてのインタビュー記事が出てくる。隙があり過ぎではないだろうか? LINEはブロックされているが、ここまで個人情報を握ることができるのだから不用心だと思う。
さてDさんだが。最初にカフェで会って食事をしながら話しているときはおもしろいいい奴だと思った。私はオタクで重度のツイ廃だが、彼も同じだった。ツイッター(当時はまだXではなかった)で回ってくる情報だったり、ツイッター上で人気のあるクリエイターの話で盛り上がった。普通に楽しかった。
ただ彼はスマホを手放さなかった。仕事柄、スマホを使うのが日常でかなり重要なのだろう。ショートカットだとか、あと、あの、なんだ、見たことのない動作をしまくってスマホを駆使していたのが印象に残っている。
そうしてカフェで盛り上がり、彼はカラオケに行きたいと言った。音楽の趣味の話はそのときはしていなかった。私は流行りのJポップに明るくない。今から15年、20年近く前に流行っていた邦楽ロックバンドが好きだった。だから誰かと一緒に行くカラオケというものが苦手だった。私はみんなが歌う歌を知らないし、私が歌う歌をみんなは知らなくて、場が白けてしまうからである。
そういった不安は多少あったが、まあ1対1のカラオケならむしろ知らない曲ばかりになるのも当然か、と諦めることにした。
新宿の駅付近のカラオケに入ると、たった2人なのに大部屋に通されて若干困った。
最初は広すぎる部屋の中、向かい合って座っていたが、数曲歌っているとDさんは私の隣に座ってきた。私は馬鹿だったので、Dさんが座っていた位置からモニターが見えにくなったのかな、などと思っていた。
Dさんが入れた曲が流れだすがDさんは歌う気配がない。どうしたのかと思っていると、いきなりDさんにキスをされた。そしてあろうことかそのまま押し倒そうとしてきたのだ。
私は流されなかった。腹筋に力を入れて座席には倒れなかった。
流されなかったとはいえ頭の中では大混乱である。
まさかそういう狙いがあってカラオケに行こうと言われたなどとは思っていなくて、それにDさんと知り合う直前にナンパにあった相手に惚れた末ひどい目に遭ったばかりなので、男の欲というものをまた吹っ掛けられてショックだった。だからそこで泣いた。号泣した。
Dさんは私をハグしたままなんとか慰めようとした。私が付き合ってもいない相手とそういうことはしたくないと泣きながら言うと、なら付き合おうとDさんが言った。
私は馬鹿だったので頷いてしまった。
びっくりハプニングはあったが、話も合ってイケメンでおもしろい彼氏ができるのだと思ってそれは少し嬉しかったのだ。お互いのことはゆっくり知っていけばいい、付き合いたいと思ってくれたのだから彼も私のことが好きなのだと思ったのだ。
だから彼の言葉に頷いて、付き合うことになって、それ以上は何もないままカラオケを出て解散となった。
しかしその帰りの電車で、LINEはブロックされていた。
そのときはブロックされていたことに気が付かなかった。かれこれこういう事情で彼氏ができたが翌日まで連絡が帰ってこない、と友人に相談したところ、LINEのスタンプをプレゼントできるかどうかでブロックされているか探る方法を試せと言われた。そして、私がDさんにブロックされたことが判明したのである。
大激怒である。
付き合いたいと言ったのはあの場で私をなだめ、言いくるめるためだけの言葉だったのだ。本当に付き合う気などどこにもなかった。それがわかるともう頭に来て頭に来て。めちゃくちゃ腹が立って、いつも恋愛相談をしている友人に事の顛末を話した。その友人はDさんが作っているゲームのユーザーだったので、キモいね!! とそのゲームのアプリを削除した。
Dのやることもキモいが、自分自身の自慢をしたいあまりに個人情報を自らぺらぺら話していたので本当にそのあたりの詰めが甘いと思った。その詰めが甘いのもキモい。
それ以降いきなりカラオケに行こうと言ってくる男には警戒するようになったので、このことも教訓として心に刻んでおこうと思う。ナンパ男の件も合わせると、いきなりネカフェに行こうという男もだ!! あまりよく知らない男と密室に入ってはいけない。よくよく覚えておこうと思う。
その他の男たち
印象によく残っている男たちは上記の4人である。
他にも、猫が好きだと私が言ったら猫柄のやばいパーカーで待ち合わせに来た男や、一度会ったことがあるのにそれを忘れてもう一度私と会った男(カフェのカウンター席のハイスツールの上でおしりで弾んで遊んでいた)や、下ネタと悪口しか言わない上に、会う回数は増えていたのでこのまま私と付き合ってくれないのかと聞いたら「契約が要るタイプか……」と言い放った男など、マッチングアプリではいろいろと癖の強い男とばかり出会ってきた。
最近ではアプリのログイン順に表示される登録男性一覧のページに実兄が出てきて黙ってブロックしたりもした。
付き合えた男たち
マッチングアプリはトライ&エラーである。実は二度、アプリで知り合った男性と付き合うことができた。
1人目は思いっきり私の蛙化現象、もといこの人とは直感的に合わない、受け付けないところがある、と思って別れてしまった。でも本当にいいひとだったのだ。めちゃくちゃ優しかった。私が仕事で落ち込むことがあると、家も遠いのにすっ飛んできて話を聞いてくれたりした。好みのタイプではないが男前だったとも思う。
本当に私にはもったいない、いい人だった。別れて数年が経過した今でも、彼には幸せになってほしいと思う。彼には私以上にもっと彼を幸せにできる人がいる。だからそんな人とぜひとも幸せに暮らしていってほしい。
2人目は2024年の8月に付き合うことになり、2024年の11月に別れた。3ヶ月間で関係は終わってしまった。もういい歳なのに中学生の恋愛のようである。
ちょっとひかえめな性格で、見た目は今時の普通の若者。穏やかな雰囲気が好きだった。でも仕事が忙しいのを理由にLINEを平気で1週間無視したり、月に1度しか会えなかったり、これって本当に付き合ってるのか? と疑問に思うほどになった。付き合う前と付き合いたて2週間まではものすごいアプローチだったのに! ホットな期間は付き合って2週間で終わり、それからはまったく連絡も来ないし会ってもくれない。それがストレスになって不安定になり、待つのも嫌になって私のほうから別れを告げてしまった。
見切りをつけるのが早すぎたかな、別れない方がよかったかな、と今でも思うしまた会いたいと思うこともあるが、友人に話をすると「別れてよかったよ! なんで付き合ったの?」と言われる始末なので、きっと別れて自由になってよかったのだと思う。そう思い込むようにしている。
今もまたアプリで知り合って、2度会った人がいる。最初はこの人と付き合いたい! と思って1度目のデートも2度目のデートも私から誘ったが、アプリからお互いのLINEを教え合い、個人の連絡先を交換して、私がデートに誘うまでまったく連絡が来なかった。2回目のデートを終えた今でもそうだ。連絡がこない。あまり期待しない方がよさそうだ。
その先のこと
私には、彼氏がほしい気持ちのその先、結婚願望がある。が、子どもが欲しくないのだ。自分の精神的体力的に、そして経済的、性格的に子育てができると思わない。それに子どもが苦手で、今4歳の甥の元気いっぱいな姿を見ていても、私に子育てはできないなと思うのだ。
マッチングアプリには、プロフィール欄に『子どもがほしいか』を答えるスペースがある。私は子どもが欲しくない、またはわからない、と回答する。
それに対して、男性は子どもが欲しい方ばかりだ。その時点で、お互いの考え方は違うので私はその人を選ばない。
が。最近になって。ちょっとだけ、娘が欲しいなと思う気持ちもあるのだ。
子の性別は選べない。わかってはいる。でもまあ夢として、小さな子供は苦手だが、中学、高校、大学、そして社会人になって対等に話ができるようになった自分の娘と一緒にお出かけしたり買い物したり、できたら楽しいだろうなあ、とそういう夢を持ってしまう。
そうした気持ちのせいでまた、どんな人と出会うべきかの考えがぶれる。ゴールがわからなくなる。それでも一人でいるのは寂しくて、無条件で隣にいられる人が欲しくて、今日も私はまたマッチングアプリを開くのだ。