File.02 彼が彼女を好きでいるための暇つぶし
※浮気表現を含みます
手を繋いで歩いているカップルを車内からみてふと思う。
最後にああやって、好きな人と手を繋いだのはいつだろうか。
寒いねって肩を寄せ合いながらコンビニに、お酒を買いにいく。
袋を重いねっていいながら片方ずつ袋を持つ。
そんな些細な日常を幸せだと感じるのは、特定の相手がいないひとりになった今である。
私の好きな人は、彼の都合がいいときにだけ連絡してくる。
「今日彼女いないから、どう?」って。
私から誘ってしまうと、調子に乗るなと思われそうで、
今後誘ってもらえなくなりそうで、怖い。
だから私からは、肝心な言葉は言わない。
彼が私を抱くのは、おそらく暇つぶしだ。
彼は、彼女のことが大好きである。
でもたまに違う味がほしくなる。
きっとそんな感じ。
私の所に来てくれるなんて、微塵も思っていないし期待すらしていない。
SNSで彼女と旅行に行っているのをみても、なにも言わない。
嫉妬という言葉を封じている。
でしゃばらない。
心の奥にあるほんの少しの痛みは、私だけが知ってる戒めかなんかだと思っている。
誰かに知られたらおわるこの関係。
誰かに言って楽になろうなんて、相談しようなんて思わない。
そうしてでも、やっぱり彼といる時は幸せだから。
また会いたいと思ってしまうから。
だから、彼が彼女のことを好きでいるための暇つぶしに、今日も付き合うのである。
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