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お芝居観に行きたいーコロナ禍における一地方民の嘆きー

お芝居が見たい。ミュージカルが見たい。
劇場で。

私は別に年に何回も劇場に通ったり、同じ公演に何度も足を運んだり、推しが立つ舞台のためなら全国津々浦々遠征したり、という舞台ガチ勢ではない。
せいぜい年に1〜3回程度、足の届く範囲で公演が有れば、もしくは観たい演目・キャスト・チケット・公演日総合的に考えて可能であればたまに遠征する…という程度の、ニワカであります。なので当然偉そうなことは言えないし、私なんかよりもこれまでの舞台文化を守り育ててきた先輩方・及びありとあらゆる舞台関係者様方の苦悩に比べたら、なんてことない。

それでも、もう一年半近く劇場に行ってないのは、かなり辛い。
お芝居が、ミュージカルが観たい。劇場で観たい。

配信や円盤で観るのは違うんです。
最後列の一番端っこでもいい。
ほんの3時間、劇場という名の異世界で、魂の震えるような、架空の人物の人生を追体験する。気合入れて劇場に足を運んだ何百人が同じように息を呑み、笑い、涙する。
そんな『舞台鑑賞』という時間が大好きだ。

世間でコロナコロナと騒がれ始めて約1年、少なくとも2回の公演を劇場に足を運ぶ事なく見送った。
公演そのものが中止になったものもあるし、ギリギリまでチケット取るか迷った挙句に、緊急事態宣言下の遠征はやめようと諦めたものもある。

舞台関係者様達がなんとか劇場の火を消すまいと、いろんな努力をしてるのも知ってるし、配信とかで楽しませていただいた。

私自身も学生の時ではありますが、出演者の立場も裏方の立場も経験があるので、練習出来ない・公演出来ない・観客いないという状況がどれほど悔しいかは理解しているつもりです。

秋ごろから細々と、公演が動き出した。席数減らして、感染対策万全にして。
まだまだ手探りだし、経営上なかなか厳しいのだろうなとは思うのだけど、素直に喜ばしい。

そしてここからが地方民の嘆き。
とても喜ばしい。だがしかし。私は観に行けないのである。
観たい公演は基本的に東京か大阪でしか無い。今のご時世、東京大阪に物見遊山に行ったなどと知れたら石を投げられる。熱でも出そうものなら家を燃やされる。知らんけど。
普段だったら地方公演まで組んでくれるであろうものも、この状況だと来てくれない。たとえ、地方公演があったとしても、ど田舎から地方都市までちょっとした遠出である。あまり褒められたことじゃないから、そうポンポン行けるものでもない。チケット取っても直前で中止もありうるし。
なので、行けないのである。悔しいことに。

そして、もうひとつ悔しいこと。
私の行けなかった公演は彼らにとっては『大変な状況でもなんとか開催された公演』という満足げな結果に終わること。
舞台関係者も必死だし、想定より少ない観客も必死。そしてそれが成功に終わったら、良かった意外の何物でもない。おめでとう。
劇場に行くのを「自粛」した見えない存在を残して。「行きたかったけど行けなかったです」などという、恥知らずなコメントを主催者に送ることは私には出来ない。遠くの劇場に足を運ばないという判断をしたのはあくまで私。主催者が来るなと言ったわけじゃない。そうして「諦める」という選択をした存在は見えなくなっていく。

オンライン配信があるから地方とか関係ない!となんとなくの風潮のようだけど、多分逆。
エンタメに関しては住んでる場所によって得られる情報に差は無いのに、体験できる事に大きな差が開いていく。まあ、SNSで盛大に告知したイベントは東京でしかやらないけど配信はしない、っていう今までよりはマシかな。でも、オンラインで画面の向こう側に生活の延長線上にあるエンタメと、劇場という非日常空間で五感で触れるエンタメ。もはや別物である。これまでだってそうだったけど、「チケット取れれば・その気になれば行ける」と「基本的に遠出出来ないので行けない」では心持ちが全然違う。そうして不公平感が少しずつ募っていって、市場が小さくなっていくんじゃないかと不安に思う。

コロナで世の中のありようがこれからもっとガラッと変わっちゃうんだろう。
そしてきっと『ニューノーマル』としてまた違う形のエンタメがたくさん生まれ、私達を楽しませてくれるんだろう。
否応なく変化していく事は嫌なことではないのだけど、これまでの素敵な経験が次第に失われていくのかもしれないと思うと少し悲しい。
『劇場でお芝居を観る』ことができる世の中に戻れたらいいなあ。

そして多分これは劇場だけの話じゃない。
美術館の特別展とか、地方未上陸店舗のポップアップストアとか、そんなのも含まれるんじゃないかな。映画館だって誰しもが近所にあるわけじゃない。映画を見るために1日がかりのお出かけって人だって沢山いる。
オンラインで公開・通販・動画配信…代替手段を用意してはくれているけど、やっぱり現地で、そこにいる人々や空気に触れて、自分の中で「来てるぞ!」って感覚があるかないかでは大きな違い。
交通費やチケット代より、通販手数料やサブスク利用料の方が圧倒的に安上がりだけど、そこには値段以上の大きな付加価値があったことを忘れることができない。

エンタメや娯楽の形、変わっていくんだなぁ。
かなり寂しい。
コロナが完全に不安なくなって元の世界が戻ってくるのを願いながらも、新しい楽しみ方を見つけないとなあ。

来月、楽しみにしてる公演があるんです。どうか無事に楽しめますように。


☆追記

上述の「楽しみにしてる公演」、無事に上演され最高の時間を過ごさせていただきました。やっぱり現場で吸う空気は美味いです。

コロナ禍での稽古も公演も大変なことがたくさんあったことは察してあまりりますが、最大限の感染防止対策のもと上演してくださった劇場さんにも、打ち上げもできないのに東京からお芝居を見せに来てくださった役者さん・スタッフさんにも、最大の感謝を贈ります。ありがとうございました。

さっそく年内の博多座公演スケジュールをチェックし、次回の観劇に備えました。このままコロナが収束し、次の公演は客降り演出があるといいな。

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