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淡色 ②
定時だ・・
周りから見たらいつも通り仕事をしている様に見えていただろう・・
頭の中は・・
先輩をどんな店に連れて行くべきか?
あの店・・ちょっと高級感あり過ぎだ
あの店・・女性が行くにはちょっと
あの店・・食べる物がつまみばかりだ
自分の知っている店は接待用ばかりで
女性を連れて行けるような場所を
ほとんど知らない事に
今更気づいた・・
久しくデートなんてものもしていないからなぁ
参ったな・・ネットで検索してみるしかない
仕事をしながら必死で店を探してみる
そんな事をしながら定時を迎えた
(ホソク、今日は定時か?)
『あぁ、お疲れ』
(久しぶりに飲みに行こうぜ)
『悪い、先約』
(なんだよ、デートかよ)
『違うよ』
ただ食事に行くだけだよ
(ふ~ん、お疲れ)
『お疲れ』
時間ピッタリに行くのもなんだよな・・
待たせるのは嫌いだけど
早く行くのは楽しみにしてたみたいで微妙だし
トイレに寄り少し時間を調整してみる
1階のロビーに行くと先輩が既に待っていた
『お疲れ様です、すいませんお待たせしました・・』
僕の声に気づき振り返る
「お疲れ様!私も今来たとこだよ」
何となく周りからの視線を浴びる・・
『とりあえず出ましょうか?』
「うん」
朝の面影は全くない
あの時、本当に辛かったんだな・・
「ホープ君、何処に行こうか?」
色々探してもしっくり来る店がなかった
『先輩行きたい店ありますか?』
「私は何処でも大丈夫だよ」
『女性を連れて行ける店ってあまり知らないんですよ・・』
「あ、じゃ~私が同僚と行く店でもいい?」
『大丈夫です、先輩は大丈夫ですか?』
「え?何で?」
『僕と一緒に居る所を誰かに見られちゃうかも知れませんけどㅋㅋ』
「全然構わないけど?」
『ならいいですよ』
マドンナが男と食事していたら
色々言われちゃうんじゃないかと少し心配になった
「ホープ君こそ・・」
『はい?』
「私なんかと食事してるのを見られたら・・大丈夫?」
さすがに虐められたりしないだろ??ㅋㅋ
『大丈夫ですよ』
「じゃぁ・・行こっか」
『はい』
先輩の横に並び
先輩の話を聞きながら
まだ少し明るい道を歩く
『定時だとまだ明るいなぁ・・』
「やっぱり営業さんは接待とか多いの?」
『波がありますけど・・プロジェクトが動き出すとやはりありますね・・』
「大変だね・・」
『慣れましたよㅋㅋ 』
たわいもない話をしながら歩いている
不思議な感覚
久しぶりに女性と歩いている事に少し・・
笑ってしまいそうになる位ぎこちない
「ここなんだけど・・いいかな?」
女性がチョイスしそうな店だ
男同士では絶対入れない店構え
『はい』
「良かった」
こんな時は女性に合わせるのが1番
少し小っ恥ずかしいが・・
店内もかなり明るく可愛い感じだ
席に座る・・正直少し落ち着かない
「ホープ君、何飲む?」
『ん~、あ、赤ワインにします』
「赤ワインね、料理はどうする?赤ワインだから肉料理だよね」
『料理はお任せしますよ、先輩の好きな物頼んで下さい』
「ありがとう、ホープ君好き嫌いある?」
『特にはないので気にしないで下さい』
「うん」
先輩が注文をしている間
店内を見渡してみる
やはり女性客が多い
男性客は女性連れのみ
やはり男性同士には敷居が高いな
「ごめんねホープ君」
『はい?』
「付き合わせてしまって・・」
『別に大丈夫ですよ、仕事がない日は暇ですからㅋㅋ 先輩こそ僕なんかで良かったんですか?』
「1人はやっぱり淋しいし・・ありがとう」
『僕で良ければ何時でも声かけて下さい』
「ホープ君誘ったら皆から妬まれちゃうかもだなぁ~ㅋㅋ」
『はぁ?何でですか?』
「やだ、ホープ君気付いてないの?」
『??』
「我社のホープは女性人気NO1よㅋㅋ」
『は?僕がですか??』
「うん、知らなかった?」
『全然・・知りません・・と言うか先輩が・・』
「私?何?」
『我社のマドンナだって聞きましたよ』
「ㅋㅋ え・・・?有り得ないよㅋㅋ」
2人して・・
『独身が狙ってるって言ってましたよ』
「私を?まさかぁ~ㅋㅋ」
『そう聞きました』
「ホープ君も女子社員から狙われてるよ・・将来有望株だって」
『有望株?僕が?まさか、有り得ないです』
「もしかして・・私達って・・」
『自分の事はよく分かってないみたいですね』
「ふ~ん、私・・そんな風に思もわれてるんだ・・喜ぶべき?」
『喜んでいいんじゃないですか?』
「そっか、」
『マドンナと食事させて頂けて光栄ですㅋㅋ』
「こちらこそ女性社員憧れのホープ君とお食事が出来て光栄でございますㅋㅋ」
僕が?会社でそんな風に感じた事ないんだけどなぁ・・
「ね、ホープ君はさ・・」
色々聞いて来る
そんなに質問ありますか?って位
いや、そんなに僕に興味ありますか??
『質問攻めですねㅋㅋ』
「あ・・ごめんね」
『そんなに僕に興味ありますか?ㅋㅋ』
「ん~せっかくのチャンスだから」
『チャンス??』
「もうホープ君とお食事して貰えないかもしれないじゃない??今のうちに聞いとこうかと思ってㅋㅋ」
『先輩が暇な時、何時でも誘って下さい』
「いいの??」
『さっきも言いましたけど??』
「ㅋㅋ あ~後輩達に恨まれちゃうかもなぁ」
『後輩??』
「うちの後輩達、ホープ君を崇めてるからㅋㅋ」
『僕、特に目立たない人間ですけど・・』
「自分で分かってないのね~」
『何がですか?』
「ホープ君・・とても素敵だよ」
『はぁ??』
「後輩達も(かっこいい!)(素敵~)って」
『いやいや・・言われた事ないですけど・・』
「みんな隠れて言ってるからㅋㅋ」
『信じられないです』
「直接言われなきゃ分からないものよㅋㅋ」
『先輩も言われないから分からないって事ですねㅋㅋ』
「誰も言ってくれないよㅋㅋ 食事も誘われないし・・」
『僕もですよㅋㅋ』
「よく分からないね~まぁ、悪口じゃないだけいいかなぁㅋㅋ」
『ですね』
たわいもない話をしながら
女性と食事するのは久しぶりで
先輩は気さくな人で
緊張もすぐに解れた
初めの印象が全く別の印象に変わる
『美味しいですか?』
「うん!」
『美味しそうに食べますね』
「え?そう?やだ・・恥ずかしい・・」
『美味しそうに食べてくれた方が気持ちがいいですよㅋㅋ 食べない子より食べる子の方が好きです』
「そう?なら良かったㅋㅋ 食べるのに時々貧血起こすんだから嫌になる・・」
『貧血予防は鉄分ですよ、食べてます?』
「あまり気にしないからㅋㅋ ダメね」
先輩は話しやすい
構えなくていいから気が楽だな
「鉄分かぁ・・」
面白い人だな
自然と笑みが出てしまう
一緒にいて楽だ・・
時間があっという間に過ぎて行く
『そろそろ行きますか?』
「もう?」
『??』
とても残念そうな顔してるㅋㅋ
思った事が顔に出るタイプ?
本当に面白いㅋㅋ
「楽しくてㅋㅋ 久しぶりに楽しくて」
『先輩可愛いですねㅋㅋ』
「え??」
『思った事を素直に出しちゃうタイプですか?!』
「・・そうかな?そうかも・・年甲斐もなく」
『先輩と一緒に居るの楽しいですよㅋㅋ』
「ありがとうㅋㅋ 私も楽しいよㅋㅋ」
不思議と離れ難い気もしてきた
『先輩、送りますよ』
「え?!」
『送ります、それならもう少し話せますしㅋㅋ どうですか?』
「ㅋㅋ いい考えです!でもいいの?送ってもらっちゃっても・・」
『大丈夫ですㅋㅋ 』
「なら・・お願いしちゃおうかなぁ・・」
会計を済ませ外に出た
「ホープ君、私から誘ったのに・・ご馳走してもらっちゃって・・ごめんね、ありがとう」
『いえいえ、次回は先輩にご馳走してもらいますㅋㅋ』
「うん!」
駅までの道のりがあっと言う間で
電車に乗り先輩の最寄り駅まで向かう
自宅と会社の往復
たまに寄り道
でも1人・・
自分の為の時間
誰かと過ごす時間
同じだけの時間を過ごしても
やはり誰かと過ごす時間は
1人とは全く違う時間の流れに変わる
そんな当たり前の事ですら
忘れかけていたんだな・・
自分が少し変わるだけで
全然違う世界が広がるんだ
些細な事なのに・・
「ホープ君・・」
『はい?』
「あの・・さ」
『はい?』
「先輩って呼ぶの止めない?」
『先輩ですか?』
「うん」
先輩以外で何て呼ぶ?
苗字?
「先輩も苗字も何か・・つまらなくない?」
つまらない?
『つまらない?ですか?』
「そう、つまらない・・」
ん・・・
「会社では勿論先輩でもいいんだけど・・こんな風な時間の時に先輩だと・・こう・・何て言うか・・距離を感じちゃうじゃない?」
『距離ですか・・』
「敬語も止めようよㅋㅋ」
敬語も??
昔からの知り合いならともかく・・
歳上だし・・
『どう呼んだらいいですか?』
「親しみやすい感じでㅋㅋ」
・・・・1つしか浮かばないけど
もしかして・・それを言ってるのか?
さすがに・・
そんな会話している間に
「次で降りる・・」
『僕より手前なんですね~』
「そうなの?」
『僕はその次の駅ですから』
「近いんだね~」
今迄、会わなかったのが不思議だ・・
同じ時間の電車に乗っていたのに
「私、降りるね」
駅に着いた
ドアが開き先輩が降りる
僕も思わず降りてしまった・・
「ホープ君?」
『家の近くまで送ります』
隣り駅だし
すぐに家に帰れる
夜道を1人で帰らせるのは気になってしまうし
「ありがとう」
改札を出る
先輩の少し後ろを歩きながら
何て呼んだらいいかまだ迷っていた
あれか?あれでいいのか?
いきなりあれは・・でもあれしかないよな
そんな堂々巡り
「ホープ君?ずっと黙ってるね」
『どう呼んだらいいか・・考えてて』
「ㅋㅋ 悩ませちゃった?」
『はい・・』
「好きなように呼んでくれて構わないよㅋㅋ だから悩まないで!あ、もう大丈夫だよすぐそこだから」
『あ、着きましたか?』
「うん、今日は本当にありがとう!気をつけて帰ってね!おやすみなさいホープ君」
満面の笑みで話す姿を見たら思わず口から出た
『おやすみヌナ・・』
ヌナの顔が一気に赤くなり
少し下を向いたんだ・・
淡色 ② END