フルーティーな香りを求めるのなら、フルーツを食べればいいのです
今年の夏は、妙にフルーティーな香りが欲しくなった。新作香水の中にも、フルーティーな香調のものがいくつかみられたので、それらに釣られたのかもしれない。私が特に食べるのが好きな果実は、桃といちじくで、いちじくに関しては、既に大好きな香水を所有しているが、桃に関しては、これこそが私にとっての桃の果実の香水だと諸手を挙げて言えるものには、未だ巡り逢えていない。
そんなわけで、先月京都の香水屋さんLE SILLAGEで発売されたLES SOEURS DE NOEのFORBIDDEN NECTARは、ピーチとチェリーの香りとのことで、とても気になり、ムエットを取り寄せ、更に東京で開催されたPOPUPにも出向いた。
肌に乗せていただいたフォービドゥンネクターは、とにかく果実を口に含んだ時に鼻に抜ける匂いに近づけた香りを求める自分には、よそ行き用の香水っぽく香り、「素敵な香りだけど、美味しそうな香りではないなぁ」となった。結局のところ、自分は食いしん坊なのだ。POPUPでは、別のブランドの美味しそうな香りを購入した。
これまで自分が試した桃がテーマになっている香水の中で、最もリアルな果実の香りを感じたものは、KILIANのFlower of Immortalityだ。これは、肌に乗せた直後は、リアルに白桃の香りだと感動した。しかし、その香りは5分もしないうちに消え、キャロットの香りになってしまった。リアルな白桃の香りが去った後の香りも好みであれば、購入していただろう。
現在は一つ、桃がテーマとなった香りを所有している。昨年発売された、L'ARTISAN PARFUMEURのA FLEUR DE PECHEだ。これは、桃の果実の香りかと問われれば、違うような気がするが、自分の肌の上では、桃の香料が入った飲料のような香り方をする。今の時点では、私にとっての桃の香水は、これで良しと思っている。
それにもかかわらず、無性にフルーティーな香りを欲しているのには、理由があることに気がついた。ここ数年、近所のスーパーで買えるフルーツの値段が上がり、「自分で果物を買うのは贅沢」という意識が芽生えてしまい、フルーツを買って食べるのを我慢しているので、脳や体がフルーツ不足を訴えているのだと思う。つまり、私が本当に欲しているのは、フルーツ香を模した香水ではなく、フルーツそのものなのだ。
そして私は今、いちじくやプルーン、ぶどうを毎日のように食べていて、舌も鼻も満足している。先日は、石川県産黒いちじくのパフェも食べた。よく自分が食べている和歌山県産のいちじくより色が濃く、味もねっとりと甘く、うっとりした。
自分が本当は何を求めているのか。それは、意外と把握できていないことがある。自分が求めていたのは、フルーティーな香水ではなく、フルーツそのものだった。
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