山田リョウの隠れた名言(迷言)から「ぼっち・ざ・ろっく!」を解読する ~コミックス1巻編~
山田リョウのことを考え出すと止まらない、ブレーキの壊れた暴走特急状態で日々を生きる。
さて、去る9月18日は山田リョウの誕生日だったわけで、それに合わせてnoteもなにか更新しなきゃなあと思いつつも、なんとなくズルズルと二日も何もしないまますぎてしまった。すまぬ。
(ヘッダーの写真はその誕生日のお祝いの様子である)
今日はせっかくなので(?)、山田リョウの「隠れた」名言あるいは迷言にフォーカスしていこうと思う…のだが、この山田リョウという人物はとにかくあんまり喋らない。饒舌な時はとにかくよく喋るが、ふだんはそんなに喋らない。そんな限られた文字数の台詞から何か要点を抽出できるのか…。
とにかく試みとしてやってみるのみである。
(なお、隠れてない名言、迷言はすっとばしていくことにする。みんなもうあちこちでたくさん論じているだろうから。)
では、今回はコミックス1巻を見ていくことにする。
早速行ってみよう。
こんにちは
これのどこが名言やねん!と思うかもしれない。ちょっと考えてみてほしい。これ、「あの」山田リョウの台詞なんである。「やっと帰ってきた」に続く初登場第二声である。「今の」山田リョウのイメージからすると恐ろしく穏当な印象ではなかろうか。初期の山田リョウは今のような奇人変人イメージは薄かったため、このような登場の仕方をしたのかもしれない。しかし、山田リョウはこの後壊れていくことになる…。
私はわかる
そんな「穏当だった」初期の山田リョウだが、やっぱり変なところというか、妙な自信に溢れた部分が現れる箇所はある。虹夏の「普通の女子高生に演奏の良し悪しとかわかんないって~」に対する台詞である(虹夏ちゃんなかなかえぐいこと言うね)。今でこそ、作曲ができるとか、ヴァイオリンが弾けるとか、中学でジャコ・パストリアスを演奏したとか、いろいろ設定が付け足されて「普通の女子高生」以上のかなりの才女ぶりが際立っている山田リョウであるが、この頃からその構想はあったのかも知れない…。
結束バンド
記念すべき主人公たちのバンド名がこともなげに決定した瞬間。ちなみに、後藤ひとりのあだ名「ぼっち」を命名したのも山田リョウである。
虹夏だけ
友達のいない後藤ひとりへのフォローとして虹夏が「リョ…リョウもね あんまり友達いないんだよ!」と言ったことへの返答。普通こんな台詞を「唯一の」友達の前で吐くなんて照れくさくてできないと思うが(僕はできない)、平然とそれを表明するのが山田リョウであり、また虹夏との並々ならぬ絆の深さを感じさせる。それにしてもここまでの名台詞の文字数が少なすぎである。
フロントマンまでしたら私のワンマンバンドになってバンドを潰してしまう
今考えると重い台詞。この時に涙を流しているのは決してギャグ表現ではなく、過去に本当にバンドを脱退、解散に追いやってしまった経験があるからなのか。
山田リョウは多彩な音楽人であり、やろうと思えばなんでもできる。一人で音楽をやる方向性も全くないではないのである。むしろ一人でいることを好む彼女ならそちらのほうが向いているのでは?と思ってしまうが、山田リョウはそれを頑として拒む。他者との関わりと葛藤の中で創造をしていく道を選んでいるのである。それは「ぼっち・ざ・ろっく!」という作品に通底しているテーマでもあると思う。
これで私は所持金が底を尽きたので 草でも食べて生きていきます
もはや隠れてない迷言。後藤ひとりはこの台詞を喜多郁代から伝聞の形で聞いて「本気な気がする」と危惧していたが、果せるかなその通りになったのであった。
有識者が言っていた… OPでジャンプするアニメは神アニメ…と
昔は「エンディングで走るアニメは神アニメ」と言ったんですけどね。
作詞は簡単に思われがちだけど意外と難易度高いから音楽経験豊富な人が向いてる
自作の曲を披露した際、虹夏の「ぼっちちゃんが作詞するんだったよね!」の台詞を受けての台詞。
後藤ひとりの正体「ギターヒーロー」に気付いていない時点での台詞であるが、すでにその実力の片鱗は大いに認めていたのだと思われる。
何気にこの時、喜多郁代が「私も(作詞)やってみたいです~」と言ったのを撥ねつける形になってるが、これは先輩としての厳しい意見といったところか。
ぼっち的にはこの歌詞で満足?
後藤ひとりの書いてきた(薄っぺらい)歌詞を見ての一言。ちなみにこの直前、後藤ひとりの「サイン」を見た時も、「これでいいんだ?」と、同様に後藤ひとり本人にジャッジを委ねる発言をしている。
これは、自分の作品に対しては自分の意志で価値を示せ、という山田リョウの強い意志を感じる台詞であり、短いけれど極めて重要な言葉だと僕は感じている。けだし、「隠れた名言」だと思う。この喫茶店のシーンは他にも名言が目白押しであるが、僕は特にこの台詞を推したい。このシーンから分かることは、山田リョウにとっては、自分で自分の価値を自分で打ち出していくことと、他者との関わり合いの中で作品を作り出すことは創作の両輪であるということである。
うん 頑張って
もう一度歌詞を書くと誓った後藤ひとりに対するエール。大変珍しい山田リョウの笑顔から放たれた言葉である。
ぼっちらしくていいと思うよ
書き直された後藤ひとりの歌詞を評して一言。ここでも、作品の軸は書いた本人にあるということが強調されており、山田リョウの軸が決してブレないことが分かる。
…以上が、コミックス1巻から自分なりに抽出した名(迷)台詞の数々である。まだまだあるだろ!とお思いの方もいらっしゃると思うが、たぶんそういう「知られた」名言はもうとっくに触れられていると思うので。
では、次回、2巻編をお楽しみに。