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「私も準備ができました。ライブに行きましょう」〜ムビナナDay2を見ました〜

こんにちは。なかにしけふこです。
ムビナナDay2をみましたのでまずは印象をご報告いたします。
画像は新宿バルト9のデジタルサイネージを撮影したものです。
この青はいい青。

ここまでのお話と一織讃頌


ムビナナDay1を見てお友達に勧められて『アイドリッシュセブン』ゲーム本体をはじめました。


和泉一織さんに心を掴まれました。
ストーリー部分で、自らの資質が圧倒的なスタアの華にやや欠けることをうすうす自覚しながら状況を的確に把握して最大限に同僚たちと自らをも輝かせるすべを模索する姿も、過ぎ去った青春の栄光への妄執を一子相伝式の次世代育成に注ぐ陰気なプロデューサー・九条鷹匡氏(と作中の労働環境激悪大手プロダクション・ツクモの月雲了社長)の策略とまっこうから知性と情熱と純粋さで対決する姿も、ほんとうにうつくしい。

一織さんが舞台裏に置き忘れた企画帖を拾ったムッシュ九条に高らかに朗読されて反撃を試みるこんなくだりも印象に残ります。



ー私のノートを返してください、おじさん!

ーなんだ、男子高生。君の思うようにはならないよ。僕が君の思うようにはさせない。アイドリッシュセブンは早晩消える。僕が育てた新しいゼロが残るんだ!



ムッシュ九条、じつに大人げがありません。17歳にまでこんな圧をかけてしまうとは。自らがだめな大人だと思っていないだめなOJISANの挙動そのものです。


ところでムッシュ九条の声は津田健次郎さんが当てておられます。

刀剣乱舞のいくさにも酒にも豪気な槍の日本号さんの声の方です。
若さの栄光への妄執を具現化するかのように表情の動きのない、じっとりと暗い湿度がこもる声色はまるで別人です。

ヴェテランの技芸をおもわずにはいられません。

第2部での「センター交代事件」をへて、ひたむきで可憐ないたいけさを華のある歌声で具現化する七瀬陸さんにこそ輝かしい星の天凜があると一織さんは考えているようですが、彼にもほかにはかえがたい天凜がある。
和泉兄弟を見守らずにはいられなくなります。
これがスタアの応援ということでしょうか。
脚本の都志見文太さんが一織さんにかっこいい台詞をたくさん語らせてくださるので一織語録フォルダを作りました。こういうきれいな人を描いてもいいのだ、たいへん学ぶところが大きかったです。
『アイドリッシュセブン』は作中世界の設計思想に向日性があり、作中人物をえがくさいにユーモアをしのばせてくださるので悲劇的な思いにならずに接することができるのはほんとうにありがたいことです。

ひさびさに韻文制作意欲が帰ってきました。逃げないうちに醒めないうちにつかまえておきたいと思います。

『映像版アイドリッシュセブン』Day2の感想

なにかすごいものを見ているような気がしてきましたので、ムビナナDay2を見ました。
ストーリーを第3部17章まで読み、今回出演するグループとメンバーの性格と課題を掴んで臨みました。
予習はあるとより感慨が増しました。
今回もまた、なんていうものを見てしまったんだ、という実感があります。
青みの立ったヴィジュアル映像のデジタルサイネージがまず美しい。
さきの記事にも書きましたが、やはり映像技術とモーションキャプチャーと声優の技芸で最高のボーイズバンドを作るという発想が秀逸で、各ユニットの芸域の描きわけが見事。
声優陣全員うたがうまい。モーションアクターの所作が全員のキャラクターをしっかりと反映していて切れ味が鋭い。楽曲も良い。
作中人物のスタア性に説得力があります。
撮影したアニメーション映像のなかに分け入って撮る技術を使っているそうで、臨場感があります。実写でないからこそ可能な、身体のノイズを排して輝きを高めつつ実在感を与える話法について考えさせられます。
ストーリー部分では舞台裏の顔を見せてくれる彼らが、ステージではまぶしい光を浴びてつかのまの時をオーディエンスの記憶に刻みつける姿が強く印象づけられます。
なんというコンテンツなんだ。

ステージ構成


4グループ各3曲ずつを担当(前半2曲後半1曲)、アイドリッシュセブンのセンター七瀬陸さん(これはもう小野賢章さんの至芸ともいうべきもので、ひたむきで可憐な少年性のおもかげを永遠のものとして留めようとする向日性の華のある声質が強く印象に残ります)、不世出のスタアの再来となるべくムッシュ九条の養子に迎えられてTRIGGERのセンターになった九条天さん(斉藤壮馬さん演じるドーンといってバーンとも言わないし陰気で権威的な権力者の養父におまえはきらいだ雲古投げるともいわない鶴丸国永なので、この世の秩序から超然とジェンダーを攪乱する衣裳に身を包んで高みで歌う技芸の申し子のように映る)の双子デュエットを後半のクライマックスに据え、最後に全員が共通曲を歌う構成。おみごとです。
作中の七瀬陸さんのガラス細工のような呼吸器に負担の掛からない構成です。
陸さん、数ヶ月間のツアーを最後まで歌ってくださってありがとう。
どうぞお身体おいといください。
一織さんと《Fly Away》を歌ってくださってありがとう。
みなさんフラウェ、っておっしゃるようですね。
そのうちぜひフルコーラス聴かせてください。

きらきらのひとびと


アイドリッシュセブンはいそうでいないドリームチーム。
映像と声の演技の技術と技巧の結晶のようなユニットに感じられました。
ハイキーな照明できらきら感をいやましに加えて、個性ゆたかな面々がひとりも落伍者をだすまいと知性と技芸を結集して清潔な向日性にむかって歌を寄せてゆくのがほかには替えがたい魅力です。
髪型と愛敬とあかるさを陸さんと共有する和泉三月さんの安定感を増した歌と弾むような踊りが陸さんの脆さと線の細さを補っている(代永翼さんのファルセットの使い方が絶妙です)。
きっとお稽古沢山なさったでしょう。

アイドリッシュセブンが出てくるたび一織さんを目と耳が追っておりました。力みのない正確でシャープな所作に気品があり、馥郁と深く、あたたかみのあるハイバリトンの片鱗のある声で、ポップスの美意識にとどまらない技芸の高みを模索している印象も受けます。ピアノの世界でいえば透徹した知性と技芸と気品で高みを目指す英国の「超絶の伝統」ふうでもあります。
彼の微笑みを抜くカメラワークで心がほうとし、彼が歌う場面になると耳がやすらぐ。心臓が危なかった。
ポップスのボーイズユニットでこの声質で歌う人の技芸を具現化する増田俊樹さんの演技がすばらしい。
一織さん、ブルーブラックの髪のハーフアップがお似合いになります。
彼のファンで髪をブルーブラックに染めたくなるかたもおいでになることでしょう。

六弥ナギさんの欧州ロックに親しんだ発声とディクション(江口拓也さんの演技には第一言語を欧州言語とする人のアクセントを研究した形跡がみえる)と某国第二王子らしいエレガンス。ラテン語でいえばlargitioというべきものだと思う。まぶしいライトに照らされて「おにいさん」の韜晦を脱いだ二階堂大和さんの大人の魅力(白井悠介さん好演、こんなに妖艶な側面のある人だとは思いませんでした。一瞬刀剣乱舞の明石国行さんかと思いました)。逢坂壮五さんの清潔で知的な歌いぶり(財閥元御曹司で、自らを放逐した世界に対して自らの潔白を証明しようとする若者を演じる阿部敦さん、ほんとうに至芸だと思います)、全員揃ってはじめてあの朗らかな芸風が達成されます。すばらしい。

うす、そーちゃん、おれ、王様プリン、好き。食べていい?とか、学校でわかんないことはいおりんにおしえてもらう、などオフステージでの独特の口調が印象深い猫耳パーカー青年・四葉環さんが舞台の上ではそれはそれはそれはもうキラキラしていました。長身で透明感のある声質、歌いまわしと踊りにのびやかなストリートみがありました(KENNさん、歌うま!)。
グループ内ユニットMEZZO”の相方、逢坂壮五さんとの双騎出陣、いえ、デュオの舞台もぜひ大画面で見たい。
あのきらきらしさがわすれがたいです。


ZOOL(ズールと発音します。デザイン上の意図から表記にはZにアクサンテギュ、Lにセディーユ(リャー、lの軟音)を使っています)は豪奢なアウトロー感あるヴィジュアル系グループ。作中のツクモプロデュースのグループでメンバー全員にもろもろ札付きの逸話がありますが、楽曲充実、歌はめっぽううまい。
モーションキャプチャーでの身体性のノイズの除去は、作中ではメンバーの棗巳波(なつめ・みなみ、子役出身の歌手で体温の低いクールさがある)作詞作曲という設定の《ササゲロ》(現実世界の時空ではヒャダイン前山田健一さんへの委嘱作品で、じつに強烈な曲をお書きになる)にすら効いてしまう。実写なら瘴気漂う感じかもしれないのに、共依存を恋人に求める教祖型ストーカーカレシの歌のメッセージが際立ってプロジェクションマッピングの文字とともに強く迫ってくる。「なんてね」と曲中ではぐらかしたり、「過激でしたよね」とフィクショナルなものとして届けたい思いをそれとなく添える棗巳波さん。
危険な訴求力です。
ZOOLメンバーはその悪の華の力すら引き受けてしまうでしょう。

ツインヴォーカルユニットRe:valeのお二人のたたずまいにはたしかな手触りがあります。
元サッカー選手らしい太く鍛えられた体幹にささえられた機敏な踊りに亜熱帯の雨のようなあたたかい声で歌う情熱を乗せる百(もも)さん。すらりとした長身にプラチナ色の長髪、音楽以外のこの世のものに執着のなさそうな容姿でシンガーソングライターらしい耳にすなおにしみとおる爽やかな歌いぶりの千(ゆき)さん。このお二人のモーションキャプチャーダンサーの配役がきわめて的確で、百さんのアスリートらしさが際立ちます。
百さんは不慮の事故によるRe: valeのメンバー交代時に一ファンから新規加入して、声の出なくなるアクシデントを乗り越えて敬愛する先輩とともに歌える喜びを再発見して舞台に立つ人だというエピソードを知ると、友愛の至福を伝えるタイミング完璧なアイコンタクトを抜くカメラワークに心ゆさぶられます。
百さんの声は刀剣乱舞の小烏丸さんの声の方(保科総一朗さん)、千さんの声は刀剣乱舞の小竜景光さんの声の方(立花慎之介さん)。それぞれあたたかな湿度とふわりとした夢の旅人風の声質におもかげがほうふつとします。
保科総一朗さんの声質は刀ステ/映画刀剣乱舞小烏丸の玉城裕規さんとも通じるものがあるかもしれません。

(ユニット名のRe:valeは「リヴァーレ」と読ませますが、ラテン語関係者としてはラテン語でメールを書く人への返信タイトルに見えてきてなりません。「Re: さらば」といった語感でしょうか。何度でも再生するユニットとのことですので、あながち外れてもいないのかもしれません。この場合はラテン語読み的には「レウァレー」と読みたい。「Re: 渓谷」のつもりで「リヴェイル」と読んでお友達に「リヴァーレなんです」と言われました。まさかのラテン語説を唱えたい)

TRIGGERさん。完成された技芸で安心して聴いていられるユニットです。お衣裳もとってもモード。後半衣裳のベストのキルティング生地とジャケツのベロアとパール遣いにシャネルオマージュを感じました。
作中世界で登場人物たちがしばしば話題にする謎の「抱かれたい男ランキング」」で1位と2位に君臨する八乙女楽さん(やおとめ・がく、八乙女事務所社長の息子で、技芸一本で食べて行けるように幼少期からスパルタンな英才教育をうけて反骨精神を養った人。羽多野渉さん好演)と十龍之介さん(つなし・りゅうのすけ、母親の再婚で「沖縄ホテル王の息子」と称されるもじつは苦労人)のショウアップされた妖艶さも、九条天さんのショウアップされた人間離れしたたたずまいも、映像技術の力で自然な姿に映ります。
ストーリーを知っていると、ステージの上で時代の欲望のシンボルを担う彼らも、それぞれ人間としての苦悩を抱える愛すべき人物であることがわかって感慨が増します。
つなしさんの声は刀剣乱舞の燭台切光忠さんと江雪左文字兄さまの声の方(佐藤拓也さん)が担当しています。明らかに面影があります。三者三様にケアリングパースンで好漢です。

鑑賞環境


新宿バルト9のDolby Cinemaで見て正解でした。
会場の照明のまぶしい輝き、鮮やかなプロジェクションマッピング、からだを包む音響のかたち。いずれも明晰さがいやましになります。
なにより音響の遠近感がきわだち、頭上からも音が降ってくるのがすばらしい。作中のライヴ会場になっているレインボーアリーナの音響設計がそうなっているのでしょう。
ライブビューイングというよりも、ライブ会場での没入感を強く感じました。
客席の映像は座席があるのにオールスタンディング状態です。
応援上映ならキンブレが振れます。もっと没入感が増すでしょう。
作中のきらきらしい彼らが概念だということはわかっているのですが、青に調光したキンブレを振りにもう一度劇場に行きたい。
とうかぶカーテンコールで屋号を呼ぶ喜びを覚えました。海外のクラシックコンサート会場のノリノリのノリのよさもだいすきです。メインランドチャイナ・韓国・台湾・香港の大都市レジデントオーケストラ定期公演でヒューヒューしつづけてきたマダムに死角はありません。

なんかすごいものをみてしまった気がします


きちんと祝祭性の体験を言語化したいのですが、これまで勉強してきた祝祭とマテリアルカルチャー論では少々届かないところがあります。
フラットに3次元のスタアの技芸とVTuberやボーカロイドの技芸をつなげて見る世代のオーディエンスのみなさまならきっと私に見えていないものが見えるでしょう。
ご覧になった同業者のみなさまと話がしたいし、作品のファンの学生諸君に話をききたい。
第6部までストーリーを読んで一織さんたちを鍛えて来年度に臨みます。

追記


ところで各グループとメンバーカラーの話は私のなかではまだうまく言語化できないところがあります。
クィア読みできるけれどクィア・ベイティングはしたくない。
作中世界でときどきなぞの「抱かれたい男ランキング」の話をしてもアイドリッシュセブンの面々がなまなましくならない姿や、ZOOLメンバーとの初見時のあけすけな会話と素でかみあわない姿も、所属事務所の方針で妖艶さを強調して売り出される苦悩にTRIGGERの楽さん龍之介さんがしっかりと向き合い、おのれの芸風を確立して乗り越えてゆく姿を描いているのも新しい。

8周年イベントストーリーに出てきた和泉兄弟と十龍之介さんのこんなかんじのやりとりがなかなかでした。
一織さん「つなしさんは、私たちにとってはスポーツマンですけれど、対外的なイメージはえろですよね」
龍之介さん「えろ」
三月さん「エロエロビーストだろ!」
一織さん「兄さん。2つ繰り返すことはありませんよ。1つでじゅうぶんです」
龍之介さん「一織くんはやさしいなあ」

優しいのか……

8周年記念イベントストーリーの「十六社」の新製品企画プロモーションイヴェントで彼らはZOOLの狗丸トウマさんとともに「スポーツドリンク担当班」に配属されます。
和泉兄弟がなんとなく腑に落ちない表情をするのは解る気がします。
トウマさんとつなしさんがライフセーバーなら、和泉兄弟は救護班かもしれません。
マネージャー、あなた熱中症ぎみでしょう、どうぞこれを呑んでください。
呑めよ。オレからもすすめるぜ。
お二人とも優しいですね。ありがとうございます。

ゆるゆる考えてまいります。

つづく。
(『アイドリッシュセブン』本体ゲームのストーリー部分各章で出てくるこの「つづく。」と、各部終章で出てくる「おわり。」表記が好きです)

追記2 洋菓子の誘惑


二日ぶりにアイナナアプリをあけました。
ホーム画面に常駐いただいている一織さんから涼しいお顔でご実家のお店の新作ケーキをおすすめされました。
台詞がでます。
私の幻覚ではありません。
心臓止まるかと思いました。

刀剣男士は茶と酒は勧めてきますが、よもつへぐひになるので食べ物は勧めてきません。アイナナは並行世界現世ものですから一織さんはケーキを勧めてくださるのでしょう。
学生時代以来連戦のケーキ屋探索者としてはじつに心おどるお話です。


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