『映画刀剣乱舞ー黎明ー』をみました
ネタバレを避けた感想です。
非常にウェルメイド。
特撮と少女漫画のナラティヴで社会派映画に必要な要素もまつろわぬ者の歴史と周縁の問題もきちんと入れてきている。余白を大きくとり、セリフの応酬でこれらの話題を切り取って見せる方法に工夫がある。余白を読み込む力のある人ならより楽しめるかも。
刀剣男士は全員それぞれにかっこいい。審神者胸熱シーンあり。ギャルと高校生がかわいい。ギャルの明るさと高校生の一本気な純情で画面に光がともる。好感がもてる。
職務に忠実なおじさんの哀愁と刀剣男士の純情の描き分けもいい。
酒呑童子の中山咲月さん大好演。柄本明の藤原道長の使い方が贅沢。ギャルとへっしーの旅のスピンオフをぜひ見てみたい。
音楽/音響、美術、VFX技術が圧巻。意外なところに現代美術への参照や某大ヒット伝奇漫画への参照があって楽しめる。
ちょっと無理したかな、蛇足かなと思うシーンはあるのだけれど、登場人物のセリフの応酬と回想シーンの挿入を通して富の偏在や階層の相違によって生じる思考の相違やディスコミュニケーションと分断のむごさを描いていると考えるとそこはわりと見られるかもしれない。
ヤングケアラーと子どもの貧困問題も盛ってくる志は買うけれど、ここだけ脚本が明らかに弱い。説得による怨霊の消滅を意図したのだろうが、「持てるもの」の側で生きてきた若者が善意で瀕死の同年輩の若者にかける言葉の権力性と暴力性を通して意図せぬ形で富と教育の偏在による分断の酷さが際立ってしまう。私のように加点法で考える観衆ばかりではない。非常に惜しい。
とはいえ面白かったです。4DX版を見に行きます。
バナー写真: 散歩機能で表示された弊本丸のへっしーの航跡(イスタンブール-羽田間)。ヒースローからイスタンブール経由羽田行きのフライト(乗り継ぎ時間合わせて20時間)によく耐えましたえらい。へっしー機内食食べて、お腹空いちゃうよ。ギャレーに行ったら軽食ももらえるよ。