村上宗隆、NPB最年少50号本塁打/「三冠王」と「シーズン最多本塁打」同時達成の可能性は?
東京ヤクルトスワローズの村上宗隆が、NPB史上最年少でシーズン50号本塁打に到達した。
9月2日、本拠地・神宮球場での対中日ドラゴンズ戦に「4番・サード」で出場した村上宗隆は、0-0で迎えた3回、1死一、三塁の場面で中日の先発・左腕の大野雄大この試合、2度目の対決。
カウント2ボール1ストライクからの4球目、大野が投じた113キロのカットボールはほぼ真ん中近くへ。村上はこれを完璧に捉えると、神宮のライトスタンドに放り込む、今季50号3ランホームランを放った。
NPBでシーズン50本塁打超えはこれまで9人が14度、達成しており、村上宗隆は史上10人目、特に日本人選手としては1950年の小鶴誠(松竹)、1963年の野村克也(南海)、1964年・1973年・1977年の王貞治(巨人)、1985年・1986年の落合博満(ロッテ)、2002年の松井秀喜(巨人)に次いで6人目の快挙となった。
しかも、村上宗隆は今季、22歳で開幕を迎えたシーズンに50本塁打に到達しており、1964年、王貞治(巨人)が1964年、23歳で迎えたシーズンに記録したシーズン50本塁打超え(55本塁打)を抜いて、NPB史上最年少記録を更新した。
さらに、9月4日、対中日戦で1-6で迎えた6回、一死一塁の場面で、今度は中日先発の高橋宏斗とこの日、3度目の対戦。
村上は1ボール0ストライクから高橋が投じた2球目、141キロのスプリットを叩き、左中間スタンドに叩き込む今季51号2ランホームランを放った。
これでシーズン51号本塁打への到達は、NPB史上9人目(11度目)の快挙となった。
村上宗隆、ただいま「11冠」
村上宗隆は9月4日終了時点において、セ・リーグの打撃各部門で、「打率」「得点」「安打」「本塁打」「塁打」「四球」「敬遠四球」「出塁率」「長打率」「OPS」「得点圏打率」でトップに立っている。
表彰される打撃タイトルだけ見ても、「首位打者」「最多安打」「本塁打王」「打点王」「最高出塁率」の5部門でタイトルを獲得できる可能性がある。
村上宗隆が「三冠王」と「シーズン最多本塁打」の「両獲り」するための戦略は?
こうなると、村上宗隆への次の期待は、「史上最年少の三冠王」と「シーズン最多本塁打記録更新」を達成できるのか?という点だ。
ヤクルトの残り試合はあと22試合(9月4日試合終了時点)。
村上宗隆は今季これまで120試合に出場し、520打席。
1試合平均4.3打席に立っているので、残り全試合に出場すると仮定すると、95.3打席となる。
村上はこれまで520打席で51本塁打を放っているので、10.2打席にホームラン1本を放っていることになり、残り打席で9.35本となる。
2013年にウラディミール・バレンティン(ヤクルト)が塗り替えたシーズン本塁打記録60本に届く可能性はまだ十分にある。
しかしながら、ヤクルトはリーグ優勝を争っている立場である。
特に2位のDeNAとは残り6試合、3位の阪神とも残り6試合があり、他のチームもクライマックスシリーズ進出を懸けて勝利にこだわる試合が続くことになり、村上との勝負を避ける場面が増えることが予想される。
そうなると、村上宗隆がいままでと同じペースでホームランを打つことは難しくなる可能性もある。
村上宗隆の球場別の打撃成績
球場別に見てみると、意外にも本拠地・神宮球場では本塁打率は高くない。
58試合・239打席で19本塁打であるため、ホームランは12.6打席に1本というペースとなる。
一方、バンテリンドームでは10試合・44打席で7本塁打。
ホームランは6.3打席に1本という驚異的なペースとなる。
セ・リーグでホームランがもっとも出やすいのは神宮球場で、逆にホームランがもっとも出にくいのはバンテリンドームである。
今季、神宮球場における本塁打パークファクターが1.29である一方、バンテリンドームでは0.72となっており、1.8倍の差がある。
すなわち、村上宗隆はその「常識」の逆を行っているということになる。
すでに三冠王はほぼ確実か
一方で、「三冠王」は、「本塁打」、「打点」の2部門は、いずれも2位以下を大差で引き離しており、「二冠王」はほぼ確実な状況だが、残る「首位打者」もリーグトップの打率.341、2位の大島洋平(中日)が打率.322(9月4日終了時点)と1分9厘(0.019)の差がある。
打率は上下に変動するので、ここから村上が打率を1分下げ、一方で大島が打率を1分上げれば、大島にも逆転のチャンスはある。
しかし、仮に村上が打率を1分下げるというケースを想定すると、残り22試合で75打数20安打、打率.267という成績で、シーズン打率は.330になる。
逆に、大島が打率を1分、上げて.330を上回るには残り22試合で90打数33安打、打率.367というハイアベレージを保つ必要がある。
これによって、大島の打率は.331となり、村上を上回ることができる。
となると、大島が逆転で首位打者を獲得するのもかなりハードルが高いことが予想される。
従って、村上宗隆が「三冠王」と「シーズン最多本塁打更新」の「二兎を追う」ための戦略は、チームの勝利を優先しつつ、「打率」は気にせず、ホームラン狙いで構わない、ということになる。
当然、ヤクルトが早くリーグ優勝を決めることができれば、村上はチームの勝敗を気にせず、自らのバッティングに専念することができる。
結論として、村上宗隆が「三冠王」と「シーズン最多本塁打更新」を達成できるかどうかは、以下の3つの要素が決め手となるだろう。
①ヤクルトがリーグ優勝をなるべく早く決めることができるか
②対戦チームが村上と勝負せざるを得ない状況をヤクルト打線が作り出すことができるかどうか
③村上宗隆自身が「苦手」とする本拠地・神宮球場でどれだけホームランを上積みできるか
これから1か月、村上宗隆が「史上最年少にして最高のスラッガー」の称号を手にすることができるか正念場を迎える。
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