日本シリーズ2022/第1戦の振り返りと第2戦の展望

2022年の日本シリーズ第1戦は、ヤクルトが本拠地・神宮でソロホームラン3発でオリックスを圧倒し、先勝した。

ヤクルトは初回、オリックス先発の山本由伸から、先頭の塩見泰隆がヒット、2死から5番のホセ・オスナの三塁線を破るタイムリーで2点を先取、さらに3回に塩見泰隆、4回にオスナにそれぞれソロ一発を浴びせ、山本由伸は左わき腹の違和感で5回途中、4失点、98球で降板。

オリックス攻撃陣は2回に、ヤクルト先発の小川泰弘を捉え、8番の紅林弘太朗がタイムリー安打を放ち、1番の福田周平が押し出し四球を選んで一旦は同点に追いついたが、2点リードを許した5回二死から3番・中川圭太のラッキーな三塁打で二死満塁のチャンスをつくったものの、無得点に終わった。
その後、オリックスは2点ビハインドの8回、二死三塁から代打・T-岡田のタイムリー安打で1点を返したが、ヤクルトは8回、オリックス5番手の平野佳寿から、4番・村上宗隆が一発を放った。

オリックスは2点を追いかける9回表、ヤクルトのクローザーであるスコット・マクガフから一死一、二塁のチャンスをつくったが、5番・杉本裕太郎、代打・頓宮裕真が連続三振で万事休す。
ヤクルトが5-3で逃げ切り、シリーズ初戦をものにした。

<ポイント>
①山本由伸の4失点とアクシデントによる早期降板

オリックスは「絶対的エース」の山本由伸が5回途中、左わき腹の違和感で降板し、大誤算のスタートとなった。
山本は神宮での登板は2018年の交流戦以来であり、しかも当時は中継ぎでの登板だった。神宮の特殊なマウンドへのアジャストが懸念されたが、それが的中した結果となった。
オリックスは初戦を落としたのも痛いが、山本が次回、第6戦以降の先発マウンドに上がれるかどうかも心配である。

前回の日本シリーズ勝敗予想で、以下のように書いた。
「神宮は狭いので、狙いすました一発というのも効果はある。
山本からは連打は期待できないため、一発で試合を決めるという打撃も価値がある。
山本は特に先頭打者の塩見、下位打線の長岡の一発には要注意である」

予想通り、塩見は山本由伸の速球を仕留めてみせた。
初回も、塩見は先頭打者として山本の初球をレフト前に運んでおり、思い切りのよさを発揮した。
これが、ホセ・オスナの先制2点タイムリー二塁打を生んだ。
オスナの三塁線を襲った打球はあと数センチでファウルという打球だったが、三塁ベースをかすめてイレギュラーバウンド。
ヤクルトにとっては値千金、オリックスと山本由伸にとっては不運な当たりとなってしまった。
4番の村上宗隆を警戒して歩かても、5番に好調なオスナがいる、というのはオリックスにとっては頭が痛い。
山本由伸のような絶対的エースにとっても超えれられない壁だった。

②オリックス打撃陣の長打力不足

オリックス打撃陣は10安打を放ったが、5回二死走者なしから中川圭太が放ったライト前の当たりをサンタナが照明が目に入り後逸して三塁打になったもの以外、全てシングルヒット。
結果として、残塁12と打線が繋がらなかった。
ヤクルトが「地の利」を生かして、ソロ3発を放ったのとは対照的であった。

オリックスは2点ビハインドの8回、先頭の西野がヒットで出塁すると、7番の若月がバントで送った。
セオリーでいけば、終盤とはいえ2点ビハインドの無死一塁でバントを企てるのは消極的かつ無益とも思われる。
だが、下位打線を迎える場面であり、そこまで悪い策とは思えなかった。

それより気になったのは、オリックスが2点を追う5回、一死から宗がヒットで出塁した後、福田の打席で2ボール0ストライクからヒットエンドラン失敗で宗が盗塁死となった。
カウント2-0が故に、ストライクが来るであろうという読みでのヒットエンドランの仕掛けだったが、この日、ヤクルト先発の小川泰弘の制球はあまりよくなく、裏目となった。
その後、二死から中川の幸運な三塁打から満塁のチャンスをつくっただけにチグハグな攻撃となってしまった。

オリックス打線は長打は生まれなかったが、先発メンバーの野手でヒットが生まれなかったのは1番の福田周平と5番の杉本裕太郎だけ。
ヒット1本でも出た打者は第2戦以降、余裕を持って試合に臨めるはずである。

③オリックスのリリーフ陣、平野佳寿に不安要素

山本由伸が5回途中で想定外の降板をしたことで、オリックス救援陣は初戦からフル回転せざるを得なくなった。
オリックスは終始、ビハインドの場面で、比嘉、本田、阿部、平野と繋いだ。
平野以外は1イニングづつを無失点に抑え、かつ初戦にリリーフ4人が登板したことで、日本シリーズの「雰囲気」を味わえたことはプラスの材料だった。

一方、シーズンを通してクローザーを務めてきた平野が8回、村上宗隆にソロホームラン一発を浴び、2点差に広げられたことは、9回の反撃を苦しくしてしまった上に、平野のクローザー起用を悩ませる恰好となった。

前回の日本シリーズ勝敗予想では、「オリックスのクローザーだが、シーズン終盤、絶対的な安定感ではなかった平野に代わり、阿部を起用するという考えもある」と書いた。

オリックスベンチは臨機応変にクローザー起用を考慮せざるを得ないだろう。

④山田哲人、1試合4三振のシリーズワーストタイ記録

ヤクルトは3番の山田哲人が4打席連続三振を喫した。
日本シリーズでの1試合4三振は、史上7人目で、4打席連続三振は5人目となった。
ヤクルトは初戦、山田の活躍なしに勝利したが、打順3番がブレーキで打線が分断されるのは痛い。

1992年の日本シリーズ、ヤクルトは4番のジャック・ハウエルがシリーズ序盤から大ブレーキ。
第3戦に4打席連続三振を喫し、第4戦は打順5番に降格となったが、16打数1安打、ホームラン0、8三振と不振を極めた。
第5戦に、待望の第1号3ランが飛び出し、第6戦にも2試合連続のホームランを放って、ヤクルトは2連勝して逆王手を懸けたものの、第7戦はハウエルが3三振で、結局、ヤクルトは3勝4敗で西武に敗れた。

2018年の日本シリーズでは広島の3番、丸佳浩が第3戦で4三振。
丸はこのシリーズ、6試合とも不動の打順3番で4安打・3打点を挙げたものの、ホームランはゼロ、12三振を記録し、広島は4勝2敗でソフトバンクに敗れた。

このように、主軸の不振はシリーズの行方を左右してしまう。
かといって、山田はキャプテン、かつチームの顔であり、スタメンから外すことや、打順を下位に変更することも難しい。
思い切って、山田の打順を好調な塩見泰隆と入れ替えて、1番に変更するというのも手ではないだろうか。

<第2戦の展望>
シリーズ第2戦の先発は、ヤクルトがサイスニード、オリックスが山崎福也。

オリックスは第2戦目に同じ左腕の宮城を予想する声もあったが、打撃センスのある山崎福也に白羽の矢が立った。

山崎福也にとっては、昨季の日本シリーズ第5戦(東京ドーム)に次いで、自身2度目の先発となるが、日大三高、明治大学で慣れ親しんだ神宮のマウンドだけに、チームに勝ちを呼び込む投球を見せたいところ。

特に山崎福也は左腕でありながら、右打者に強い。
今季、左打者への被打率が.286に対し、右打者は被打率.233と抑えている。
一方、ヤクルトの右打者のうち、中村悠平、サンタナは左腕を苦手としている。

ただ、山崎の場合、被本塁打は右打者のほうが多く、今季、114回2/3、被本塁打13本中、8本を右打者から打たれている。
狭い神宮だけに、一発は警戒したいところだ。

ヤクルトは初戦の勢いを活かして、2戦目も勝てば、日本一2連覇にグッと近づく。

5番のホセ・オスナはクライマックスシリーズMVPからの調子を維持しており、4番の村上宗隆と勝負を回避することが難しい。
ヤクルトは初戦同様、一発攻勢が勝敗のカギとなりそうだ。

サイスニードは今季、京セラドームでオリックス戦に先発し、5回途中、被安打11、6失点で敗戦投手となっている。
だが、サイスニードは8月以降、好投を続けており、5試合で防御率1.17。
特に今季、本拠地・神宮では14試合に先発して7勝3敗、防御率2.86と得意としている。

オリックス打線は交流戦で戦ったサイスニードとは別人と考えていいだろう。
オリックスは序盤から足を使った攻撃で、サイスニードを揺さぶりたいところだ。

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