【2022年】日本ハム・加藤貴之、歴代最高の「制球王」に


北海道日本ハムファイターズの加藤貴之が、NPB史上最高の「制球王」の称号を手に入れた。


加藤貴之、NPB史上最少のシーズン与四球「11」

9月26日の楽天戦に先発した加藤は1回、一死二塁の場面で、3番の浅村栄斗にストレートの四球を与えたが、後続を断った。
今季、加藤が与えた四球は10個目となった。

加藤は7回まで楽天打線を無失点に抑えてきたが、3点リードの8回もマウンドに上がった。しかし、二死走者なしから2番の小深田大翔に四球を与え、浅村のタイムリー二塁打、島内宏明の連続タイムリー安打で2点を失ったが、リードしたままま8回を投げ切った。

加藤は8回、99球を投げ、被安打6、8奪三振、与四球2、2失点。
伊藤大海の開幕戦以来となるリリーフを仰ぎ、今季8勝目(7敗)を挙げた。

加藤はこの登板で、2四球を与え、今季の与四球は11個となったが、今季の投球回数は147回2/3となり、規定投球回数(143回)に達した。
NPBで規定投球回に達した投手で、シーズン与四球が11というのはNPB史上最少である。
与四球率(=与四球/投球回数)は0.67でこれもNPB史上最高である。

これまでの史上最高の「制球王」は、元祖・「二刀流」野口二郎

NPBで加藤貴之より以前に、データの上で「制球王」であったのは、戦中・戦後に「二刀流」で活躍した野口二郎である。

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野口二郎は阪急ブレーブス在籍時の1950年、30歳で迎えたシーズンで35試合に登板、181回2/3を投げて、防御率3.16はパ・リーグ6位、15勝9敗という成績を残しているが、与えた四球がわずか14という、驚異的な制球力を発揮した。

この時の野口の与四球率(=与四球/投球回数)は0.69。
2試合完投しても与える四球はわずか1.4個という制球の良さであった。
打者750人に対して与四球14個であるため、対戦した54人に一人しか四球を与えていない。
この年、10月22日の登板から11月19日の登板まで、54回1/3連続無四死球という記録(NPB史上4位タイ)をつくっている。

野口はこの年、野手としても83試合に出場し、打率.259、3本塁打、41打点をマークしているが、342打席に立ち、四球はわずか9しか選んでいない。

野口は投手としても四球を与えず、打者としても四球を選ばない選手だったといえる。

加藤貴之の投手としての「能力」を表すリーグトップクラスの指標

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加藤は社会人経由で2016年に日本ハムに入団したが、プロ6年目の昨季、初めて規定投球回に達した。
今季、勝ち星は8勝どまりで、キャリアを通じてシーズン二桁勝利はまだない。
だが、今季の防御率2.01は、山本由伸(オリックス)、千賀滉大(ソフトバンク)に次いでパ・リーグ3位である。
WHIP(1イニング当りで出した走者(安打・四死球など))で見ると、加藤のWHIP0.914は、山本由伸の0.908に次いでリーグ2位。
加藤の被打率.226も、山本由伸の.195に次いでリーグ2位であり、勝利数以外の指標でリーグトップクラスを示している。

元祖「二刀流」・「鉄腕」野口二郎、通算237勝、830安打で34歳で現役引退

野口は31歳、加藤は30歳のシーズンに自己最高の「制球力」を発揮した。
野口はこの年、1950年に自身最後となる「投手として規定投球回数」「野手として規定打席」の到達を同時に達成しているが、NPBでは史上唯一である。

野口は1953年のシーズンを最後に34歳で現役を退いた。
投手として通算237勝はNPB歴代11位タイ。
甲子園大会で優勝投手になった選手がNPBで200勝に到達したのは野口が最初である
その後も、平松政次(大洋ホエールズ)の2人しか達成していない。
通算防御率1.98は2000投球回以上で史上2位。
1942年にはNPB史上初のシーズン40勝、NPB最多となるシーズン19完封、そして延長28回を一人で投げ抜き、「鉄腕」と綽名された。
野手としても当時NPB記録となる31試合連続安打をマークし、通算830安打。
元祖「二刀流」という称号に相応しい成績を残している。

加藤貴之は来季、31歳を迎えるが、ますます円熟味のある投球を見せてくれることだろう。

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