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重大事故の時にどうするか?

ヤフー時代の部下から突然メッセンジャーが。

「以前宮坂さんが緊急対応時に残して頂いた言葉を今度セミナーで使っていいですか?」

と。


リーダーの仕事はいっぱいあるけどなかでも大きな仕事の一つは重大事故の発生の時の陣頭指揮。平時は部下で回せるようにするのがマネジメントだけど、危機の時まで部下にまかせるわけにはいかない。
お恥ずかしながらヤフー在職中の22年で何度か重大事故を起こし関係者の人に多大な迷惑をかけてしまった。その度にその陣頭指揮をとった。
結果的にヤフーのなかでもっとも深刻な事故対策をやった人の一人じゃなかろうか。そのなかからノウハウ的なものがたまってきたものを部下にメモしておくってあげたものを彼は覚えていてくれたらしい。

彼いわく危機対応の時にすっごく役にたって指針になったといってくれて送ってくれた。

ひょっとしたら他の人にも参考になるかとおもって(若干訂正してますが)ここに残しておきます。


重大事故の時にやったほうがいいこと10個
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1.作戦司令室をつくる
まず全員をあつめること。
会議室をひとつ全部おさえること。で、全員をとにかく集める。
ここが危機対策の作戦司令室になる。
終結宣言までずっとこの部屋は確保しておく。

2.キックオフが重要
まず第一回のキックオフミーティングを開催する。
そこでトップは現在の状況を全員で共有するための資料をつくること。
その資料は部下ではなくトップ自らがつくること。
いま何がおきてるか?いま何をしなければいけないか?迷惑をかけてるユーザはどれくらいの広がりがあるのか?その原因はなにか?診断と処方はどれくらいすすんでるか?。
これらをキックオフミーティングでトップが自分で言語化して話さねばならない。トップがいわないと伝わるものも伝わらない。
何が問題で誰に迷惑をかけていて何をして解決するのか?といった骨太なところは自分で言語化する程度には理解しなければいけない。
わかんなければしつこくわかってる人に聞いて理解すること。

(追記1)なぜキックオフ資料を自分で作るのが良いかというと、資料を作っているとわかってない空白地帯がクリアになっていきそれを人に聞くことによって空白部を埋めることができる。自分が何がわかってないのかを知る方法の一つとして文書を作る。もちろん個別の現場担当者の持ってる圧倒的知識がないので解像度は荒くなる。精密な2万5000分の1の地図のような文書である必要はなく20万分の1くらいの解像度でいいから全体の地図が描ける程度には文書作りながら人にきいて知の空白部を埋めていく。

(追記2)キックオフ文書は誰が引き金をひいたとかの情報はいらない。それはユーザーには関係ない。大事なのは「どのユーザーに迷惑をおかけしているのか?そしてどのユーザは正常状態か?の切り分け」。まずはこれくらいはできるようにする。これが大変ではあるが。。。


3.チームをわける。そしてチーム毎に一人だけチームリーダをつくる
2ができたらチームをわける。
なぜなら危機対応は総合格闘技のようなもので立ち技、寝技、パンチ、キック、あらゆることに同時に対処する同時並行型の仕事になる。
だからこそ効率的にチームをわける必要がある。
そして危機対応の時は全社から続々と人が集まってくる。だから1つのチームに部長が4人とかのケースがざらにでてくる。忖度してお見合いをしてる暇はないのでリーダはとにかく一人にしとく。チーム毎にリーダをつくるが必ずリーダは1名。二人リーダ体制は絶対駄目。

4.定時連絡の仕組みをつくる
チームをわけると同時並行でタスクを処理できるようになるが横のチームの動きがわからなくなる。
だから定時連絡の仕組みを。メールでもメッセンジャーでもなんでも良い。
なにかおきたら連絡ではなく時間がきたら必ず連絡する。顔をあわせてやるときは現場対応の人は呼ばずにリーダーがあつまってやる。手がとまるしね。

たとえば8時、12時、17時、21時、24時とか決めてその時間に部屋にリーダがあつまって定時報告をする。
こうすると定時連絡の時刻という締め切りが自ずとさだまる。その待ち合わせ時間に向けて各チームが仕事をする。で、時間がきたらあつまって対応を報告する。さらにみんなで次の待ち合わせ時間に向けて何するか?とか決めてすすむ。対応ー報告ー計画ー対応ー報告ー計画・・・のサイクルというかリズムのようなものが生まれてくる。

(追記3)最初の頃は最前線で手を動かしている広報担当、カスタマーサービス担当、エンジニアが集まっていたがそれやると仕事がとまるので、その上司がきて説明するように変更。


5.ホワイトボードを用意
1チーム1枚の原則。けちらない。作戦司令室におく。10チームあれば10個おく。
ボードだけみたらどのチームが何をしてるかがわかるようにすること。
深刻な事故に時はつぎつぎと新メンバが最前線に投入されていくことになるがボードみればわかるようにしておくと便利。

6.食い物と睡眠も復旧対策
長期戦だと気分がめいる。徹夜も数日やると精神も身体もボロボロになってくる。続かない。
食事を家畜の餌化せずに少しでも気休めになるようにけちらない。
できれば暖かいものをたべれるように手配する。
また睡眠不足からの事故が最悪。
食べる、寝るも事故復旧のひとつとして丁寧にやる。

7.広報はユーザーファーストに
メディアよりユーザーの知りたいことから伝える。メディアはメディアのききたいことを聞いてくるが大事なことはメディアではなくユーザーの知りたいことをつたえること。メディアも殺到してくるケースがあって彼らの知りたいことを話したくなるが、ユーザーが知りたいことを話す。推測と事実をしっかりわけて伝えること。メディアは比較的、憶測も含めて話して欲しいといわれるケースが多いが事実を話すことに。憶測はユーザーの役にたたない。

(追記4)「いつ頃、復旧しそうですか?」とかはメディアの方からよく聞く質問。こちらもわからない。「来月頃にはがんばる」ってのは憶測であって事実ではない。憶測はいれない。

8.対外リリースも定時化
対策が長期化しそうなときは対外発信を定期化する。
人は、情報があるかな?とおもって見にいって情報がない、それが何度か続くと不愉快になる。
だからユーザーやメディアに対しても次の情報はN時更新の予定ですとあらかじめ広報ページに記載しておく。
定時更新のときに何も更新すべき情報がなければ「何もありません。次はN時です」と書いておく。
またプレスリリースについては初報のプレスリリースは決定的に重要。
プレスリリースの初報はリーダーが納得するまで一字一句、句読点まで自らが筆ととって手をいれる。

9.トップは帰ってはいけない
深刻事故対策でのトップの最大の仕事は、平常な顔を見せつづけること。
だから山をこえるまでは絶対に家にかえらず(床か近場のビジネスホテルで寝たらすぐに戻る)に作戦司令室で鎮座しとくこと。また焦りたくなる気持ちがあってもイライラしたりせかせか歩いたりしがち。焦りの気持ちを表に出さずに右往左往せずに平然とした顔ですわってゆったり歩く。
トップが不安そうな雰囲気を醸し出すと部下は100倍びびる。

冬山のヤバイ局面のときにリーダーが不安そうな顔をするとチーム全員がびびる。リーダがすべきことは内心が不安でも外では余裕の顔をすることも大事。
写真はある重大事故の時に孫さんから送られてきたメールの文章を壁にはっていたもの。たった12文字に助言だったけど価値ある12文字だった。


10.終息宣言
いやな予感がなくなるまでねばちっこくやる。
いやな予感ほど危機のときはよくあたる。
いわゆる虫の知らせが聞こえなくなるまで油断しない。
それがなくなったら終息宣言。部下がもう大丈夫といっても、自分のなかから虫の声がきこえてくるならばそれはまだ宣言してはダメ。


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重大な事故はないほうがいい。
しかし何年も仕事をしていると事故に遭遇せずに無傷で済む人は少ないだろう。いまこの瞬間も事故対応で苦労している最前線の人、なかの人がいるとおもう。
彼らの健闘を祈るとともに少しでもお役にたてたらうれしいです。

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