コミュニケーションデザイナーの裏側を一挙大公開〜RubyKaigi 2024 ドリンクスポンサー編〜
コミュニケーションデザイナー(以降コムデ)のmmitoです✌️
タイトルの通り、現職のB/43を提供するスマートバンクが、沖縄で2024年5月に開催された国際テックカンファレンス「RubyKaigi 2024」でHydration Sponsor(ドリンクスポンサー)を務めました。
そして、私と同僚の@yuki930さんはコムデとしてドリンク提供の体験設計、制作物の作成・入稿などをメインで担当していました。
そんな、RubyKaigi 2024の経験から、遠方カンファレンスに向けてのコムデと他職種の連携・タスク管理、作成物の制作秘話など一挙大公開したいと思います。
他社のコミュニケーションデザイナー、DevRel、人事の方々の参考になるような情報を共有できればと思います。
前提
遠方カンファレンスは身構えちゃう
さて、オフラインイベント業務に携わるコムデさん。
「沖縄にカンファレンス用のノベルティやパネルが必要だから制作依頼します!」と依頼が来たら少し身構えませんか?
沖縄は素晴らしい場所です。
しかし、仕事として沖縄にカンファレンス用の荷物を用意&発送まで責任を持つとなると、デザイナーが気にするのは「制作予算と納期」です。
例えば制作予算で言うと、東京に会社がある我々は沖縄のような地方イベントでは、飛行機や宿泊代が必要です。これらの必要経費を差し引いた予算内でノベルティやパネルを作成・入稿しなければなりません。
また、ノベルティやパネルなどを新規作成する場合は、DevRelや人事、関係者との案出しと選定が必要です。さらに、作るものが決まっても「予算・納期内で制作可能な会社の選定」にも時間がかかります。
そして、離島配送には通常より2~3日多くかかるため、余裕を持って入稿しなければなりません。
こんな感じで、遠方カンファレンスは予算や納期などの観点で懸念事項が増えるため、少し身構えてしまうコムデも多いのではないでしょうか?
次に、そんな遠方カンファレンスに向き合いつつ、フェーズ別で他職種との連携やどんな動きをしたかについてお話しします。
フェーズ別の連携や動き
初動から、予算管理・タスク管理、体験設計をする展開期、そして直前や当日のエンジニアとの連携をどのよう行ったのかの終盤の3つのフェーズに分けて、連携や動きについて簡単に解説します。
初動
弊社のこれまでのスポンサー経歴でいうと、1回目はKaigi on Rails(東京)、2回目はYAPC(広島)、そして3回目がRubyKaigi(沖縄)と、意図せず徐々に遠方に歩みを進めている状況でした。
YAPC(広島)で遠方カンファレンスの知見はできたものの、今回のような最大級の国際カンファレンスで開催地は沖縄、さらに特殊なカスタムスポンサーもやる!というのは今までの私の知見が通用するのか…😭?と不安がありました。
そんな状況での初動は、弊社の優秀人材@nyanco、@osyoyuがリードしてくれる事で乗り切れました!
特に、どんなスポンサー活動をするかについてRubyKaigiに詳しいお二人から積極的な案出しや情報連携があり、大変助かりました。
最終的に会場にバーカウンターがあることがわかり、ドリンクスポンサーを実施する方向で1月から本格的に動き出しました。
展開期:予算管理とタスク管理・ドリンク体験設計
以降は、初動メンバーで定例を毎週実施して、必要経費と残予算の共有、どんな体験にするか、必要な制作物の洗い出しなどを適宜行いました。
予算管理編
前提でも話をしたようにコムデとして、カンファレンスの制作をする際に以下のような事が気になると思います。
必要経費を差し引いた制作予算がどれくらい残るのか
必要制作物が出揃って予算オーバーしないか
予算をクリアしても、制作物の納期が間に合わない場合がある
今回、nyancoさんが過去のRubyKaigiスポンサー経験を活かし、2023年のうちに必要な予算獲得にCTOのyutaさんと共に動いてくれたおかげで、制作予算が極端に少ないという状態を避けることができました。
また、予算の管理と決裁権を一任されていたnyancoさんと共に、制作物の選定や予算・納期内の制作会社選びを定例内で終えるようにしていました。これにより、懸念点が残らない状態で制作に進むことができました。
ドリンク体験設計編
会場の那覇文化芸術劇場なはーとの図面や写真を手に入れ、Figma上に設置。それを見ながら定例で「どこに何を置くのか、ドリンクをもらいに来た人、受け取った人の流れがどうなるか」などのすり合わせをしました。
当初は会場の写真を使って動線や配置の話をしていましたが、それぞれが脳内でこうなる!と考えてしまい、すれ違いコントのような事象が発生しました💥
その後、osyoyuさんが会場図面を手に入れてくれたので、図面に矢印を書いたり物を配置してみたところ、全員の認識があっという間に揃い、議論が前に進みました。
また、Figma上ではわからないパネルなどの設置物のサイズ感は、実際にオフィスで確認しました。
サイズは小さくないか、見辛くないか、安定性はあるか、体験フローに問題はないかなどをyukiさんが自主的かつ重点的に確認してくれました👏👏👏
終盤:参加者エンジニアさんとの連携、当日
RubyKaigi直前になると、ドリンク提供を手伝っていただく参加エンジニアさんから「ドリンク提供マニュアルを作成したい!」という声が上がりました。
個人的には文字ベースでのマニュアル理解は難しいかも?と思い、一目でわかるようなバーカウンター備品配置図を急遽作成し共有しました。
結果として、事前に何をどこに置くかなど図解できていたので、準備日の設置もかなりスムーズでしたし、
ドリンク提供マニュアルで掴みきれなかった部分も、体験設計から入っていた初動メンバーが当日に口頭で補足・指南しました。
結果、3日間で3,000杯以上のドリンクをスムーズに提供することができました👏🥤
制作物編
ここからは、作った制作物の制作意図や、制作会社さんや使用したカメラなどを紹介していきます。
オリジナルプラカップ
こちらのオリジナルプラカップは「名入れスタイル」さんで制作しました!選定理由は、制作期間30日間と短く、フルカラーで曲面印刷が可能だったことです。
当初、定例内でリサーチした時はワンポイント印刷の会社しか見つけられず、他に選択肢はないとワンポイント想定で試作品を作ってみました。しかし、シンプル過ぎる印象を受けたので、写真右のようなRubyKaigi 2024を盛り上げるようなデザインにしたいと思いました。
ダメ元で、曲面印刷可能な制作会社さんを改めて探したら名入れスタイルさんを発見。そして、予算内だったためテンプレを用いてサンプル品を何度か作成して、要素のサイズ感を確認しながら整えていきました。
実際会場でプラカップを見た際に、どの角度から見ても可愛いくて映えたので、弊社サービスの認知向上だけに重きを置かず、RubyKaigi 2024らしさも取り込んでコミュニティを盛り上げる試みをして良かったと改めて思いました。
ドリンク宣材写真/メニューボード
元々ドリンクの宣材写真を作る予定はなかったのですが、メニューボードに着手し初めた際にドリンクの種類だけではなく、「折角作ったオリジナルプラカップを用いて魅力的にしたい」と思うようになりました。
すぐにnyancoさんにも相談してGOサインをいただいたのですが、GW直前という状況だったので「翌日に撮影」を決定しました。
翌朝、武蔵小山のダイソーで小物を買って出社。美大時代の写真スタジオ講習を思い出しながらMTGルームでライトなどをセッティング。
そして私はカメラを持っていなかったので、yukiさん、急遽手伝いに駆けつけてくれたサーバサイドエンジニアhirotea、お二方のカメラで撮影に挑みました。
お二方のカメラ・レンズ、それぞれの写真は以下です。レタッチはAdobe LightroomやPhotoshopで私が担当しました。
■SNS宣材写真
■メニューボード用写真
私以外の手と時間を急遽借りてしまったことは反省しつつ、会場でB/43がドリンクを提供している事が一目で分かるようになったので、写真メインのメニューボードを提案をしたことは後悔していません!
紙コップ
ウォーターサーバーと同時に提供した紙コップは「ADCUP」さんで制作しました。選定理由は、納期が短い、そして全面に4色フルカラー印刷が可能だったからです。
こちらもテンプレを用いて実際に印刷&組み立てて、デザインの方向性や要素のサイズ感が問題ないか確認をしました。
ちなみに、私のミスで意図しない色味で出来上がりました😭。何故ミスっていたかというと、カラー値が変わってることにモニター上では気づかずに入稿していたからです。
また、会社のプリンターで入稿直前まで試作品を作っていましたが、インクや紙の違いなのかそちらでは理想に近い色が出ており、尚の事気づけませんでした。
どうしたら防げていたか?だと、サンプル品の色校正、イラレスウォッチ作成、または入稿直前にカラー値まで再確認する、のどれかです。
大体の場合、予算や納期の都合でサンプル品をかならず作れる訳ではないので、今回の失敗からはスウォッチを整理して使うのと、紙物のレビューフローにカラー値の確認も盛り込む事としました。
孤独のCTOグルメ類
それぞれのカンファレンスを盛り上げるためのコンテンツとして始まった、「孤独のCTOグルメ」も沖縄で最終回を迎えました。どんなものを作ったのかざっと説明します。
KV作成編
初手にプレ施策担当のサーバサイドエンジニアhitoteaと最終的なイメージをすり合わせた後、彼が備品を用意し、事前に大量に写真撮影をしてくれました。そのデータを共有してもらい、Photoshopで仕上げました。
SNS投稿素材作成編
「孤独のCTOグルメ」では、カンファレンス会場周辺のグルメ情報を紹介するために、本番の1ヶ月前に撮影を済ませて素材を提供していました。
しかし、そう簡単に沖縄に複数回は行けないため、CTOのyutaさんと、カメラ担当のhiroteaが本番二日前に現地入りして撮影を行うことになりました。
撮影中はリアルタイムで写真を共有してもらい、Slackを通じて「こういう角度が良い」「この写り込みはいらないかも」といった調整を行いました。最終的にSNS投稿で使用する写真の選別やレタッチは、13日の夜にMeetで画面共有をしながら調整して最終FIXさせました。
孤独のCTOグルメ仕様の紙ナプキンホルダー編
当初は、プラスチックホルダーだけに装飾をする想定でしたが、
どうしても要素が小さくなってしまうので、想定から飛び越えてホルダー全体を覆う紙スタンドを試作しました。
これは目立っていいぞ!と感じ、この方向性でyukiさんにもデザインを微調整していただき、厚めの光沢用紙に本番に近いデザインを印刷、実際に組み立てて強度などを確認しました。
最終調整後に合計6個全てyukiさんが手作りしてくれました。手間と愛情を込めたオリジナル紙スタンドは会場でも度々写真に撮られていたので嬉しかったです。
スカーフ
B/43オリジナルスカーフの制作会社は「オリジナルスカーフ.com」さんです。選定理由としては、1枚から制作可能かつ、納期も10枚以内で5〜7営業日程度と短かったからです。
制作背景として、弊社はイベントやカンファレンスで白いワークシャツを着用しますが、それにもうワンポイント弊社のサービスらしさを取り入れるため、少量で実験的に作成しました。
データはイラレで以下のように作成しました。今後もデザイナーイベントなどで着用していきます!
エプロン / サコッシュ
こちらも少量かつ実験的に作成しました。
エプロンはドリンクカウンターで利用するために少量用意し、サコッシュはカンファレンス会場で社員が移動する際に便利かどうかを試すために作成しました。
そして、エプロンもサコッシュも「オリジナルプリント.jp」さんで作成しました。以前から度々利用しており、利用しやすいことと、商品数が豊富なため、実験的に作りたい物もここで選ぶことにしました。
パネル類
言わずもなが、パネル制作は「グラフィック印刷」さんで行いました。
デザインの仮組みはFigmaで行い、抜け漏れや英語に違和感がないかなど関係者にレビューしてもらい、後に入稿用のデータはイラレで作成しました。
そして、A4以下のパネルはダイソーの貼りパネルでお手製です。
理由は、安価で済ませるためと、大きいパネルの優先度を高めてグラフィック印刷さんで入稿し、納品を待つ間にA4以下のパネルに時間を割くという時間の使い方をしたかったからです。サイズが小さいパネルでギリギリまでデザインを粘りたい場合におすすめです!
最後に全体を通して意識したポイント
いかがでしたでしょうか?
今回のカンファレンスが最大級ということもあり、一挙大公開の結果、非常にボリュームのある内容となってしまいました。
そこで、今回のRubyKaigiで私がコミュニケーションデザイナーとして大事にしていたことを3点改めてお伝えして終わりたいと思います。
①早く動く、そして得意なことに時間を使う
今回が3回目のスポンサーということで、ようやくコツを掴んできましたが、1、2回目では動き出しが遅く、予算は足りていたものの納期の都合で作れなかったノベルティがいくつかありました。その経験から、制作に関わるものは自主的に早く動き、初動メンバーを巻き込むようにしていました。
また、何でも自分でやるのではなく、人の手を借りることも重要だと感じました。今回は、予算管理や交渉は得意なメンバーに任せ、業者や制作会社とのやり取りが長期化しそうな場合も担当を変わってもらうことで、私は他の制作物の試作や検証に集中できました。このように、適材適所で役割を分担し、効率的に進めることができると実感しました。
②試しに作る、そして考える
何事も試しに作ってみないと、当初のイメージや想定通りにはならないことがほとんどです。今回のようなオフライン施策では、とりあえず試作品を作り、そこから「さらにどうなったらより良くなるかを考える」ことを大切にしていました。
また、関係者にサイズ感やデザインの確認をスピーディーに行うためにも、お手製の試作品はとても有効でした。紙物はこういった検証が必要になることが多く、失敗も含めて自分の成長につながっていると実感できます。
③エンジニアが主役であるということを忘れない
デザイナーとして初期から準備に深く関わっていましたが、RubyKaigi 2024の主役はエンジニアであり、あくまでデザイナーの私は黒子に徹する事を大事にしていました。
エンジニアさんにもドリンクシフトは組んでいましたが、優先度は低く、基本的には他の参加者との交流や講演聴講に時間を費やしてもらうようにしていました。そのため、当日ドリンクオペレーションはnyanco、yuki、そして私mmitoがメインで担当しました。
また、ドリンク体験設計編でもお話した通り、エンジニアさんからドリンク提供マニュアル作成など自主的に動いていただけてとても嬉しかったです!
とはいえ、作り込むとかなり負担になると思ったため、ざっくりと作っていたいた時点で、あとは現地で実演して確認しましょうという声掛けなどをし、負担を減らせるようにしました。
それもあって当日は、オペレーションに必要な情報を養生テープにメモしてカウンターの見える位置に貼ったり、お願いしたいことは積極的に声をかけるなどの工夫をしながらドリンクのオペレーションを回すようにしていました。
もちろん、他にもさまざまな考え方や動き方があると思いますが、私個人が大切にしているポイントやアプローチなどを最後にご紹介しました。
以上で、RubyKaigi 2024でのコミュニケーションデザイナーとしての取り組みをご紹介しました。少しでも参考になれば幸いです。
読んでいただき、ありがとうございました!
お約束
そして、お約束タイムです。
弊社のコミュニケーションデザイナー業務としては、サービスや人の魅力を届けるため、バナーやLPの制作のみならず、オフラインイベントのノベルティ、ブース設計などさまざまなデザイン業務に携わります。
もし興味が湧いた、話だけでも聞きたいなどありましたら、気軽にカジュアル面談をしましょう!