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Seestarで薄暮時の彗星を導入する方法

Seestarは自動導入に際してPlateSolveによる補正動作を繰り返します。PlateSolveが正しく動作するためには、いくつか(最低10個程度)の星が写野に写る必要があります。日没直後はそこまで星が見えることはないので、この時間帯の自動導入はほぼまりがいなく失敗します。
こんな時でもSeestarの写野内に対象を収める方法の紹介します。
この方法が唯一のものではないとも思われますが、ぜひご参考ください


1. 太陽を導入する

太陽の導入にはPlateSolveを使わない

Seestarが日中、明るいうちに自動導入ができる天体は太陽です。太陽の自動導入には、内臓コンパスと画面内輝度差を組み合わせて実現しています。一旦導入することでSeestarは星図内の位置と実際に写している位置を同期させることになります。
また、太陽・月の自動導入前には水平出しを要求してきます。
これにより、追尾のための補正情報が設定されています。

自動導入が失敗するなら、手動で太陽を導入することになります。失敗する原因はたいてい内臓コンパスが狂っていることによる、水平方向のずれが多く、高度が大きく違っていることは無い印象です。
手動で導入する際には、鏡筒の影が最小になるように、本体と鏡筒部の隙間から太陽が見えるように鏡筒を向け、画面内の明るさの差が見えてきたらゆっくりと動かして導入します

Tutorialより

自動導入、手動導入にかかわらず、画面内に太陽が入ったら「対象を中央にキープするボタン」をタップし、太陽を画面中央に保ち追尾させます

2.日没直前まで追尾する

太陽モードからDSOモードへの切り替え

太陽が地平線下になると追尾は停止してしまうので停止する前に
太陽モードの終了
DSOモードから「彗星」セクションを選択
導入可能な彗星から対象を選択、GoToで自動導入

自動導入に必要な座標情報と追尾のための補正情報はすでにそろっているのでSeestarは彗星の方向を向きます

この時間帯では背景はまだまだ明るいため星も彗星も何も映りません
撮影とPlateSolve,導入補正を繰り返しますが、必ず失敗します
プレビュー画面でも真っ白です
しかしここであきらめてはいけません

DSOモードから風景モードへの切り替え

風景モードは日中の天体以外の対象を撮影するためのモードです
このモードでのプレビューは動画モードに対応するため訳1/30秒程度の露光です。写野内に彗星があれば、ここに彗星が見えるはずです
ただし、風景モードでは日周運動の追尾は行わないので、写野内にいるはずの彗星はどんどん動いてしまいます

3.一回では成功しませんから

あきらめたらそこで終了です

日没直後はまだまだ背景は明るいので、なかなか画面では確認できません
風景モードでは彗星はすぐに画面からいなくなってしまいます
もう一度
DSOモードから「彗星」セクションを選択
導入可能な彗星から対象を選択、GoToで自動導入
DSOモードから風景モードへの切り替え
を行います
背景が暗くなるまでこれを繰り返します
SeeStarの自動導入は時間がかかりますので、その間は双眼鏡などで目視捜索しておきましょう
風景モードに切り替えてもSeeStarが向いている方向は天球の座標と一致しています。何度繰り返してもSeeStarは「正しいはず」の方向を向いています。導入が失敗するのは背景が明るくて撮影ができていないだけなのです
なので時間が経過して背景暗くなるまでこの操作を繰り返せば、いつか必ず画面内に彗星が確認できます
うっすらと、飛行機でも雲でもない光の塊が彗星です

導入精度に不安があったら

もう一度言いますが、彗星はSeeStarの写野内にいるけど見えないだけなのです。しかしこの状況を信じられない時、バグなんじゃないか、操作に間違いがあるんじゃないか、設置方法(特に水平の出し方)に問題があったんじゃないか、などと不安になります。「このまま彗星の自動導入の失敗を繰り返していて何も見えないまま地平線の向こうに沈んでしまったらどうしよう…」と思うと”失敗を繰り返す”という無駄な動作をやめたくなります。そういう時は、一番星としてわかりやすい金星やアークトゥルスなどに対して、彗星の導入と同じ手順を試してみましょう。背景が明るいので当然自動導入は失敗します。しかし、彗星に比べて光源の拡散のない金星や明るい恒星はプレビュー画面や風景画面で容易に確認できます。
写野内に金星やアークトゥルスなどの輝点が確認できれば、彗星の導入に充分なだけの導入精度があると信じていいでしょう。
空が暗くなってきたら写野内に確認できることを信じて導入操作を繰り返しましょう。

4.導入に成功したら

撮影・記録する

SeeStarでの導入に成功したら、これを記録しましょう
風景モードでは写真と動画、タイムラプス撮影が可能です
薄暮時の彗星は写真か動画で撮影しておきましょう

暗くなったらDSOモードのプレビュー画面でも確認できるようになります
DSOモードでのライブスタック撮影はまだまだできません
どちらのモードでもスクリーンショットでの記録は有効です
風景モードでの動画の保存先はSeeStar本体です。フォルダーは特別に分けられていませんので、可能な限り早くダウンロードして対象別に分類保管しておきましょう

眼視も忘れずに

モニターに映る彗星の様子は眼視での確認の際にも参考できます。自分の目に彗星の姿を焼き付けるという意味では双眼鏡や望遠鏡で覗いて確認することは満足度やインパクトが違います。どの方向に、どんなふうに見えるのか、ディスプレイで見てから覗くことで視認しやすさも向上します。
しっかり彗星の光子を網膜に浴びせましょう

作品つくり?

風景モードで撮影した写真はJPG、動画はMP4というフォーマットになります
天体写真撮影で使うフォーマットとは異なるので工夫が必要です
RIPPなどを使ってフォーマット変換を行ってからの画像処理など工夫をしてください
SeeStarでの彗星接近の写真作品はまだまだ事例が少ないです。ぜひトライしてみてください

5.まとめ

薄暮時の彗星は雲の状況、空気の澄み具合などで見え具合が変わります
よりしっかりした姿を見たい、写真に収めたい、という場合はより条件のいい場所に遠征をするでしょう。その時の機材はSeeStarである必要はありません。遠征する苦労に見合う画像を求めてしまうと、SeeStarより大口径のレンズや反射鏡、大きなセンサーを持つカメラを使うことになります。
SeeStarは遠征や大きな機材での撮影ではなく、お手軽にお気楽に使うことができます。その手軽さを生かして使いこなすことで星空の楽しみ方が大きく広がるスマート天体望遠鏡です。
この記事を参考にして薄暮時の彗星をSeeStarで楽しんでいただければ嬉しいです。


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