Amazonにおける受注生産商品のキャンセル問題について 概要と考察
概要
とある大手VTuber(A)さんの受注生産フィギュアが、発売日の2024年1月末から2月上旬にキャンセル扱いになったことから、X(旧Twitter)で大きな話題となっている。追加注文も設けられ、その受注締切は2023/7/31であった。発売日までは最短でも6ヶ月である(私は7月に注文。初期注文は3月頃で5月まで受け付けていた)。なお、同じ事務所のVTuber(S)さんの水着のフィギュアでも同様の事態でAmazonでキャンセル扱いにされたようで、当事者ではないので詳細は分かりませんが、Sさんが配信で話をされていました。私はAさんのフィギュアで今回の問題に巻き込まれてしまいましたので、それについてのみ長文になりますが記録としてここに残しておきます。
発売日を過ぎても未発送とのポストが…
XでAmazonで注文したAさんのフィギュアが「ステータスが発送にならない」とのポストが散見されるようになったのが発売日翌日の2024/1/30ころ。ただし、これよりも前にもあったようだが、あくまで、私が見た記憶では30日の夜頃。開封の喜びが写真と共にポストされる一方で、「発送されていない」と不安になるポストが散見されたので記憶している。
私の注文も…未発送 Amazonへの問い合わせ(1)
私の注文も未発送だったと気づいたため、Amazonの問い合わせページから電話で問い合わせをした。以下は、その要約である。なお、それぞれ約1時間以上は時間を要している。
電話での質問・要請・回答の要約
2024/2/2 午前0時頃 状況確認のためサポセン電話(回答者A)
質問:「まだ出荷されていないがいつ出荷されるのか」
回答:「倉庫に在庫がない状態。商品が入荷次第発送するので待って欲しい」「倉庫は努力するが、入荷が不可能な場合はキャンセルになる」
要請:「勝手にキャンセルをしないように」「受注生産商品に関して納入数が不足というのは理論上あり得ない」「努力するという言葉には「努力しても無理でした」という意味を含意している。それで納得できるものではない。」「入荷予定を知りたいので倉庫の状況がわかる人からの連絡が欲しい」
回答「倉庫担当者からの連絡はできない」
あまりに話にならないのでここで終了
2024/2/2 お昼頃
公式からAmazon発注数について納入済みアナウンスあと(回答者B, C)
質問:「メーカー公式からAmazon発注数の全てを納入とアナウンスがあったが、まだ入庫していないのか」
回答B:「現在、倉庫には在庫がない。商品が入荷次第発送するので待って欲しい」「倉庫は努力するが、入荷が不可能な場合はキャンセルになる」とテンプレ回答。
質問:「入荷の見込みを知りたい。何が起きているのか説明が欲しい。」
回答B:「説明できる担当者に代わる」
質問:「入荷の見込みを知りたい。何が起きているのか説明が欲しい。」
回答C:「入荷するかどうかも不明。公式の発表については関知していない。」
質問:「受注生産商品であり、公式が受注数をAmazonに納品したと説明している以上、発注ミスなのではないか。それはそちらの責任なので、こちらには関係のない話である。メーカーに依頼して生産を要請し、多少日時を要しても納品することを要請する。」
回答C:「それは約束できない。入荷があれば発送する…待て(以下、テンプレ繰り返し)」
回答C:「商品ページに受注数より納品数が少ない場合はキャンセルと書いてある。」
質問:「受注生産と公式が説明していて、Amazonも公式に記載されている販売店となっている。それで、納品数が少ないということはあり得ない。責任を持って納品することを要請する。」
回答C:「建設的なお話ができないので、電話を切ります。」
2/2 午後2時頃
Amazonから電話を切られてすぐに消費者センターへ連絡し、状況をすべて説明・相談。国民生活相談センターにも同様に説明(ただし、対応は各地の消費者センターでお願いとのこと)。特に確認したことは「受注生産商品」とメーカーで表記された商品の受注をAmazonが公式販売店舗として受注している場合、数量限定商品や抽選商品ではないことから、消費者としては当然、Amazonに注文した商品は納品されると理解することは正しいかということ。これについては「そう理解できる」と回答を得ている。
2/2 午後3時頃
消費者センター担当者からAmazonへ連絡後に私へ電話連絡
担当者「Amazonで商品の状況を確認するので、注文番号を教えて欲しいとのこと。」
私「番号は…です」
しばらくして再度センター担当者から私へ電話連絡
担当者「番号だけでは回答できないので、本人からAmazonへ問い合わせて欲しいとのこと。消費者センターから問い合わせている件なので、窓口担当者は在庫状況のわかる者が担当しますと回答を得ています。」
私「では仕事が終わり次第、再度Amazonへ連絡します」
2/2 午後6時00分ころ
消費者センターのアドバイス通りにサポセンへ(回答者D)
要請「消費者センターから問い合わせている件です。担当者をお願いします。」
回答「担当者に代わる」
回答D:「状況は理解した。受注生産で在庫がないということは申し訳ない。まずは金曜夕刻なので素早く在庫状況を確認できるように、担当部署へ要請を出す。3営業日以内にメールで連絡する。」
要請「これまでの担当者(A―C)とあなたは何か役割が異なるのか。これまでの担当者からはそのような話は一切なかった。」
回答D:「システムの詳細は言えないが、見ている画面が異なる。」
要請:「注文のキャンセルをしないように。責任を持って納品すること、また早急な連絡を要請する。」
回答D:「承知した。」
ついに私の未発送もキャンセルに…Amazonへの問い合わせ(2)
2/6 14:00ころ
キャンセルのメール確認 仕事の都合で電話は17:00(回答者E)
要請「勝手にキャンセルされている。また、約束した連絡もない。消費者センターとの約束も反故にされている。記録は残っているはずなので、担当者に繋ぐよう要請する。」
回答:「担当者に代わる」
回答E:「入荷の見込みがない商品について自動でキャンセル処理になっている。」
要請:「約束した連絡もなく、またキャンセルしないよう要請したにも関わらずキャンセルされている。どういう経緯か説明を要請する。」
回答E:「見込み数を上回る注文だったため、必要数が納品されなかった。連絡をしていない点については今確認する。」
回答E:「専門部署からの連絡はまだ行われていなかった。」
要請:「そもそも必要数の納品がないのは何故か。」
回答E:「メーカーの生産能力などの問題もあって…」
指摘:「メーカーはAmazonからの発注数全てを納品したと説明している。矛盾している。」
回答E:「見込み数を上回ったため…」
要請:「Amazonでは受注生産商品であっても見込み数で発注していることになる。それがこの状況となっている。受注生産商品の注文を受けた以上、その責任としてメーカーに生産要請をして、納品することを要請する。」
回答E:「商品ページには受注数が納品数を上回った場合にはキャンセルと記載されており、要請されるような対応は現在のところできない。キャンセルを復活させることもできない。」
指摘:「受注生産商品を一般商品と同様にキャンセル規約を適用することはおかしい。」
回答E:「Amazonを利用するお客様には、Amazonの規約に納得してもらうしかない。」
これを数回繰り返すも、
回答E:「これ以上、私から説明できることはない。また入庫することもないと判断してキャンセルしたので、電話を切らせてもらう。」
以上概要のみ。
会話中には回答者からは「申し訳ございません」「ご迷惑をおかけします」という謝罪の言葉はあった。
なぜ受注生産商品のキャンセルが起きた?
都合、私からは4回、消費者センターから2回の問い合わせを行なっても、Amazonからは十分な回答は得られず、もちろん、商品も入手できませんでした。ただし、回答Eにあるように「見込み数を上回った」とあるように、その要因の一端は理解できますので、以下で整理しておきます。
結論から言えば、Amazonでは受注数そのままをメーカーには発注していないようです。
Amazonカスタマーサービスから私への説明では、「受注数より少ない入庫となったため、倉庫には商品がありません。商品を確保できない場合にはキャンセルさせていただきます。」と何度もテンプレートどおりに電話で説明しています。受注生産、受注期間後には予約キャンセル不可としておきながらのこの対応です。Amazonでは販売ページの注記に「Amazon.co.jpが発送する商品につきましては、商品の入荷数に限りがある場合がございます。(中略)やむを得ずキャンセルさせていただくことがあります。」と記載されており、これを根拠にカスタマーサービスはキャンセルの正当性を訴えてきました。ただし、今回の商品は受注生産商品ですので、この説明では不足することとの整合性がとれません。
メーカーが公式HPで発注数に対してすべて納品していると発表しており、ほかの販売チャネルでは起きていない問題ですので、回答Eの発言に「見込み数よりも」とありますとおり、見込み発注であることが看取されます。Amazonは受注生産品であっても、過去の販売実績に基づく見込み数量発注という方法をとっていると考えて間違いありません。ただし、受注生産商品ではない、一般的な商品の新発売時には予約見込み数に基づきメーカーへ発注をするというのはAmazonに限らず卸・小売業では特別なことではありません。
ここからは推察になりますが、配信でAさんが言っていた「システムの都合」とは、Amazonがこの予約見込み数に基づき発注するシステムを受注生産商品にも使っているということなのではないでしょうか。Amazonの取り扱い商品数の多さから、今回だけでなくこれまでのトラブルを踏まえても受注生産商品の予約管理のためのシステムを組んではいないのでしょう。これに対して、この手の受注生産商品の取り扱いを熟知しているアニプレックスさんやあみあみさんなどは受注数量確定後にメーカーに発注しているものと思われます。今回に限らず、「Konozama」という言葉がネットで当たり前のように見受けられるほど、このようなキャンセル問題を起こしています。Amazonでのみ受注生産商品のキャンセルが頻発する原因がこれであるとすれば、これまでのキャンセル騒動も理解できます。また今後、仮に改善されるにしてもシステム変更には費用も時間も掛かりますので、メーカー直販サイトや専門店で予約するのが安全です。
まずは消費者センターへ連絡を
Amazonからどのような説明を受けようとも、今回の発生原因についての説明も、ましてや商品納品の確約などまず期待できないと言って良いでしょう。個人でなんとかできるような会社ではありません。回答Eにありますとおり、規約を盾に「納得できなくても、規約に従って対応している」とのことです。ただし…そのまま泣き寝入りというのもどうかと思います。
きちんとした行政的な手続きを経て、その怒りや不安をAmazonにぶつけて欲しいと思います。今回巻き込まれた方は、ぜひ、お住まいの地域の消費者センターへ連絡してください。その際、受注生産商品の予約で、予約締切日から最低でも6ヶ月を経過してからの発売であること、また、メーカーが公式HPで受注数量をすべて納品していることを公表していることも伝えてください。私もすでに消費者センターへ報告してあります。その理由は以下の2つです。
1) 公的機関であること
各地の消費者センターは各地方公共団体が設立しており、独立行政法人国民生活センターと連携関係にあります。したがって、相談があった場合にはすべてが記録され、相談内容は国民生活センターへ報告されます。この報告数が多い事業者については、国民生活センターから事業者への要望が行われるほか、消費者庁にも報告され、そこから事業者へ勧告・命令・立入等が行われる仕組みとなっています。少なくとも、今回の受注生産商品の販売方法は、一般的な商品とは異なり、受注を約束する性格の商品となりますので、それを履行できないまま受注を続けるAmazonに対して何らかの行政からの対応が必要となります。数が少なければこのような行政の仕組みも動きませんので、まずは消費者センターへ相談してください。相談料は無料です。
2) 「公的な立場」からAmazonへ問い合わせをしてくれます
前段で記載したように、消費者センターは「公的な立場」でありますので、一般消費者が問い合わせるよりも、より詳細な回答をAmazonから得てもらえます。もちろん、商品納入を約束しては貰えませんが、状況を「公的」に記録してもらえますので、カスタマーサービスがその場限りの言い逃れをした場合には有効な証拠となるため、適当な回答にはならない傾向があります。なお、損害賠償請求などは法曹の範疇なので、こちらは対応してもらえません。消費者として問い合わせてもテンプレートの回答ばかりで埒が開かないことは、Amazonのカスタマーサービスのレベルを知っていれば自明のことです。
フィギュアは手に入らないのか…
現状では、VTuber Aさんの配信にありましたとおり、希望はあるようです。ただ、お店への問い合わせもやめてほしいとの話もありました。メーカーが公式で「Amazonから注文を受けた数量は納品した」と表明するほどの問い合わせがあったのですから。それがお店にまで問い合わせがあると…と考えれば納得です。
また、一部の通販の可能性についてもAさんの配信で話がありました。ただ、Amazonがその対象となるかは不明です(仮に再販の通販対応があったとしても、これだけのトラブルを抱えたシステムを運用しているAmazonを再度、流通業者としてまた指定すれば同じトラブルの繰り返しの可能性もありますし、Amazonでの「システム上の都合」のために新たな業務が発生するにも関わらず、その当事者が利益を得るというのも仕事をしている人間からすれば腑に落ちないわけです(もちろん、仕事上の不条理はつきもの)。ただ、Aさんが「どうしても(Amazonでの)今の注文(残)には対応できないみたい」と言っていた理由がここにありそうな気がします。
いずれにしても、まずはAmazonへの「不満」(あえてこのように記載します)を行政的手続きを経て訴えましょう。これが第一歩です。でも、それだけではフィギュアは手に入りません。
次に、メーカーであるクレーネルのサイトのフォームから、「再販予約を希望している」ことを伝えましょう。今回、VTuber Aさん、デザインを監修したOさん、そして版権を持っている事務所さん、製造するクレーネルさんも、そして何よりもフィギュアを注文していたファンも、誰一人として幸せになっていません。これまでもAmazonによる予約注文商品のキャンセルではメーカーさんがファンの声に応えて再販してくれるケースがありました。しかもAさんも事務所を通じてメーカーさんへ伝えていると配信されています。私たちも需要が確実に存在することを証明するためにも、Amazonへの不満だけ募らせ泣き寝入りするのではなく、前向きな動きができればと思います。
長文で読みづらい点もあるかと思います。
また、同じような被害に合わないよう、Amazonの利用方法については皆さん自身で考えてください。私は…Amazonから卒業しますかね。