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ザノンフィクション 元受刑者を支援するプロジェクトに関して
刑務所の役割は再犯防止にあるはずだ。しかし、それは社会側の受け入れ制度が整ってこそ生きるのではないだろうか。
現状その体制が塀の外に確立されているかというとまだまだ遠い道のりだ。
確かに、元受刑者を雇う企業はほんの少数であるし、ましてそれを公言している会社など例外的だ。
その例外が北海道にある北洋建設だ。社長の小沢は先代からの理念でもある「出所してくる人の居場所を作ってあげたい」を体現すべく邁進しているが、難病を発症し日常生活も介護なしではままならいほど身体が衰弱している。かつ医者からも余命3年という宣告を受けている。
そのような状態でありながら日々の業務と同じように受刑者の支援活動も行っている。受刑者の入社希望の手紙にも逐一返信し、面談のために刑務所まで足を運ぶ。
番組では2人の元受刑者を中心に進行されていく。
その内の一人の窃盗の罪で3度の服役をした仮釈放中の50代の新入社員を取り上げたい。
手紙で入社を切望し社長に身元引き受け人になってもらい、当初こそ更生を誓ったものの日がたつにつれてその決意は尻すぼみになり不平をこぼし始める。
原因は2つ考えられる。本人曰く満期で出所して生活保護を受けるつもりだったというのだ。仕事を続けるうちにその断ち切れなかった未練が自分を支配するようになったのではないか。
もう一つは本人にアル中の気があるということだ。しかし、会社からは禁酒を命ぜられており、一日毎に支給される給料は食費程度にすぎず仕事のストレスの捌け口もない。
そんな中で社員寮の同居者は本人の目の前で遠慮無く缶ビールを美味しそうに飲む。
結果的に、この50代の新入社員は突如として行方をくらますことになる。
しかし、本人の意志の弱さだけが原因だと言いきれるだろうか。
これに関しては会社側の課題が浮き彫りになったと考える。医学的な見地からの支援のあり方も問われていいように思う。
気になったのはこれを受けての社長以外の態度だ。社長の側近の秘書、この方も元受刑者ということだが、次のようにいい放つ。
「住むところ、仕事がないから雇ってやった」
同床異夢という言葉があるが、社長の理念と相容れないと思う。自分が更生できたという優越感があるのかもしれないが、そもそもただ飯を食べているわけではなく労働を提供しているのだから、対等の立場であるはずだ。
この一年で23人退職しているというが、その意識の食い違いが遠因になってるようにも感じた。
とは言うものの、会社の懇親会には元受刑者として北洋建設で働き独立できた人間も集まる。理念が形になっていることが確かだ。
そして賛同する会社もあらわれ社長の念願であった「職親プロジェクト」が立ち上げられた。
「反省は一人で出来るけれど更生は一人でできない」との言葉が紹介されるが、それは更生を支援する側にも当てはまるのではないだろうか。
そのような意味で職親プロジェクトは大きな力となるはずだ。
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