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アア、大文字山、キミなしの人生なんて 【0円生活10日目】

"Wednesday"
(退屈そうに。死んだ魚の目をして)

(朝のおにぎり屋さんにて。二階でおにぎりに海苔をつけ袋に包む作業をするモモコとパートさん)
モモコとそのパートさんの会話はおにぎりを包む手を休めることなく、さまざまなトピックを横断した。モモコの仕事の経歴について、焼きたらこおにぎりは開きやすいので海苔付けが難しいことについて、そのパートさんの娘さん(も、モモコという名前であった!)のお仕事体験について、ここのおにぎり屋さんの鮭はフレークじゃなくて特別美味しいことについて。
パートさんがふと、
「仕事は楽しいし好きなんですけどね、なんせ本当に忙しくて。学食なんて、猫の手も借りたいくらいですよ」
と言った。モモコはそれを聞いて、猫の手?いやいや、そこは〇円女の手も借りたいでしょう、と心の中でシニカルな笑みを浮かべながら呟いた。

(家に帰り、もらってきたお弁当を食べるモモコ)
(おにぎり屋さんの制服からいつもの格好になり、家を出かけるモモコ)

大文字山に、昨日に引き続き今日も登ることにした。

登山靴はおろか普通のスニーカーも持っていなかったため、モモコはこの靴で登った。
影の中を進み、光の中を進んだ。
からだの周りの空気全体を、呼気と吸気が満たしていた。
町は、ずっと遠くのようでずっと近くのようで。
ススキの野のなかを歩いていると道に迷い、そのまま黄泉の国に行ってしまいそうだ。

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