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『星の王子さま』の世界に浸る日々。
バラ園を歩いていて、’サン=テグジュペリ’という名前のバラに出会った。子どもの頃に読んだ『星の王子さま』の作者に突然出くわしたような気がして、ちょっと胸が高鳴った。自宅の本棚に、子ども用の世界文学全集などの本が毎月届き、その中に『星の王子さま』があった。海と山に囲まれた伊豆の植物園の敷地内に家があり、毎日海岸や山を駆け巡っているような子ども時代だったが、雨の日は本を手に取ることもあり、『星の王子さま』は何度か繰り返し読んだ記憶がある。
バラの名前に関する物語をWeb マガジンに連載しているので、バラとサン=テグジュペリのことを書いてみようと、『星の王子さま』をあらためて読んでみた。が、これがなかなか手ごわい。子どもの頃、本の内容を理解していたとは思えないが、「おとなは、だれも、はじめは子どもだった。(しかし、そのことを忘れずにいるおとなは、いくらもいない)」(岩波書店刊、堀口大學訳)という献辞に添えられた文章が当時、心に響いたのだろう。単純に作者が描いたイラストとともに物語を楽しんでいた。
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