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シャンソン歌手、バルバラの人生を辿る

ここしばらく、フランスのシャンソン歌手バルバラの曲を聴き、自伝を読みふけっている。例によってWebマガジン連載の「バラの名前・出会いの物語」の原稿を書くためで、バラには彼女に捧げられた’オマージュ・ア・バルバラ’がある。

遺書ともいうべき未完の回想録を読んでいて、忘れていた出来事を思い出した。彼女が自作した歌に「リラの花咲く時」というのがあり、かなり以前にパリのシャンソン・バーでその曲を聴いたことがあったのだ。バルバラ本人の歌ではなく、当時撮影していた日本人シャンソン歌手の舞台だった。失った恋の哀しみを切々と歌う、その曲。歌詞は悲惨だが、曲調はどこか明るい。

自伝を読んで、その理由が分かった。熱烈な恋をしていたが、相手からピアノを弾くことも、歌うことも止められた。その結果、彼女は歌うことを選んだ。その時の心情を次のように語っている。「わたしはHを失うことを受け入れ、高々と、わたし自身の帆を上げた。わたしは『歌う女』の人生という、美しいものに向かって進みはじめた。」(『バルバラ 一台の黒いピアノ...』緑風出版刊、小沢君江訳)その決意が、胸を打つ曲となったのだ。

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