薬の富山300年の歴史を体感 金岡邸ミニツアー②
「くすりの富山」の象徴的な存在である、薬種商の館金岡邸。
①に引き続き、江戸時代からの歴史を紐解く展示をレポートします。
◾️置き薬のはじまり
金岡邸の母屋の奥に進むと、突如江戸時代再現コーナーが現れます。
これは、富山の薬を世に知らしめた「反魂丹(はんごんたん)」のエピソードの一場面です。
かくして富山の売薬さんは、全国を巡って置き薬を売り歩くようになったというわけです。
◾️先用後利(せんようこうり)というシステム
富山の配置薬の仕組みを表す言葉に「先用後利」があります。
「先に商品を使わせ、後で使った分だけ代金を受け取る」という意味で、江戸時代に始まった一種のクレジット商法のことなんです。
先に得意先に薬箱を渡しておいて、使った分だけ代金を精算し、薬を補充する置き薬の仕組みは、現金収入や医療機関の少ない時代に大変有効でした。
信頼関係を大切にするこの仕組みは、富山売薬の発展に大きく寄与しました。
この配置薬の仕組み、実は現在も活かされているんです。
これまでモンゴルやミャンマー、アフリカなどの医療機関の少ない地域で、この仕組みを普及させる取り組みが行われてきました。
実は私は以前、このJICAの草の根技術協力事業に国際調整員として関わっていた時期があります。その際にミャンマー保健省の皆さんと一緒にこの金岡邸を見学したことが印象に残っています。
◾️薬業が支えた富山の近代化
薬業で栄えた薬種業者たちは、金融や繊維、鉄道、電力など多くの産業に資産を投じ、富山の近代化に大きく貢献しました。
この金岡邸を築いた金岡家も富山県の経済界に大きな業績を残しています。
(電気事業や鉄道、銀行や製薬会社の設立、富山女子短期大学、富山国際大学などの教育機関の創立など)
全国屈指のIT企業インテックも金岡家の系列ですよね。金岡家の影響力の大きさに改めてびっくりします。
◾️くすりの富山の現在
現在も富山県は国内有数の医薬品生産拠点として知られ、メーカー約80社と100を超える製造所があるそうです。
◾️伝統的木造家屋の美
さて、ここからは金岡邸の建築物としての美しさに注目していきましょう。
前編でご紹介した薬種商の店舗部分は明治時代の建物でしたが、その奥には大正時代に建てられた「新屋(あらや)」があります。
新屋は迎賓の場として建てられた総檜造りの建物で、座敷は天井の一部を高く仕上げた折上げ格天井(おりあげごうてんじょう)となっています。
洋風のシャンデリアも当時のままなのだとか。
日本の伝統的な建築と、大正時代のモダンなデザインが見事に融合していますね。
母屋の薬種商店舗側からは想像できなかったほど、奥には緑豊かで静かな空間が広がっていました。
新屋は現在、コンサートや現代アートの展示など、文化的な催事に利用されています。イベント情報をぜひチェックしてみてください。
最後に
富山市は昭和20年の富山大空襲で市街地のおよそ99.5%を焼失していて、歴史的な建築物も数多く失われました。戦前は富山市内に30軒ほどあったという薬種商も例外ではありませんでした。
かろうじて戦災を免れた金岡邸は、そういった意味でも大変貴重な存在です。
富山の薬の歴史を体感するもよし、伝統的な建築を堪能するもよし。
300年の歴史を体感できるミニトリップ、ぜひ体験してみてください。
Info
富山県民会館分館 薬種商の館金岡邸
住所:富山県富山市新庄町1丁目5番24号
見学料:200円
電話:076-433-1684
開館時間:9:30〜17:00
休館時間:毎週火曜日及び年末年始 12/29〜1/3
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