テーマ「顕微授精(精子を捕まえる)」
こんにちは。
みなとみらい夢クリニック 培養室です^^。
今回は「顕微授精(精子を捕まえる)」についてです。
体外受精の流れで見ると以下黄色の部分です。
体外受精に進むと、
「通常の体外受精(精子を振りかける方法)」と
「顕微授精」」の2種類があります。
この2つ違いは何だろう??と思われた方は過去の記事をご覧ください。
テーマ:体外受精(通常の体外受精+顕微授精の解説)
「通常の体外受精(精子を振りかける方法)」について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
テーマ:通常の体外受精(精子を振りかける方法)
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■顕微授精
顕微授精はホールディングと言われる専用のガラス管で卵子を固定し、
インジェクションと言われる専用のガラス管で精子を1つ捕まえて
卵子の細胞質に直接注入する方法です。
《イメージ図》
■顕微授精の工程
顕微授精の工程は
大きく分けて2つの工程があります。
① 精子を捕まえる
② 精子を卵子に入れる
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今回はまず「① 精子を捕まえる」についてお話したいと思います。
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■精子を捕まえる過程
精子を捕まえる過程をさらに細かく分けると
4stepほどあります。
Step1 動いている精子の状態を把握
Step2 1つの精子を選び、動きを止める
Step3 精子の状態をじっくり確認する
Step4 インジェクションに精子を吸引する
では一つずつ詳しく見ていきましょう!
Step1 動いている精子の状態を把握
顕微授精に使う精子は、
精子精製処理(精子調整)を行ったあとの精子になります。
精子調整については過去の記事をご覧ください。
テーマ「精製」
精子調整後は元気な精子だけが集まっていますので、
基本的に動きがすばやく捕まえることが大変です。
そこで少し粘性のある培養液に精子をいれ、
精子の動きを少し遅くします。
(遅くなるのはほんっっっっっっっの少しなんですけどね・・・^^;)
その状態で倒立顕微鏡を使用して観察し、
まずはその精子の特徴をざっくり確認します。
Step2 1つの精子を選び、動きを止める
ざっくりと全体を確認したら、
今度はその中でより良い精子を選んでいきます。
精子は遺伝情報が詰まっている頭部があり、
運動するためのエネルギーが蓄えられている中片部、
運動するために実際に動いている尾部から構成されています。
(本やサイトによっては、簡略的に頭部と尾部だけで表すこともありますし、もっと細かく区切って書いてある場合もあります。)
そのなかで
・ 頭部の形や大きさ
・ 尾部の形や動き
・ 精子の成熟(未成熟だと中片部にふわふわした細胞が付着しています)
に注意し、
これだ!!と思った精子を探していきます。
写真は顕微鏡下で見える精子とインジェクションです。
顕微鏡をのぞいた時の視野の奥側から手前に泳いでくる精子に対して垂直になるようにインジェクションを下ろして止めます。
尾部を抑えられたことにより精子は動くことができなくなります。
これを精子の不動化といいます。
※精子の尾部は卵子まで進んでいくために必要な部分です。
顕微授精の場合は卵子まで自ら進む必要がないので
精子の運動性がなくなっても受精やその後の発生には影響ありません。
尾部のなかでも不動化する位置は決められており
全長約50μmほどの精子のなかで前過ぎても後ろ過ぎても良くないため
私たちは尾部の中心よりやや頭部よりの位置を狙い不動化を行っていきます。
動いている精子を不動化するのは練習必至の難しい技術です・・・!
そしてここまで早く動く精子を捕まえるクリニックは珍しいようです。
ここも当院の特徴の一つかと思います。
技術が必要ではありますが、
精子の動き方もチェックしたうえで1つを選び出せる部分は
当院の特徴であると言えます。
Step3 精子の状態をじっくり確認する
精子を不動化したら
今度はより詳細に精子をチェックしていきます。
インジェクションを使用して
精子をコロコロと転がしていきます。
イメージとしては
机の上に置いた1本の糸を人差し指でやさしく転がす感じです。
抑える力が強すぎても弱すぎても転がすことはできません。
ここでも培養士の技術力が光ります★
適度な力で抑えつつ、
インジェクションを左右に動かすことで精子が転がり
ゆっくりと頭部の形をいろんな方面から観察することができます。
精子が動いている時は問題なく見えても
実際に不動化をして観察を行うと
空胞と言われる穴が頭部に開いていることが多々あります。
観察をして、ちょっと違うなと思ったら
step2に戻り別の精子を探しに戻ることもあります。
そして可能な限り運動性が良く、
頭部の形や全体の形がきれいな精子1つを選びます。
Step4 インジェクションに精子を吸引する
不動化した精子は、
インジェクションの中に吸引されます。
精子の不動化と観察を行う際に、
精子とインジェクションの位置は垂直になっているので
吸引するためにまず精子を傷つけないように
インジェクションで優しく触りながら90度回転させます。
精子の後ろにインジェクションを置いてピントを合わせます
※絵では精子の尾部は曲がっていますが、実際はもっとまっすぐです。
そのあとゆっくり精子をインジェクションの中に吸引します。
この作業もまた難しい・・・!
さて、ここまで来たら精子の準備はOKです。
次は、②どのように精子を卵子の中にいれているのか ですが
長くなってしまったため、
続きは次回に持ち越ししたいと思います。
それでは今回はこの辺で🌸
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