テーマ「凍結」
こんにちは!培養室です❁
今回は凍結についてです。
凍結には分割胚の凍結と胚盤胞の凍結の2種類があります。
分割胚と胚盤胞の凍結方法は同じです。
ただし培養液の浸透のしやすさ等から、凍結作業の時間が少しだけ違います。
では詳しく見ていきましょう。
➀ガラス化保存方法
当院ではガラス化保存法という凍結方法を行っています。
細胞を凍結した際に中の水分が凍り、氷ができてしまうと体積が増加します。
体積が増えてしまうと、細胞膜がダメージを受けてしまうことがあります。
ダメージを受けた細胞を融解すると、細胞膜から細胞の中の成分が流れ出し
細胞が変性してしまいます。(この場合の変性とは細胞が死んでしまうことを指します。)
そこで、体積が膨張しないようにそのまま凍結をする方法がガラス化保存方法です。
②実際の作業手順
まず、大きめのお皿に2種類の凍結液を3つに分注します。
aが平衡液
bとcがガラス化液 です。
(平衡液とはガラス化液が細胞に入りやすくする液です)
分割胚の場合は、aの液に10~12分ほど
胚盤胞の場合は、aの液に15分ほど浸けます。
その後b→cの順番にピペッティング(ガラス管を用いて胚を吸ったりはいたり動かすこと)しながら胚を移動し、
最後にCryo TOP(クライオトップ)と言われる凍結専用の道具の先端に胚を置きます。
拡大すると以下のように見えます。(モニター画面)
胚培養士2名でしっかり胚が載っていることを確認したら、
液体窒素に投入します。
bの液に入れてから液体窒素に投入するまでを1分半で行います。
さらに、この小さい箱では液体窒素がすぐに蒸発してなくなってしまうため、保存用の大きなタンクに移し、保存を行います。
液体窒素の中に入っている胚は半永久的に保存することができます。
これが当院の凍結の流れです。
③胚培養士目線のお話
胚の大きさは約0.1㎜です。これは1㎜の10分の1ほどであり、
肉眼では見えたとしても小さな点ほどにしか見えません。
よって胚の操作はすべて顕微鏡を覗きながら行っていきます。
顕微鏡を使うので、大きく見えますが実際胚をのせるCryoTOPの横幅は約1㎜です。
そこにガラス管を使用して0.1㎜の胚を良い位置に載せていきます。
毎回同じような所に載せないと融解した際に見つけにくくなります。
載せる時に手が震えてしまうと載せるのが難しくなります。
載せる時に時間がかかってしまうと胚がダメージを受ける可能性があるので
素早く操作をする必要があります。
うまくピペッティングをして、細胞の中にガラス化液をいれてあげないと
細胞がダメージを受ける場合があります。等々。
このようにとても繊細な操作が求められる高度な技術です。
ここでも培養の技術力が試される、胚培養士の腕の見せ所になります。
当院では訓練を積んだ胚培養士だけが凍結作業を行っていますので、
安心してお任せください^ ^
さて今回はこのあたりで。
次回は、「融解」について説明いたします。
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