コミュニティに溶け込む努力は必要か?【Ep. 3】
バス旅行の会
私たちがこのマンションを買ってから実際に住み始めるまでに、一度アメリカに帰らなければならなかった。秋から冬にかけての季節の変わり目で、行楽にもいい時期。
マンションの契約を終えた日。管理人の「川中さん(仮)」にこう言った。
「アメリカから戻ったら、よろしくお願いします」。
すると川中さんは「バス旅行の会ってのがあって来週なんですよ。参加しませんか?」といってツアーに誘ってくれた。
私たちのフライトは2日後に迫っていた。せっかくのお誘いだが実家に帰り、荷造りをして空港に向かう準備をすることにした。
機体のエンジンに不具合?
アメリカに出発の日。最寄りの駅からリムジンバスで空港へ向かう。母は、寂しそうな表情はしてたものの「あんたら、すぐかえってくるんやんな?」と強気に見送ってくれた。
飛行機に乗り込み「これからアメリカまで14時間長いな」と思っていた時にアナウンスが入る。
「当機のエンジンに不具合が確認されましたのでただいま調査中です」
『エンジンに不具合!ちょっとやばくないか』と思っていると主人が、
「降りるから」といって荷物をまとめてさっさと扉の方へ向かっていった。私も慌てて他の乗客の視線をガンガンに感じながら、乗降ドアへ。
バカでかいハンドルを開けて飛行機の大きなドアが、私たちだけのために開いたのを見たのは人生で初めて。飛行機のドア付近にいた地上スタッフがゲート外まで案内してくれた。
今となっては、どうやってイミグレーションを通ったのか、荷物は出てきたのか、何にも覚えていない。しかし地元に帰る最後のリムジンに間に合って、ドキドキしながら実家を目指した記憶がある。
「おかあさん!開けて~」
実家に到着した。両親は私たちが戻ってきたことを知る余地もない。主人がインターフォンを押し「おかあさん!あけて~」という。
中から「ええええ!だれ!えええ。●●(主人の名前)なん?」という大声が聞こえてくると同時に、母のバタバタバタという玄関に向かってくる足音が。
主人は笑いをこらえて「おかあさ~ん。あけて~」と繰り返している内に、母がカギを開けて玄関から出てくる。母は驚きと嬉しさとが入り混じった何とも言えない表情で「あんたら!どういうこと」と言うと大笑いした。
飛行機のエンジン不具合でフライトを変更したことを伝えると母は、「●●らしい(主人の名前)」と笑い、とても嬉しそうだった。
主人の狙いは「バス旅行の会」
飛行機のチケットを変更して実家について、ホット一息つくと主人がこう切り出した。「これで、バス旅行の会参加できるやんな?」。
『え?そのために飛行機おりたんか』
主人は計画してか、とっさの判断か、バス旅行の会にとっても参加したかったらしい。そこまで真剣にコミュニティに貢献しようという気がさらさらなかった私は、ある意味立派だと思った。
バス旅行の内容は次の回で。
"Excellent choice, folks!"