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せめて100年つづくブランドに。活動25周年を迎える、ミナペルホネンのものづくり

3月から家ごもりワークを実施しています。

株式会社ユニエルで広報を担当している大谷(@mm_chas)です。

家ごもりワークが始まってからまるっと1ヶ月が経ちましたが、「人に会えない」「要がないと外に出てはいけない」で若干気がめいってしまいそうになる中。

ふと、スマホのアルバムを整理しようと、以前の写真を見返すと、一際目立つ色鮮やかな写真たち。

今年の年明けに見に行ったミナペルホネンの「つづく展」で撮った写真たちでした。


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写真の中の色鮮やかな洋服やデザインの数々にとても元気をもらったので、お裾分けの気持ちでこの記事を書いてみることにしました。

会期中に、展示に足を運ばれた方は振り返りの気持ちで。

行けなかった方には、会場の雰囲気を味わってもらえたら。

そして、家ごもり時間の少しのお供になれたらいいなと思います。


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「大量生産、大量消費の時代は終わった。」
と、近頃耳にするようになったけれど、


「受注生産」や「使用する分だけ小ロットで。」というのは、
まだまだそんなに簡単にできることではない、とも感じる。

私が以前いたアパレルの業界は、特に変革期なのかなと考える。
(アパレルで働く現場でも、体感的に2015年あたりから、生産や流通の変化がみられた)

原価を顧客に開示するオンラインSPA(「Everlane(エバーレーン)」など)や、衣類のレンタルサービス(「airCloset(エアークローゼット)」など)のように、ITと顧客視点を取り込んだ、新しいビジネスモデルもどんどん生まれている。

Everlaneについては、この記事がわかりやすかったのでよかったら。


まだ利用したことはないけど、タンスを肥やしがちな私にとって頼りになりそうなサービス airClosetさん。


そんな変化の中で、「変わらないこと」に人が惹きつけられる魅力があるのも事実。

日本のファッションデザイナー 皆川明氏が、1995年に創業した「ミナペルホネン」は、設立当初から「商品は長く着て欲しい」という想いのもと、生地や糸の段階から自分たちでコントロールすることを欠かさない。

「つづく展」では、創業時の思想を継続させるための工夫や、商品が作り手から旅立った先で創り上げるストーリーにまでフォーカスするなど、洋服好きでなくとも、ものづくりをする方なら、興味深い内容だったのではと感じます。

自分たちのものづくりについて、考えるきっかけにもなったので、記録としても残しておきたく筆を進めてみることにしました。

展示会場の順を追って、記録している限りになりますが、レポートしていきたいと思います。

※写真撮影可能なエリアのみ、撮影できた写真を掲載させていただいています。


実 - tamburine -
タンバリン


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ミナペルホネンを代表する刺繍柄のtambourine(タンバリン)に焦点をあてて、一つのデザインが生まれてから、生地になり、洋服や文具雑貨、インテリアなど、様々なプロダクトに展開されていく様子が展示されていました。

tambourine(タンバリン)は25個の小さなドットが柔らか円を描く刺繍の柄。

この写真では、真ん中にある紺色のスカートに、tambourine(タンバリン)の生地が使用されています。

タンバリンの輪っか1つを刺繍するために使用されている糸の長さは、6.93m。

輪っか1つを刺繍するための時間は、9分37秒。

生地一反に並ぶ輪っかの数は、6760個…!

となると、タンバリンの生地一反を作るには、1126時間以上かかる計算…

一度に生産できる量に限りはあるけど、長く生産し続けることによって工場の生産現場を安定させることで、人々に長く愛させることに繋がっているのだそう。


実際にタンバリンは2000年〜2001年の秋冬コレクションで発表されて以降、今もなおミナを代表するテキスタイルとなっていて。

円の形状やドットの間隔は不均一で、刺繍の膨らみにも差異があり、手描きされた原画の表情が丁寧の再現されていることから、作り手を感じられるところも人を惹きつける要因なのかもしれない。


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森 - pieces of clothes -
洋服の森


ミナペルホネンでは、ファッションの流行にとらわれないものづくりをされてきています。

シーズンを超えて繰り返し愛用してもらえる服を目指し、この展示エリアでは、設立当初から2020年までの約25年分の洋服が一堂に集められていました。

展示の手法としては、このようなアーカイブ展示となると、その年ごとの商品を年別に並べられるイメージを持っていたけれど。

ここでは年代別ではなく、純粋に視覚的、造形的な観点から配置をされていました。


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最新の服も、過去の服も分け隔てがなく、"変わらない価値"が証明されているところにも、凄みがありました。

(流行にとらわれないものづくりってとても難しいことだと思うんです…)



風 - life and design - 
生活とデザイン


このエリアでは、ミナペルホネンの服を着ている人の「日常」の映像作品を投影されていました。

どうして「日常」にフォーカスされているのかというと、

ミナペルホネンの設立当初の想いである、

特別なシチュエーションのための服ではなく、日常のための特別な服を作りたい、という一貫したものづくりの思想から。

「アトリエで生まれたデザインが、職人さんによって、テキスタイルになっていく。そして服となったプロダクトは、人々の日常に寄り添う旅に出る」と会場で語られていました。

山形、沖縄、東京、パリの4都市を舞台に、4人の愛用者さんの生活やお仕事に密着して、それぞれのストーリーを感じられました。

この鑑賞エリアで使用されていたスツールも、ミナペルホネンのプロダクト。(腰をかけるのがもったいないくらいに素敵でした…)



芽 - designs for textiles -
テキスタイルのためのデザイン


ミナペルホネンのものづくりの特徴は、生地からデザインして洋服に仕立てること。

皆川さんと、インハウスデザイナーの田中景子さんによる、生地のためのデザイン画が紹介されていました。

デザインアイデアは、日常で目にした一場面や、旅先で出会った風景の記憶が想像力と結びつくといいます。

それが、発見や遊び心に満ちたデザインに生まれ変わっていくのだそう。


手描きの線や、印象的な色の重なりのプリント用原画、糸から織組みまで計算されて描かれる織物用の原画、模様の反復、ステッチの立体感を想起させる刺繍用の図案など。

このあと国内有数の職人さんたちのいる生地工場さんへ手渡され、やりとりを重ねながら、時間をかけてテキスタイルへと形作られていく。

(私たちのお仕事と共通する工程だなと感じました)


「soda water」というテキスタイルの図案は織り物の指示書が用意されていました。

ひとつひとつのドットの織りの方向を、矢印で事細かく指示されています。


「hana no mi」という柄では、刺繍のための図案が。

背景の刺繍図案と、花の形をつくる刺繍の図案で、背景の上に花の形が乗るため、一枚の図案でもいいのでは、とも思ったけど、レイヤーを重ねるかのように、背景と花の形をそれぞれ分けて指示されていました。

ものづくりを進める工程の中では、対話やテキストのみのコミュニケーションではなく、このように図案を用いることで、認識の齟齬をなくしてコミュニケーションコストを抑える。

多くの方の手が必要なものづくりの現場では、どこも共通して重要なことなのだと再認識しました。


種 - idea ind study -
アイデアと試み


ミナペルホネンはファッションブランドとして始まって、1999年にはオリジナルデザインの家具、2008年には食器のコレクションへも領域を広げられています。


このエリアでは、幅広い活動の根幹にあるミナペルホネンのものづくりの哲学やアイデア、これまでやこれからの試みを通して紹介されていました。


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刺繍の試作、生地のカットイメージなどは、隅々まで無駄なく、プロダクトが生み出せるように試行錯誤されている形跡が伺えます。

そして、端切れの集まりなどからもまた、新しいプロダクトイメージが生まれて、実際に商品化されていることも。(パッチワークなどが有名かもしれません)


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デザインアイデアは、いつ、どこに隠れているかはわからないし、そういうアンテナを常に立てておくこと、そういう体質に持っていくことが大事だと感じます。


土 - memory of clothes -
洋服と記憶


最後に紹介したかったのが、このエリア。

「洋服と記憶」と名付けられていて、ミナペルホネンの服とその持ち主との関係性に焦点をあて、個人が有している愛用品15点を、彼らが語る服とのエピソードとともに紹介されています。

展示方式は、立てかけられたアクリル板とアクリル板の間に服が収められ、その服に関するエピソードが添えられていました。

(実際に見ると、服が浮遊しているような見え方で幻想的でした)

会場では、「服はその時、その人だけのプライベートな記憶の貯蔵庫になる」と表現されていて、15人の方には、1着の服にそれぞれの思い出があり、その思い出を保管しておくために長く愛用されている様子が伺えます。

保管しておく、だけではなく、シーズンを超えて、また記憶を着て日常を過ごすことができるというのは、実用的でもあり、情緒的でもあり、長く大事にされる理由がわかる気がしました。



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私が前職のアパレル業界で働いていたときにミナペルホネンを知り、変わらないことへの価値、愛され続けるものづくりのためには何が必要か、などを考える機会が増えました。

そして今のお仕事にも通ずる部分が少なからずあり、参考にしたい思想や手法なども知ることができた今回。

これから自分が年を重ねていくにつれて、今以上に物質ひとつひとつを長く大事にしていきたいし、敷居が高いと感じていたミナのお洋服も、これから積極的に日常に取り入れていきたいなと思います。

やはりしばらくは特別な日に着るお洋服になりそうだけど…

直近の目標としては、物怖じせずに胸を張ってミナのお洋服を着れる人になること。

という妄想をしながらショップを見るのが、現在家ごもり生活を送っている日々の癒しです…


自分の好きなことから、お仕事についての学びをえられるのが、このお仕事をしていて楽しいな、と感じるところですね。

コロナが収束したら、またいろんな展示を見にいきたいなと思います。

もしこのnoteを読んで下さった方で、ミナペルホネンのお洋服好きの方がいたらぜひお話ししましょう!
(好きなものについて話したいという欲求。。。。。。。)

それではまた!

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