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『パウル・クレー展』を観る
初めて知ることばかりだった。
彼がスイス・ベルン近郊の町で生まれたことも、音楽一家に生まれたことも。
弦楽器の名手だったなんて驚きだ。
でも聞けば、なんとなくわかるような気がするのは、彼の作品が抽象的で感覚を見る人に委ねるからだ。
音色とか旋律とかに、どこか似ているような気がする。
私にとって、彼はバウハウスのクレーだった。
アトリエで撮ったモノクロ写真が、私の知っているクレーその人だった。
1923年、バウハウス・ヴァイマルのアトリエで写された写真。
数々の作品を目にしても、画家というより私はデザイナーの印象を持っていた。
線より面、取り分け色彩が好きだった。
彼の色使いはすぐにわかる。
この展覧会のポスターを最初に見た時も、色ですぐにわかった。
水曜日の美術館は、平日にしては人がいた。
友人と来るつもりでだったけど、彼は体調を崩して入院中だ。
リーフレットだけを病室に届け「行ってくるね」と伝えた。
水彩で描かれた『都市の境界』はモノトーンの作品だ。
1926年に制作された。
この絵の前に、私はしばらく立っていた。
私にとって特別で、他の作品と色彩も違う。
ただただ静かで俯瞰するようなまなざしを感じる。
クレーは描きながら、何を考え何を見ていたんだろう…
心はどこにあったんだろう…
1925年、政治的な圧力によりヴァイマルのバウハウスが閉校、デッサウへと移転する。
この絵を、彼はどこで描いたんだろう。
あのアトリエはもうなかった。
私も含め、観る人は自分勝手に絵から物語を見つける。
私は彼の描く姿を想い浮かべた。
旅先の何処かの街の何もない部屋で、手近にあった紙に数少ない絵の具で色をつけたような気がする。
連続する建物と窓と空気と空の重なりを黙々と描いていたように想う。
1本の平筆だけで。
彼の前に都市は存在しただろうか?
目に浮かんだ都市を描いたのだろうか?
小さなこの絵に引き込まれるのはなぜだろう…
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