幸福と悲しみと book review
『ノック人とツルの森』
アクセル・ブラウンズ・作
浅井晶子・訳
河出書房新社
私は本書を『少女の成長物語』として読んだ。悲惨なゴミ屋敷の実態やネグレストよりも、その現状をありのまま受け入れ、そこで生きるアディーナの視点がユニークで興味深かったからだ。彼女は母と弟と三人で暮らしている。父はずいぶん前に亡くなった。
彼女たちには二つの世界が存在する。一つは家の内側の世界。もう一つは家の外側の世界。外の世界は危険だと、彼女たちは母に言い聞かされて育った。そこには怖いノック人