維新の組織論 前編 (自民党と比較して)
(この記事は、2022年5月21日に前ブログで公開されたものです。)
政党の組織はどうあるべきか。これは、永遠の課題である。
昨今、維新を含む野党の(広い意味での)ガバナンスについて、疑問の声が多く上がっている。
とりわけ維新は、地方政党が発祥である点が他の政党と大きく異なる点であり、しかも、国会議員団や大阪等の地方議会議員団が並立の関係で日本維新の会という政党が持ち株会社のように束ねるという形は、他の政党にも類を見ないであろう。
それゆえに、Twitter上で地方議員と国会議員が減税について丁々発止の議論をするなんてことがままある。他党では地方議員が国会議員に政策議論をふっかけるなんてことはまずない。(いや、直近であった例は国会議員が言い出しっぺか?まあいいや。)
私は、議論すること自体は、どんどんやればいいと思う。
議論することで、問題点が洗い出されその改善のきっかけとなり、政策が磨かれる。
問題なのは、議論の結果、多数派となって決まった結論に、党が一丸となって従うかどうかである。
民主党政権は、華々しいデビューとは裏腹にその末路はひどいものだった。
間違った脱官僚、閣僚の度重なる致命的な失言、稚拙な危機対応・・・・・もろもろあるが、私が最も問題だと思うのは、「党として決められたことに従わない」ということ。
「消費税を引き上げるかどうか」は、民主党政権後半で大きなトピックスであり続けた。
政権交代したときの衆院選のマニュフェストでは消費税は上げないと言っていたにもかかわらず、鳩山内閣を引き継いだ菅(かん)内閣で消費税引き上げをぶち上げ(なお、直後の参院選で惨敗)、さらにその後の野田内閣で民自公の三党合意で実現。
政策として、あの時消費税を上げるべきだったのかどうかは歴史の審判にゆだねるとして、私が気になるのは、消費税引き上げまでの過程。
菅内閣でマニュフェスト違反を自ら犯したという点については置いといて、野田内閣での話。
民主党の中で喧々諤々の議論はあったものの、消費税引き上げで党内決定したにもかかわらず、小沢一郎とその子飼の議員らはそれを不服として民主党を離党した。
相次ぐ失政で民主党が次の衆院選で負けることがわかっていたからこそ、不人気な消費税上げなんてやってらんないといういかにもアレな理由だとは思うが、私が残念なのは党内で決まったことを従えない組織であること。
議員個人個人、本音のところで政策や思想信条が違うことはある。
もちろん政党のカラーがあるから、その違いはある一定の範囲で収まっているのがほとんど。
民主党は右から左までイデオロギーのレンジが広いので、政策をすり合わせて党内でコンセンサスを取るのは難しかったのかもしれないが、消費税という比較的右の中でも左の中でも賛否が分かれそうなイデオロギー関係ない案件でも一つにまとまって行動できなかったのは、単なる思想の問題と言うより、組織文化や風土の問題だろう。
消費税引き上げは大きなマターだと思うが、自民党が消費税を引き上げたとき、大きな造反等は起きなかった。
それは、自民党がある程度中道から右にまとまった組織であったということだけではなく、彼らは一つにまとまれる文化がある。
自民党は、うまく反対意見をガス抜きさせる技術に優れている。
党内の部会で賛成と反対が割れたとき、両方の立場から激しい議論を交わされる。
自民党の議員の多くは一定の利益団体からの支持を受けて選挙を勝ち上がってくるわけだから、自分たちの支持者たる団体の利益を損なうようなことは避けねばならないから、議論は白熱するし、引けないところはとことん反対する。
しかし、野党と違うのは、彼らは現実に政府を動かしているから、結論を出さないといけない。言ったら言いっぱなしで終わらず、党としての方針を出さないといけない。
だから、賛否が激しく対立した場合、一定の妥協を含め、少なくとも賛成と反対のどちらかが折れる必要があるのだ。
では、折れた側はどうするか。
自分たちの支持者に対する言い訳を用意するのだ。
折れる側は、議論のときは徹底的に利益団体の立場を主張するが、決を採る際に(都合よく)トイレに行ったり、(これまた都合よく)急に電話がかかってきたりして、その場を立つのだ。
また、その場の議長も、決を採る際に、折れるべき側に対して目くばせをして、「トイレ行け」「電話に出ろ」と暗に言うのだ。
ここらへんは、まさに阿吽の呼吸。
で、多数決がいつの間にか採られて、折れた側の議員は自分たちを支持する団体に、「いやね、私がいない間に採決されたんですよ。反対したんですけどね。」とうまく弁明するのだ。
こうすることで、自分たちを支持する団体にも顔が立つし、何も決まらない事態を避けることができる。
まさに、政権を長らく担ってきた自民党ならではの知恵と言える。
この手の話は、実は橋下徹氏が『政権奪取論 強い野党の作り方』に詳しく書かれてある。
橋下氏は、こういう自民党のまとまる技術を高く評価している。
残念ながら、政権交代時に、民主党は結党十数年の歴史しかなく、しかも政権を担ってきた経験もないまま政権を持ってしまったものだから、そういう創意工夫を得る機会のないままであった。
だから、党内議論が先鋭化すればするほど、物事が決められない状態、あるいは少数派が党内で行き場を失い離党するという事態に陥ってしまったのである。
いかにして少数者を包み込むか。これは、何も党内議論の話だけではない。民主主義の根本として多数意見を形成することと同じくらいに大事なことである。
その辺、実は自民党はかなりうまくやっているのである。
自民党の知恵、そして民主党の失敗。これらを見て、これから野党第一党を目指す維新が、組織としてどのようにあるべきか。
それはまた、別の機会に書くとしよう。(後編に続く)
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