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勝手に解説!大阪市長候補者選考要綱!!

こんにちは、海原雄山です。

本日は、来春に行われる大阪市長選における大阪維新の会公認候補予定者の予備選について、その実施要綱が発表されたので、私なりの解説を加えていきたいと思います。


選考の骨格(第1条~第2条)

では、早速条文ごとに見ていきましょう。
条文をコピペしていますが、煩わしかったら読み飛ばしてもOKです。

「1 選考手続きの基本
⑴ 大阪維新の会規約第 12 条に基づき設置された「大阪市長候補者予備選挙準備委員会」 を本要綱施行後「大阪市長候補者予備選挙実行委員会」(以下「当委員会」という。)に 改め、当委員会が本選考手続き全般を管理執行する。
⑵ 本選考手続きの執行にあたっては、公職選挙法に抵触することがないよう細心の注意 を払い、原則党内で完結させる。

2 選考手順
① 公募
② 第一次選考 応募者 6 名以上の場合 5 名に絞り込み
③ 第二次選考 選考委員会による絞り込み
④ 最終選考 党員等による投票
⑤ 候補者決定、発表」

→第1条と2条は、大阪市長候補者選考の骨格を示しています。第2条の選考手順において、第一次選考、第二次選考、最終選考という3つの関門があることを定めています。

各手続の詳細(第3条)

「3 各手続きの詳細
① 公募
(中略)
・応募書類は、他の選挙と同様の応募書類並びに本党特別党員でない者の応募である場 合は加えて推薦人届出書及び推薦人承諾書とする。
・推薦人は、大阪維新の会所属の大阪市議会議員、大阪府議会議員又は国会議員から 1 名の推薦を得ることとする。 なお、推薦人は複数の候補者の推薦人にはなれない。また、当委員会委員及び応募者 は推薦人にはなれない。 (中略)
・既に大阪維新の会又は日本維新の会から他の選挙で公認されている者の応募について は、その公認は継続する。
・応募者については、その締め切り後氏名等を公表する。(党内及びマスコミに限る)
・応募者は、その応募の前後を問わず、当委員会が応募者の氏名等を公表するまでマス コミ等に発表してはならない。

② 第一次選考 ・応募者が 6 名以上の場合は、第一次選考を行い 5 名に絞り込む。応募者が 5 名以下の 場合は第一次選考を行わない。
・第一次選考は、当委員会委員及び応募者又は推薦人になった者以外から当委員会が委嘱した者 5 名の計 10 名により行う。
・選考方法は、応募者全員のプレゼンテーションを聴取し採点方式で決定する。

③ 第二次選考
・書類審査並びに面接及びプレゼンテーションにより、2~3 名に絞り込む。応募者が 3 名以下の場合であっても第二次選考を実施し、党員等による投票に付すべき候補者か 判断する。
・第二次選考は、応募者又は推薦人になった者以外から当委員会が委嘱した 6 名の委員 による選考委員会が行う。
・選考方法は、委員全員の合議により決定する。

④ 党員等による投票 次の党員等による投票を実施し、当選人を決定する。 ・大阪維新の会所属の特別党員
・大阪府内在住の一般党員(令和 4 年 9 月 15 日時点で登録されている者)
・オンライン会員設置要綱に基づき登録したオンライン会員 その投票の詳細は「党員投票実施要領」に定める。

⑤ 候補者決定及び発表 大阪維新の会規約第 13 条第 1 項の規定により代表が決定し、公表する。」

→そして第3条は、第2条で示された工程の詳細が定められていますが、①で示された立候補要件として、特別党員以外は、、大阪維新の会所属の大阪市議会議員、大阪府議会議員又は国会議員から 1 名の推薦を得ることを定めています。

公募という間口を広げて一般からも人材を募るわけですが、この推薦要件により、例えば大阪維新を貶める邪な目的で立候補するような人が立候補することを防ぐわけです。

ところで、この公募に関する条文ですが、先月の党代表選の反省・振り返りが随所に生きています。

「既に大阪維新の会又は日本維新の会から他の選挙で公認されている者の応募について は、その公認は継続する。」とあることから、例えこの予備選に立候補して敗れても、冷や飯を食わされるということはないことが、この条文で担保されます。

先ごろの党代表選では、立候補したら政治生命が終わるというような恫喝があったとかなかったとかという話ではありましたが、特定の権力者の考えに左右されずに自由に立候補することが保証される条文と言えるでしょう。

「応募者は、その応募の前後を問わず、当委員会が応募者の氏名等を公表するまでマス コミ等に発表してはならない。」とありますが、早々に立候補者が公になって、他の立候補を考えている人が委縮してしまわないような配慮と言えるでしょう。

②の第一次選考ですが、もし6名以上の立候補者がいる場合にのみ実施する旨が定められています。プレゼンテーションで5名に絞り込むそうですが、何を基準に採点するのか、何をプレゼンするのかが明確ではありません。そこは要領の公表を待つしかないのかもしれません。

③の第二次選考は、書類選考と面接とプレゼンテーションで2~3名に絞り込むわけですが、6 名の委員 による選考委員会が選考を行います。選考方法は、委員全員の合議により決定するとあるので、採点方式をとる第一次選考と異なります。

となると、6名の選考委員の意見が分かれた場合、どうなるでしょうか。明確にこの6人の序列等は示されてませんし、選考委員長というものも定められていないように見えますので、恐らく、発言力のある人の鶴の一声で最後は決まる可能性はあるでしょう。

そうなると、党のオーナーとも言える松井前代表、そして吉村代表の二人の考えが、第二次選考の結果を大きく左右することも考えられます。

そして、今最も物議を醸しているのが、④の選挙権者の件ですが、大阪維新に所属する特別党員(=大阪の選挙区から出ている国会議員(一部参議院全国比例も含む?)、首長、地方議会議員等)までは、地域を絞っただけで党代表選と同条件ですが、一般党員は党代表選と違い年数関係なく令和 4 年 9 月 15 日時点で登録されている者とされております。

もともと、日本維新の会党代表選については、のっとり防止のためにこういう2年党員を続けなければ投票権を得られないという年数要件が課されていましたが、今回はあくまで公認候補を決める予備選であり、また、公認候補者を決める前に選考委員による選考が幾重にも行われますので、のっとり等のリスクがないため、年数要件を定める必要が無いからなのかもしれません。

また、市長候補なのに、それを選ぶ一般党員は市内だけではなく大阪府内全域に住む人が投票権を得られるのは、府市一体の結節点となる大阪市長候補者を大阪府全体で選ぶということでもあり、府市一体で大阪の成長を実現させる大阪維新のOne大阪の思想から考えて、ある意味当然の帰結と言えるでしょう。

そして、「オンライン会員設置要綱に基づき登録したオンライン会員 その投票の詳細は「党員投票実施要領」に定める。」とあるように、今回の予備選では大阪維新の会のLINE会員にも投票権があります。

これは、当初電話による世論調査により維新の市長選公認候補を決めるはずでしたが、総務省により事前運動にあたる可能性を指摘されたため計画変更となったため、その代替措置として導入された制度のようです。

しかし、ここで懸念されるのは、LINEのオンライン会員は本当に大阪府内在住者なのかどうか怪しいということ。

大阪維新の会オンライン会員設置要綱には、「満 18 歳以上で日本国籍を有し、本会の趣旨に賛同する大阪府内在住者から インターネットによりオンライン会員を募集する。 登録にあたっては、氏名及び住所を明らかにして登録する。」(第2条)という記載がありますが、身分証明書などによる確認が行われないので、適当な住所を入力しておけばとりあえずは登録可能です。

後で虚偽であることがわかれば退会ということになるようですが、数万人規模で登録があれば、それもどれだけ実効性があるか疑問ではあります。

また、他党の支持者が予備選の結果を自分の支持政党に有利になるように操作する目的で大量に工作員が流入し、選考過程がゆがめられる恐れも無きにしも非ずです。

後者については、そもそも候補者の選考を幾重にも行うので、そもそも維新に不利益を与える候補者は投票に上がってこないので、問題ないかもしれません。

ただ、それでも、投票に与える影響が残るわけですが、オンライン会員の票は、全体の1~2割程度となるように調整されることも想定されているようです。

これはどういうことかと言うと、仮に一般党員・特別党員票が1万、オンライン会員の票が100万だとすると、そのまま両者が等価ならば、オンライン会員の票で結果が決まってしまうわけですが、その100万の票を1000分の1に圧縮すれば、一般党員・特別党員票が1万に対してオンライン会員の票が1000になり、全体の1割ほどのシェアになってくるわけです。

なので、仮に大阪府以外の人が多くオンライン会員に登録していようが、妨害目的で他党支持者が入ってこようが、そのようなエラー値は大幅に圧縮され、しかも大きな影響を与えない程度になるので、問題ないということのようです。

これについて、オンライン会員の票が希釈化され一票の格差が生まれるという指摘もあるようですが、そもそもこれは公職の選挙そのものではなく、候補者選考ですので、そこは問題ないと考えられます。

むしろ、党費を払っている一般党員とそうじゃないオンライン会員の票が平等ならば、一般党員にとって不公平感があり、このように両者で一票の価値に差をつけるのは合理的と考えられます。

それでもなお、オンライン会員に投票権を付与する意義ですが、これは、党員だけではなく広く一般の人にも候補者を選んでもらい盛り上げようという、広報戦略も見え隠れします。

大阪維新もかなり強かと言えるでしょう。

選挙運動と罰則(第4~5条)


「4 選挙運動
⑴ 党営選挙運動
・各候補者から提出された候補者政見を党員及び会員に提供するとともに、特設ペー ジに掲載する。
・党員及び会員に対する討論会を大阪市内の衆議院小選挙区単位で 1 回行う。 そのユーチューブ動画を特設ページに掲載する。
⑵ 候補者及び特別党員から一般党員への選挙運動は禁止する。

5 この要綱に反する行為を行った者は、厳しく対処、処分する。」

第4条は、選挙運動について定められています。ここでは、かなり党代表選挙で露呈した問題点の改善が見られます。

まず、党代表選では有権者に政見が配られませんでしたし、投票用紙となる往復はがきにQRコードが記載され、サイトにアクセスしなければ候補者の名前さえも分かりませんでした。

しかし、今回の予備選では、要綱にきっちりと政見を配ることが定められましたので、かなり安心です。

前の党代表選では候補者が出そろってから投票日まで時間が無かったというのもありますが、今回の予備選は、候補者選定の過程が2か月ほどとかなり時間がありますので、そういうものを作る余裕もあるというのも両者の違いになっていると考えられます。

また、「⑵ 候補者及び特別党員から一般党員への選挙運動は禁止する。」とありますが、これは党代表選でいくつか特別党員から一般党員に対して票の取りまとめを行ったかのような疑惑を持たれたことに対する対応と言えるでしょう。

そもそも、特別党員から一般党員に働きかけることを禁じることで不正を防ぐ狙いがあると言うことでしょう。

そして、この第1条から第4条までの条文の実効性を担保するために、「5 この要綱に反する行為を行った者は、厳しく対処、処分する。」という旨が明記されています。

これは、ある種、先日の党代表選において不正と疑われる行為に対して、厳重注意くらいしか対処できていなかったことへの痛烈な批判も込められているというのは、私の考えすぎでしょうか。

まとめ

今回の大阪市長選予備選ですが、かなり党代表選の教訓が生きていると考えられます。党員要件や選挙活動に至るまで、随所に炎上の火種を摘む工夫が宿っている、素晴らしい選考要綱と言えるでしょう。

また、特別党員・一般党員だけでなく、広く民意を問う意味でオンライン会員にまで投票権を付与していますが、一般人までこの予備選に巻き込んで関心を集めようというのは、政治参加への意識付けを行う上で、素晴らしい試みと言えるでしょう。

オンライン会員と一般党員でどういう投票行動の違いがあるか、気になりますが、これも大きな話題になり得るか、注目です。

もちろん、この予備選の制度は100点満点とは言えません。まだ明確になっていない部分もありますし、オンライン会員の登録内容の真正性をいかにして担保するかは、一定程度棚上げになっています。

しかし、今回の予備選は、総務省からの物言いで計画変更になったこともあり、様々な制約があった中、広く民意を問うことと選考の公正性をうまくバランスさせたものと考えられます。

ここまでの制度を短期で整えた、杉山みきと大阪市議会議員ら、準備に携わった皆さんに敬意を表したいと思います。

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