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『空が青いから白を選んだのです』


#読書の秋2020


好きな本と言われて真っ先に思い浮かぶのがこの本です。

就職活動を前にしていた時期に読んだ本で、社会の為になる仕事がしたいと思っていたけど、自信も実力もなく、結局結論としては給料と福利厚生が良くて、無難に安定した生活を送ることができそうな会社に就職して「生きるために働く」ことを答えにしてしまったけれど、22歳だった私にはそれしかできませんでした。

しかし、私の人とのかかわり方を変えるだけでも何かできることがあるのかもしれないと気が付かせてくれた本です。


この本には、少年刑務所の中でも、みんなと歩調を合わせるのが難しく、極端に内気で自己表現が苦手だったり、動作がゆっくりだったり、虐待された記憶があって心を閉ざしがちな人々を対象にしたプログラムのなかで発表された詩が収録されています。

いきなりあとがきからの引用になってしまいますが、この本の一番大切な部分を紹介します。


「彼らの更生を成就させるには、2つの条件がある。1つは、彼ら自身が変わること。そして、元受刑者を温かく受け入れてくれる社会があることだ。」(あとがきより)


もし目の前に少年刑務所にいた人がいたら、そうではない人と同じように接することができるでしょうか。そもそも同じように接しなければいけないという考えはあるでしょうか。

本書の中で一番心を動かされた詩を紹介します。



ゆめ

ぼくのゆめは…………………


(P.28より引用)


この詩の作者は重い罪を犯して長い懲役で服役中だったそうです。

朗読後、幼いころに父親に競艇場に連れて行ってもらったことをきっかけに競艇選手を志し、試験を受けたがおちてしまったこと、出所したらまた受けたいという事を語ったそうです。

彼の中にはしっかりと夢があるのにも関わらず、それを書けなかった彼の心の事を考えてしまいます。

彼自身、出所後も世間の風は冷たく、差別もあるかもしれないことをわかっているのかもしれません。

夢を紙に書けるような、あたたかく受け入れる社会でなければいけないと気づかされました。

「どんなに凶悪な犯罪者も、はじめは心に傷ひとつない赤ちゃんだったはずです。ところが生育していく中でさまざまな困難に出会い傷ついてゆく。受刑者の多くが子どものころ、精神的、身体的な傷を受けています。その傷をうまく処理できなかった者が非行に走り、犯罪者になるのかもしれません。」

自分とは違う環境で育ってきた人の事を理解することは、相手が元受刑者であろうとそうでなかろうと難しいことです。

本書の中にはお母さんがいない子や「ぞうさん」の歌を知らずに育ってきた子の詩があって、自分以外の人の事について考えることができました。この本を読む前はそういった子たちに対してフラットに接することができたかは自信がありません。自分の中の偏見に気が付くことができました。

私はたまたま恵まれた環境にいることができましたが、それは私の努力でもなんでもなく、運です。

自分と同じように生まれてきて、自分と同じようには社会に受け入れられなかった子どもたちに対して、私の子どものときの記憶と同じように接することは

収録されている詩の作者より年上で、大人になった私の義務だと強く思います。



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