El hijo del torturador y su hermana 拷問人の息子と、その姉妹
姉妹作となる『ヒヅメ坂の子供達』について
館山緑さんの小説『ヒヅメ坂の子供達』あとがきで言及されているように、このシリーズは某社から告知されていたクトゥルー神話小説の共著企画がベースで、ふたつの作品はいわば兄弟姉妹のような関係にあります。ただし、やはりあとがきで言及されているように、本作も『ヒヅメ坂の子供達』と同様にベースとなった企画からかなり変わっており、特にキャラクターはヒメネス枢機卿を除いてほぼ総入れ替えで、プロットもその段階のものとは全く異なっています。
とは言え、物語の舞台となる「帝国」や奇跡術、兄弟団、非神子などの設定はほぼそのままで、本シリーズにおける聖女とは別個のキャラクターですが、辺境の聖女も登場する予定でした。つまり、拷問人の息子が暮らす街とは異なる、帝国のどこかで発生した事件を描く物語という作品だったとの位置づけになります。
では、なぜ館山さんのパートが存在したのかと言うと、それは現代日本に暮らす主人公が「帝国世界の非神子へ転生する」物語だったためで、当初は現代日本編と帝国世界編のふたつでひとつの作品を構成する予定でした。
最近の転生ライトノベルブームに便乗したゲームや小説の企画が乱立したことをご存知の方なら、すぐに察しがついたかもしれませんが、共著企画のさらに前には原型となる転生ライトノベル及び連動ゲーム企画が存在していて、その世界設定は松代が担当していました。ただ、あまたある企画とおなじように、そのライトノベルとゲームの連動企画も検討段階から進むこと無く放棄され、松代の手元には世界設定のみが残されたのです。
とまぁ、このような紆余曲折を経て完成したのが拷問人の息子シリーズであり、その姉妹作となる『ヒヅメ坂の子供達』なのです。
館山緑作 ヒヅメ坂の子供達
特異な習俗を保つ郊外とも山里ともつかぬ土地に暮らす、幼馴染の少年少女たちが主人公ですが、彼らにとある変化が訪れたことによって自らの呪われた宿命と、それがもたらす惨劇の幕が開きます。非常に美しく、かつ恐ろしい物語です。
こちらは試し読みページです。
とてもおすすめの作品です。