20220501-ベスト

中学の頃の友達と服を買いに行った。私と友達は今月あいみょんのライブに行く。友達は中学の時からあいみょんのことが好きで、あいみょんのことをみょんさんと呼ぶ。ライブは1人でしか行ったことがないらしい。
「友達とライブ行くの初めてなんだ。いつもは、私服で行ってるんだけど友達と行くならライブTを着て行った方が礼儀として良いよね?みょんさんの新曲が双葉だから、緑のズボンとか履いてみたいの。でも、服ってどこで買えば良いのか分からないから、ついてきて欲しい。うちの服がやばいことは知ってるでしょ?」と友達に頼まれた。礼儀ってなんだよと思ったりもしたが、最後の一言の説得力だけはすごかった。頼んできた時の友達は、赤いTシャツに中学ジャージを履いた状態だったから。

安い方がいいと言っていたので、GUに行き、緑のスラックスを買った。オレンジの長袖Tシャツを上に着たまま、緑のズボンを履いた友達はにんじんみたいだった。クレヨンしんちゃんの靴下を履いていたので、かわいいねと言うと、「靴を脱ぐことを考えてなかった。そんなに靴下を見ないで。」と友達は恥ずかしそうにしていた。かわいい。

帰り道は、中学の時みかんの皮を芳香剤と言って更衣室のゴミ箱に捨てたら先生にひどく叱られたとか、最近栗橋がタリーズのバイトに落ちたとかどうでもいい話ばかりした。
「卒業した途端、みんながもう時効だと思って色々な話をしてくる。薄々勘づいてはいたけど、実際に言われるのとは全然違う。」と友達は少し不満げに言った。
そして、その話の流れで、中学の時にお互い聞けなかったことを聞くことになった。でも、友達は当時好きだった人は教えてくれなかった。まだ時効じゃないらしい。それならしょうがないと諦めた。
友達は、中2の時に私がH君を好きだという噂が流れていたけどそれは本当だったのかと聞いてきた。H君とは委員会と部活が同じだっただけで、そんなことは一切なかった。「別に聞いてくれれば良かったのに。」と言うと、友達は「ガチっぽいから聞けなかった。そういうのって聞いていいか分からないし。」と言った。別に聞いてくれればよかったのにとは言ったものの、友達のずかずかと踏み込んでこないところとかが当時は好きだったのかもと思ったりもした。

友達によると、私がH君のことを本気で好きだという噂の原因は、私のベストにあった。その頃、母が買ったベストが沢山あるのに、近所のお姉さんから更におさがりを貰い、10着近くベストを持っていた私は、着るベストを毎日変えていた。それを同級生から、恋をして急におしゃれをするようになったと見られていたらしい。
ベストを毎日変えていたと言っても、同じ色のベストは沢山あるし、違うところは左胸のところの自由の女神の色くらいだった。つまり、噂を流した本人はそこまでチェックしていたということだ。そう考えるとかなり面白い。

服装の規制が多い中学生にとっての最大のおしゃれは、ベストを変えることくらいだったのだと思う。大学生にもなり、すっかり忘れていたこんな中学生の感覚を思い出せたのが嬉しかった。

冬にあの噂が消えたのは、ブレザーを着るようになってベストが目立たなくなったからなのかもしれない。


いいなと思ったら応援しよう!