渋谷のゲイbar
なぜ、そういうことになったのだろう。気がついたら俺たちはその場所にいたんだ。
平日休み、女友達の1人М子とハーフの男友達Y君と飲みに行った。前からゲイバーに行ってみたい、という話をしていた。終電もなくなり、じゃあ行こう!となって渋谷の夜の街へ。
どこが良いかなんて全然分からないからGoogle先生を頼る。1番最初に出て来たお店に行くことにした。
怪しいビル、ガールズバーや老舗の喫茶店、いろんなお店が入ってる。その一つにそのゲイバーはあった。
扉にはOPENと書かれたプラカードがぶら下がっている。扉の奥は未知の世界。誰が最初に踏み込むか。ジャンケンでその場で決める。
ジャンケンを提案した言い出しっぺのY君が負けて、単身突っ込んでいった。恐る恐る後ろをついていく俺たち。
中はそんなに広くなくてカウンター席が10席くらい。ソファー席が二つ。ソファー席に4人組の男性客がいた。カウンターの向こう側にはゲイであろうバーテンがこちらへ向かって声をかけてきた。その声の大きさでビビる。めちゃくちゃテンションが高い!
俺たちは横並びにカウンター席に座り、飲み物をそれぞれ頼む。今日、カウンターの向こう側にいるバーテンはピロさんという人だった。
興味津々のY君はガンガン話し掛ける。その会話のやりとりを聞いてて笑う、M子と俺。
お店にはカラオケがついてて、後ろの男性客立たちが歌っている。微かにしかトーク内容は聞こえない。知らない人のカラオケをBGMに、カウンターごしで話し合う2人のやり取りをずっと見ていた。
カラオケが落ちつくと、今度はこちらに話を振ってくるピロさん。
「なんで今日はここに来たの~?」「あんた、ゲイ?」
多分、日常生活であまり聞かれることないだろう質問をされる俺。ここまで聞くとまだマシな会話に聞こえるが、実際は入った瞬間から下ネタのオンパレード。
話に聞くと、ゲイバーには2種類ある。そういう人たち専門で、ノンケさんお断りのお店。もちろん、女性もダメだったりする。
今回行ったところはミックスバー、観光バーと言われるような誰でもウェルカムな所。だから誰でも気軽に足を運べてフレンドリーに会話できる。つまり、楽しい。
Google先生で1番最初に出てくるから外国人の観光客も多いらしく、「彼らが何を言ってるか全然分からないけど、身振り手振りで頑張るしかない」と言っていた。もともと動きが激しい人なのに、さらにその上をいくというのか…少し、見てみたいなという気持ちになった。
女性客のおひとり様で来る人も多いらしい。お店に入った瞬間にブスと連呼されていたM子。「この業界ではブスは挨拶」、と迷言を言っていた。「ホントのブスには言えないけどね…ゲイバーとかであんたキレイねぇとか言われたら気を付けなさい」、とも言っていた。それは逆の意味らしい(笑)
恐るべし。
未知の世界のことを色々教えてもらう。ゲイの中にもいろんな人たちがいて、女装や、テレビに出てるミッツとかマツコは少し異色らしい。ゲイ人口の2割にも女装する人は満たないらしい。
要するに、女性になりたいではなくて男が好きという人が多いのだろう。だから、彼氏ができてもこういう所のショーとかで女装してキャーキャー言われてしまうと冷められて別れてしまう、ということもあるらしい。
この世界はなかなか奥が深い。
そんな話をしてたら後ろの男性客の1人がY君に近づく。彼は今、口説かれている。
そんな2人を俺とM子は放置してピロさんと話し続ける。やっぱり接客業でおしゃべりが必要な分、話が上手い。おもしろい、楽しい。そしてY君はカラオケに逃げる。なぜかゲイバーでのゴリゴリのラウドロックを歌い始めた。選曲…(笑)
自分はこういう所に来たら完全にまわりに合わせる。藤井フミヤのTRUE LOVEだとか、徳永英明のレイニーブルーだとか尾崎豊もまだいけるかな?昭和の終わりぐらいはなかなか受けが良いのである。今回は歌わなかったが。
もし気に入られでもしてゲイにお持ち帰りされようもんなら、もうね。違う道に進む羽目になるだろう。
気づいたら後ろの男性客たちがいちゃつきながら帰る支度をしてる。まあ、そうだよね!ゲイバーだもんね!
男性客グループの中に1人、めっちゃイケメンの外国人が混ざっていた。つまりモテる、ということだね。そういえばY君はハーフだったよね…ふふふ(笑)
そうして彼らが帰っていく。お店には俺ら3人とピロさんだけ。なんやかんやお酒を飲みながら楽しく会話してたらピロさんのとこに一通の電話が。どうやら知り合いが一人来るらしい。
その人が来るまでのあいだ、ピロさんによるカラオケが続く。カウンターでくねくねした動きをしながらももいろクローバーZの曲を熱唱していた。踊りを完璧に覚えて手を振り腰を振り踊っていた。これは絶対にどこかのショーに出てやっているなというのがまるわかりだった。ただ見た目は完全におっさんだった。
そして、電話をかけてきた人が来た。すごい人が来た。先ほどY君が熱唱していたラウドロックを知っていた。もうそれだけで、はあ?って感じくらいの偶然と驚きと、嬉しさ?があった。
彼は音楽業界に携わっててDJをしてるらしい。今度もイベントをやるんだと言っていた。色んなバンドを知っていた。そしてゲイバーで盛り上がるカラオケ、ロックver
ピロさん困惑。「こんなこと滅多にないわよ!」ってずっと言ってたよ。そりゃそうだろうな、初めて来た俺からしても異常だったと思うよ(笑)
おもしろい人間大好きだから俺も話し掛けにいく。ピロさんから、イェーガー、テキーラを頂く。久しぶりに飲んだけど、きっついねあれ。アホほど飲んでた時期が懐かしい。
そしてゲイにはどんな人がモテるのか、という話になる。即答で答えてくれた。ゴリマッチョが好きらしい。だから体を鍛え上げる人が多いらしい。あと、すぐ上半身を脱ぎたがる、見せたがる。言われてみればそうなのかもなあなんて思った。
そしてここから混沌な時間が始まる。
同棲とかの話になり、恋愛についてなんやかんやと話した。そしたらピロさんに言われる。「佐藤健に似てるあなたは、なんだかんだ文句を言いながら家事を一人でやってしまうタイプね!」と。
まず佐藤健に似ていると言われたのが久しぶり。でも前は結構言われた、思わず笑った。あと、亀梨に似てると自己主張。お酒が入って気が大きくなる自分。
そしたら「あなたは光GENJIにいそうなのよ!諸星とか、一昔前のそっち系なのよ!」となぜか力説される。あとから来た彼も、あー、わかるー。みたいなね。
あーなるほど、そりゃおばさんとかおじさんにモテるわ。と、何故か納得した。ゲイの見る目、おそるべし。
あと家事についてもそうだ。自分も甘えたいけど甘えられたいタイプ。なんだかんだ世話を焼いてしまうタイプ。初対面でこんなに人を分析してるゲイすげえ。場数が違うんだろうなぁとまじめに尊敬した。
そして、最近女の子にフラれたんすよと言ったら、じゃあとりあえずヤッてみる?とか言い出す。いや、あのさぁ…(笑)
そんななか、自分がゲイにモテるのか後から来た彼に聞いたら、「あんたは某ブサイク女芸人(名前は伏せさせてください)に咥えさせてと言われたら、する?」
いや、ムリですね…と答えた。
「でしょ?あんたはゲイから見てもそうなのよ。」
撃沈。
ゲイにすらモテないことが判明。先日好きになった女の子にも振られ、なぜか今宵は告白もしてないのに勝手にゲイに振られた。
そして後ろのほうでは、「ポンくん、助けて~っ」と必死の声を荒げながらピロさんにガッツリ唇を奪われてるY君、爆笑しながらそれをiPhoneで撮るM子。
もう、なんか、いろいろカオスだったわ…
現代の若い女の子にも、ゲイにもモテないことが分かった渋谷の夜だった。
また遊びに行こう。
おわり。
2018年とある日の休みのできごと
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