同巡内フリテンに関する考察
1月13日、Mリーグの試合にて鈴木大介選手が所謂「同巡内フリテン」のルールにより反則を取られ、チョンボが発生しました。
一般的なフリテンではない、少々特殊なケースのフリテンであり、私もわかっているようで細部を詰められていない知識であることから、あらためてこのルールを掘り下げてみようと思います。
ルールの概要
これは、ざっくり言うと「非リーチ時において、自分のターンが回ってくる間に、一回待ち牌を見逃した場合(見逃した牌は役有り・役無しを問わない)、自分の次の手番が回ってくる間はロン和了の権利を失う」というルールです。これを、一般的には同巡内フリテンと呼びます。
では、ここではっきりしておかないといけないのは、「どの時点で同巡内フリテンが発生し、どの時点で解消されるのか」という所を明確にしておかなければプレーに支障が出てしまいます。そこで、次項からMリーグルールをベースに考察してみましょう。
考察
まず、そもそも「同巡内フリテン」とは何か、その定義を確認します。
これは競技規定第5章第5条3.にて、定義されています。
では、競技規定第5条3.を確認していきましょう。
・「摸打の一巡」(第3章第7条参照):後ほど考察
・「自己の和了牌」:競技規定第5章第1条1.に規定する自己の手牌においてアガリの形式を満たす全ての牌となります。
ここで重要なのは『アガリの形式を満たす全ての牌』とは、役有り・役無しの区別を付けておらず、前述の競技規定第5章第1条1.に規定されている牌の全てを示していることです。
→よって、役なしの牌でもアガリの形式を満たすことは可能であるが、競技規定第1章で役なしは和了出来ないと規定されているため、形のうえではアガっているが、役がないため和了の宣言ができないということになります。
この自己の和了牌(=役有り・役無し問わず、アガリの形式を満たす全ての牌)が出たにもかかわらずロンの宣言をしなかった場合は、フリテン(同巡内フリテン)が適用されることとなります。そして、このフリテンの縛りを解消するには、「自己の摸打を経て解消される」とあるため、冒頭の「摸打」の定義ならびに、「摸打の一巡」の定義を明確にしなければなりません。
このキーワードを明確にしているのが、競技規定第3章となっているので、この部分を読み解いていきます。
競技規定第3章第7条に、競技のルール上の摸打の行為の定義が定められておりますが、読んで字の如く「自摸から打牌までの行為を指す」とあるため、『山から牌をツモって、自己の手牌から1牌捨てる行為』が摸打の定義です。
そして、同巡内フリテンの一番の肝である「摸打の一巡」は同条2.『自己の打牌から次回の自己の取牌直前迄とする』とあることから、これを実際の競技行為に落とし込むと『自己の手牌から任意の1牌を打牌した瞬間に摸打の一巡が開始となり、そこから相手方の手番を経て、次の自分の手番が回ってきて取牌する直前で完結する』ということになります。
ここでもう一つ、キーワードが出てきます。「取牌」です。
その名のとおり牌を取ることですが、これも競技規定第3章第6条にて定義が定められており、取牌にあたる行為は『ツモ・チー・ポン・カン・アガリ』の5つと示されています。
これらを踏まえて、先ほどの競技規定第5条3.のフリテンに関する競技規定を読み替えていきます。
3.「摸打の一巡」(第3章第7条参照)の間に、自己の和了牌が出、その牌でロンをしなかった場合、フリテン (同巡内フリテン)となる。同巡内フリテンは自己の摸打の完了を経て解消される。
【読み替え】
自己の手牌から任意の1牌を打牌したときから、直後の自己の取牌行為(ポン・チー・カン・ロン・アガリのうち1つ)までの間に、役有り・役無しを問わず、自分の手牌のアガリ形式を構成する全ての牌のうち1種類が出て、その牌でロンをしなかった場合、フリテン(同巡内フリテン)となる。
同巡内フリテンは、自己による取牌行為(ツモ・チー・ポン・カン・(アガリ))から、手牌から任意の1牌を打として解消される。
ここで、疑義があるのは同巡内フリテンの状況で、自己がポン・チー・カン等の副露行為を行った場合、同巡内フリテンが解消されるか?というケースです。
競技規定上「自己の摸打の完了を経て解消される」とあり、「摸打」とは自摸から打牌までの行為を競技規定で定めていることから、副露行為はツモ行為ではないため、解消されないのではないかと思われます。
しかし、結論から申し上げると、同巡内フリテンの最中の副露行為を経ると同巡内フリテンは解消されるものとなります。
実際の競技行為に当てはめてみましょう。
1.自分の手牌が聴牌となり、リーチをせずに手牌から聴牌となる1牌を打牌します。(摸打の一巡の開始)
2.直後下家からロン牌が出ますが、ロン宣言をせず見逃します。(同巡内フリテンの発生)
3.その直後、自己の対面から再びロン牌が出ますが、当然ロンができません(同巡内フリテンの適用)
4.その直後、自己の上家からの打牌に対して、副露を行います。(例えば234567からの8チー等)
→チーは取牌行為。即ち、1.で開始した摸打の一巡がこの時点で完結=同巡内フリテンが解消
5.副露行為の後、手牌から1牌打牌する。(新たな摸打の一巡の開始)
このプロセスから、副露行為を行っても競技規定上何ら問題なく同巡内フリテンが解消されることが分かります。
また、同巡内フリテンの解消は待ちの変化の有無は問わず、例えば上記の様に食い伸ばしにより待ちの種類に変化がない場合でも、重要となるのは摸打の一巡が完結しているかどうかという点であるため、待ちが変わるか否かはさほど重要ではありません。
結び
今回は、Mリーグの競技規定の読み込みと解釈から一つのルールを深掘りしてみました。
なかなかレアなケースですが、深く考えることも少ないニッチな取り決めであるため、正しい麻雀ルールを身に着けるためにも色々なルールを調べていくと雀力の向上、正しい知識でのプレーに役立つと思います。
リーチをかけていない状態で、役有り・役無し問わず、アガリ牌を見逃したら、次に自分がツモってくるか、自分がポンやチー・カンの副露をしなければフリテン状態となる。
これだけ、覚えておいて麻雀のプレイの参考になればと思います。
乱文雑文のなか、最後までご覧いただきましてありがとうございました。