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イチローの愛弟子のJulio Rodriguezが今年どうして不振だったのか
Marinersは8月中盤になっても全く打てなかった。
8月21日時点でWhite Sox(チーム史上最悪の121敗のチーム)の打率が.219だったが、Marinersは.216とそれを下回るほど打てなかった(打率30位/出塁率26位/OPS28位 得点27位 三振30位/四球5位)。MarinersはPO狙い圏内ぎりぎりの66勝66敗。なぜMarinersが借金していなかったのかが不思議であるほどに打撃が終わっていた。
この責任を求めてScott Service監督とJarret DeHart打撃コーチが退任、Dan Wilson監督とEdgar Martínez打撃コーチが就任した。その後、打撃が嘘のように改善(打率8位/出塁率4位/OPS4位 得点6位 三振19位四球2位)して、21勝13敗でワイルドカードを1勝差で逃すことになった。
この打撃の改善の立役者はJulio Rodriguez(通称J-ROD)だった。
なぜ打てなかったのか?MarinersのJarret DeHart打撃コーチの2024年の方針と絶望的にあっていなかった。
その話を軸にして今回は話していきたい。
Jarret DeHart打撃コーチとはどういう人物か?
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Jarret DeHart打撃コーチの経歴
大学野球を経験後ドラフトにかかることもなく、マリナーズの組織に入る。
2018年の24歳の時にMarinersのルーキーリーグのコーチを務める。
2019年の25歳にはマイナーリーグの打撃戦略コーチに就任。
2019年11月7日の26歳にはMarinersのアシスタント打撃コーチに任命された。
2021年11月15日の27歳にはMarinersの打撃コーチ兼打撃戦略部長に昇進した。
2024年8月22日の29歳のDeHartはScott Servaisとともに解雇された。
2025年1月9日の30歳のDeHartはにYankeesの新マイナーリーグ打撃コーディネーター就任。
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DeHartを一言に直すなら打撃指標のスペシャリストの若きエリート
大学野球の成績も出塁率と長打率を上げた感じで、自己の打撃指標も大事にしているのがわかる。
上記のようにマリナーズの育成や獲得する選手に大きく関わっており、2021年オフ~24年のMarinersの野手補強と21~24のドラフトの野手獲得にも携わっている。最近のトレードの失敗も実は…(この件はまた違うところで)。Mariners退団後にYankeesマイナーリーグの打撃コーディネーターを与えられてるところから非常に優秀な人物。
トップ選手の調子維持や打撃力向上はできないが、Mariners時代にあまりにも大改革を成功させており、マイナーレベルの選手の振り分けや素材の見つけ方は素晴らしく評価は落ちていない。将来GMもありそうなレベルでエリート街道まっしぐら。
フリオの調整の仕方と打撃指標を推すやり方の問題点
フリオの不調の話 (←URLあり)
J-ROD「調整に関しては主に私にやらせてくれました。今までのコーチ陣は、私が打撃の感覚が本当にあること、それが私にとって自然なこと、私がやるべきことをわかってくれていました。…」
基本的に自分の感覚を軸に打撃を調整する選手であり、打撃指標に関しての考えについては…
J-ROD「打撃指標がいいことに越したことはないですが、私が考える方法は『その日、自分がチームの勝利にどのように貢献したか』です。
データが必ずしもそれらのことを反映しているとは限りません。多くの人が、試合で本当に重要なことから目をそらしているように思います。
私が考えるのは、『自分が試合にどう影響を与えて勝利に貢献したか』です。三塁に選手がいて、私が少し外側の球を追いかけて、犠牲フライを打つことで得点できました。
私個人としては、良い球にスイングすることよりも、ケースバイケースの打撃が重要な場合があります。」
の話を頭に入れながら、DeHart打撃コーチの退任前と退任後の成績を見てみましょう。
DeHart打撃コーチの退任前と退任後の成績
退任前 451AB 11HR .260/.310/.675
⇒退任後 162AB 9HR .313/.364/.902
BABIPは打撃指標指標、wRC+はリーグ打撃傑出度を評価指標
退任前 BABIP.341 wRC+101 BB5.0% K27.1%
⇒退任後 BABIP.349 wRC+159 BB8.0% K 21.0%
打球の上がり方…LD(Line-drive)ライナー・GB(ground ball)ゴロ・FB(Fly ball)フライ
退任前 LD 20.8% GB 48.3% FB 30.9%
⇒退任後 LD 20.0% GB 33.9% FB 46.1%
打球の方向の内訳…Pull~引っ張り・Cent~センター返し・Oppo~流し打ち
退任前 Pull 34.9% Cent 40.3% Oppo24.8%
⇒退任後 Pull 37.4% Cent27.0% Oppo35.7%
打球速度…Soft 弱い Med 強い Hard (95マイル以上の強い打球速度)
退任前 Soft15.4% Med 49.0% Hard 35.6%
⇒退任後 Soft 11.3% Med 49.6% Hard 39.1%
Rodriguezは元々夏場に強い選手だがそれにしても春先が打てなかった。その理由をチーム事情から話していきたい。
23年のMarinersは.242/.322/734(MLB22位/15位/16位) と悪くはなかったが、SO1603(MLB29位)と優勝を目指すチームとしては最悪の数字を叩きだしたことが問題だった。
POに勝つために”三振を減らして四球を増やし強い打球を打つ”というのを24年目標が掲げたが、これが2024のMarinersを追い詰めることになる。
どうやって最悪な状態になったのか
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一番の被害者はJulio Rodriguezだった。
三振を減らそうとしようとすればするほど、フェアゾーンへの打球が減り、四球は増えず三振は増えた。
これがなぜ起こったのかというと、Julioの絶好球の早打ちが減った事と審判の際どい球のストライク判別が多くなった事が最大の理由とされている。
早打ちを少なくすることはボール球を振らない要因にはなるが、投手は攻めやすく安易なストライクを入れることができた。
待つことは三振に対してプラスにもならないことも多く、三振が多い打者が見逃したとしても際どい球を審判はストライクとコールされがちでかえってカウントが悪くなるのだ。
その結果J-RODは打者不利カウントで待つ事が多くなり自分のスイングしずらくなってしまい、最後は低めの外のスライダーで三振してしまうのだ。いくら低めの外のスライダーが弱くても待ってる時のカウントでボールをストライクと言われるから、明らかな外れたスライダーにも身体が反応してしまうのだ。
フェアゾーンに打てたとしても打球は上がらずゴロになるばかり、Hard Hitも減った。そもそも退任前と退任後のBABIPが.341と.349とヒット能力に関してはあまり変わらなかったので打席の向かい方に問題があったのは明確である。
BABIPは三振が多くなると打数を減らす要因になるため、BABIPを合わせて説明した。BABIPを扱うときは三振率の差があるときには注意すべきなのもあわせて注意したい。
Julio Rodriguezは何を得たのか
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・不利カウントでのバットスピードが上がった。
明らかに迷いが消えたと言ってもいいほどで、Fastball系Breaking系Offspeed系の変化球に全てに対して、年で一番いいバットスピードを出している。78マイルのバットスピードはわかりにくいと思うが、このマイルの平均出せる唯一の打者はStantonだけでどれだけ速いかわかるだろう。
不利なカウントでバットスピードが上がるということはボールを待てるということにも繋がり、BB 5.0→8.0% K 27.0→21.0%と皮肉ではあるがDeHart打撃コーチがやりたがっていたことを達成した。
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2024年の打者有利カウントのJ-RODのバットスピード
・有利カウントでは最後の月に3つの変化球別全て78マイル近く出している。夏場というものがでかいと思うが、上で話した自らの感覚の調整がうまくいったために安定したと思われる。
Julio Rodriguezの課題と"オールスター選手"から"スーパースター"になるためには?
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J-RODの変化球別の部分を見ていきたい
Fastball: 4 Seam, 2 Seam, Cutter, Sinker.
Offspeed: Split, Change, Fork, Screw.
Breaking: Slider, Curve, Knuckle, Sweeper, Slurve, Other。
Fastball系のボールに強くて、Breaking系のボールをどうにかするのがJ-RODの基本的な打撃スタイルだ。
打球の質の指標はxwOBAという指標(詳しくいうと若干違う)でみるが、J-RODは四球が少なく打率が高い選手なので、四球が多い選手や長打率だけが高い選手のxwOBAよりも試行回数が増えてかなり実力を反映されやすい。最近3年だとxwOBA.352~366 80~90スケールが優秀な値となるので、J-RODはこの値を参考にするといい。
SS賞を獲得した2022年と2023年、絶不調の2024年から傾向を見てみよう。
Fastball系BA(打率)は.300 xwOBA.350がJ-RODの軸だ。
2023年の6月(.220/.291/.621)と2022年の8月(.240/.288/.701)の絶不調の時期はBA.245 xwOBA.283とBA.218 xwOBA.280でとにかくFastball系が打てないことで調子を崩している。2024年を見てみるとFastball系が極端に落ちる月はなかったので成長を感じるが、Breaking系Offspeed系は絶望的な数字が多い。FastBall系が爆発した月はいずれもBreaking系を打てている。Breaking系の変化球の空振り率が33.3%前後なのでFastball系をよく打ってる時にBreaking系の3球に1回空振りしている感じだと調子のいいバロメーターになる感じ。
全体を通して、春先は三振が非常に多い。夏に向けて軸のFastball系の空振りが減り、三振がかなり減る。先ほどのスイングスピードを見るに体重によるものが大きいが、有利カウントは変わっていないので、判断速度の鈍りと言い換えた方が良さそうだ。
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Edgar Martínez打撃コーチとブレーブスから来たKevin Seitzer打撃コーチと愛弟子のBobby Magallanes打撃補助コーチともに、自己の感覚を大事にした、現代の指標主義と反しているJulio Rodriguezの成長を追っていきたい。
”99%投票でMLB殿堂入り”を果たしたイチローの愛弟子というものから、いつか対等になるようなMLB殿堂入り選手になることを望んでいる。
今期の予想 .280/.350/.850 35HR100RBI 35SB WAR6.0
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94マイルを出し、50歳代の始球式最速記録を出している。