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サブカル大蔵経597佐々木克『幕末史』(ちくま新書)

私は薩摩と長州の主要人物が倒幕を目標にしていると言明した史料を目にしたことがない。p.253

倒幕の無い〈会議〉の幕末史。薩摩の島津久光と大久保利通のラインから見た幕末のグランドデザイン。

豪腕の慶喜、呑まれる朝廷、そして大西郷。友を見限り泥沼を漕いで行く大久保。カッコよすぎか?

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幕末の篭の時代からわずか10数年で汽車の時代となる。世界でも類を見ないスピードで近代化を達成した。p.19

 たしかに、大河ドラマの渋沢栄一もこの後パリ滞在ですもんね…。振り幅大きい。

久光は広い大局観に基づいて現実を直視し、冷静に状況判断していた。そしてまだ視野が狭いが人材と認める大久保利通を忍耐強く説得に当たっていたのである。遠く離れた鹿児島で幕末政治の主役となる2人を確かな絆で結びつけていた。p.68

 久光主人公。

三条実美25歳ら若手中心13人が、岩倉具視が和宮と家茂の結婚の際に朝廷の機密を幕府にも出したとする弾劾文を提出。強硬論三条は蟄居。/天皇が久光に姦人を掃除したいと。その姦人とは三条ら四人の議奏。p.86.115

 岩倉を襲うパンク三条、天皇に嫌われる。

天皇は我慢の限界に達していた。そしてついに天皇は強硬論者を朝廷から一掃することを決意して久光に協力を求めた。p.108

 頼られるの久光。孝明・久光ライン。これが明治・大久保ラインに変わるのか。

公武合体と尊攘派は分けれない。/幕末は政党政治の世界ではない。/…派という言葉を忘れてほしい。p.123.124

 著者の提言。今の視点で考えるな。

天皇から久光への手紙「暴論家が王政復古を唱えているが、自分は将軍に大政を委任して、公武が手を取り合い和熟の治国となるようにしたいが、どう思うか。」p.133

 逆大政奉還か、ダチョウ的譲り合いか。その、上のユルさを下に突かれたのか。

慶喜はできもしない攘夷を約束し、朝廷を説得。慶喜は手のひらを返して久光から天皇と朝廷を取り戻したp.139

 久光の前に現れた敵役慶喜。

慶喜がいなかったら世は暗黒となったことだろう、と天皇が語ったことが会津藩の記録に見える。天皇の慶喜に対する信頼は不動のものとなった。p.157

 天皇は、薩摩から慶喜へ心変わり。

関白は会議で勅許再検討を提案するが、慶喜に辞任すると恫喝される。/慶喜は脅しつつすかしつつ弁論を尽くした。朝彦親王は、慶喜の言動を、甚だ不埒、憎むべしと記している。慶喜の剛腕が朝議を圧倒していた。p.191.194

 慶喜の〈恫喝〉〈剛腕〉という響きが、本書では一番印象的でした。

大久保は朝彦親王に、勅命に従わなかったということで長州は朝敵になったが、いま諸藩が非義の勅命に従わなかったら朝廷の前後左右みな朝敵になるが、どのようになさるのか…と問い詰めた。/薩長誓約は龍馬がこの手紙を廣澤に伝え、手紙の内容と薩摩の趣意を詳しく説明したことが出発点。この大久保の手紙のポイントは、長州征伐の勅命は非義、勅命とは認めないから従わないと明言したところ。間接的に天皇批判にもなるから極秘。p.190.200

 長州をかばう大久保。龍馬は伝書鳩かフィクサーか。

大久保は言い訳に終始する関白邸を出るときに、「朝廷これ限り」と言葉を返して去った。大久保そして薩摩は、ここでついに朝廷・公家に見切りをつけた。/このままでは再建どころか日本が倒れてしまう。p.193

 大久保ひとり、日本のために、幕府だけでなく朝廷も見限った瞬間。

おそらく天皇と朝廷にまだ大きな期待を寄せている長州に実態はこうだと告げて、もはや朝廷と幕府は日本再建の柱となりえないと打ち明けていた。p.203

 長州も巻き込む。これが容堂土佐との訣別か。

将軍就任二十日後、孝明天皇急逝。p.232

 これが実は幕末最大の転換か?

新政府創案、薩土盟約こそ主流。p.249

 鹿児島と高知のデザインする日本。

慶喜残す土佐容堂と、慶喜排除の薩摩西郷の方向性の違い。p.255

 西郷は慶喜に何か不信を抱いていたのではないか。

木戸、龍馬と長崎で大酔不敬の会。大政奉還劇、板垣と西郷に期待。p.259

 桂と龍馬の無礼講呑み会。

若年寄永井と会い、薩摩と土佐に任せれば可能と伝えた龍馬、翌日遭難。p.275 

 龍馬藩士、龍馬。

龍馬の死に大久保、新撰組の仕業と激怒。p.278

 大久保黒幕説もあるが。

密接に連絡取り合う薩摩と土佐。p.279

 土佐の動きこそ幕末を動かしたのに。

日本の将来のため、宿敵のような慶喜と大久保にも、共有。p.290

 幕末はこの二人のライバル物語だった。

本願寺津村別院で大久保利通が天皇の面前で京都の状況について報告した。p.296

 歴史的な対談の舞台が津村別院。

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永江雅邦
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