サブカル大蔵経891昼間たかし/鈴木ユータ『これでいいのか 北海道まちの問題編』(マイクロマガジン社)
愛読しているマイクロマガジン社の地域批評シリーズに、ついに北海道編登場です。しかも、二巻本で。
札幌だけが発展しても、周辺、つまり北海道全体に活力がなければ、いずれ札幌はもっとひどい形で崩壊することになる。/今はまだ、札幌は北海道を管理する拠点でしかないのである。もっと厳しい言葉を使えば、自分だけではやっていけない街なわけだ。p.310
いつも通り地元のガイド本には絶対載らないような辛辣な文章ですが、地元の書店で山積みで販売されていて驚きました。他の街の悪口だけ読みたいのかな?^_^
「まちの問題」編は、街のコピーが秀逸すぎます。
「地域の中心になりきれない函館」(p.28)「北海道は道東に頼るべきだ!」(p.42)「札幌市は道民を吸収し続けるドラキュラか」(p.60)「死ぬほどやる気のなかった岩見沢」(p.118)「狂ったように栄えた製鉄の街」(p.132)「北海道ナンバーワンの犯罪都市」(p.136)「夢だけで走る長万部町」(p.179)「観光地として成熟する松前」(p.188)「得体の知れない函館ラ・サール」(p.194)「マフィアが跋扈する北の無法都市」(p.200)「地元民も使わない留萌本線」(p.216)「藤圭子の歌声が街の雰囲気」(p.234)「大学教授も認めた『住みやすい街』」(p.271)「実は平和で安定している網走」(p.286)
帯広がばんえいのみだった以外は出色の詳しさで嬉しい。特に室蘭と苫小牧が最高。
ともかく札幌さえあれば何でもいいのである。p.23
たしかにその意識。今までは札幌に磁力があった。でも、オンライン会議や通販サイトで全国と繋がるようになると…。誰も札幌に行かなくなるのでは…?
2020年に至り、小樽市はついにまちづくり指針「第二期総合戦略」で札幌のベッドタウン化を打ち出した。p.110
札幌のライバルというプライドが小樽を支え、追い詰めた北のウォール街。今でも郵便局の振込先の本部は小樽局です。
なにせ人口16万人に対して、最盛期でキャバレー5軒、バーとクラブが430軒。料理屋35軒。そのほか飲み屋を含めると1000件である。1970年代までは3軒に1軒の家には水商売の娘がいるといわれたし、内地のように色眼鏡で視られることもなかった。p.132
道内他地域はこの室蘭を知らない!
市の方針は自分の身は自分で守れということか。なんか、開拓時代のアメリカ西部みたいだ。p.136
駒苫の香田監督を追放した苫小牧の因果
自治体関係者が結成した青函・みなみ北海道連絡会議は2016年だけで消滅という体たらく。もはや青函で盛り上がろうという雰囲気などない。p.167
青函という言葉の永遠の幻。
コインロッカーもない駅で唯一輝くのが、立ち食い蕎麦屋だ。p.217
そして留萌駅が残った。
今は跡形もないが忠別川の忠別橋のたもとあたりには大正時代ごろからスラムがあった。北海道ではこうしたスラムを「サムライ部落」とか「厚生部落」と呼んでいた。旭川のスラムは戦後、引き揚げ者も住み着き拡大した。旅回りの中で、そんなところへ流れ着いたのが藤の一家であった。p.235
私の親の世代まではあるスラム、引き揚げ者、ヤミ市の記憶。藤圭子と宇多田ヒカルの母子の背景。
「中でも旭川はさ、デカいわりに札幌よりも他県との交流が少ないから組織がすっごく閉鎖的なの。」p.244
この一年、コロナと医大と凍死事件で、また旭川か…とブレイク。自分を含めた市民が自分の街を知る機会になるか。他の人の視点からでしか気づけません。原武史さんの『線の思考』を教科書に…!