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サブカル大蔵経513東海林さだお『メンチカツの丸かじり』(文春文庫)
ハムカツとメンチカツとどちらが偉いか。ハムカツはコロモのところからハムがちょこっと顔をのぞかせたりしていて愛嬌がある。そういうところがないんですよね、メンチカツには。ひたすら無表情。それにメンチカツにはコアがない。コアのないメンチカツを構成しているものは何か。挽き肉です。ほとんど全域が挽き肉。合い挽きという肉の集合体。肉の寄り合い所帯。集まるべき必然性のない雑多なものの寄り集まり。p.206
活字遺産レベル。
メンチカツはメンチカツなりに、地味な努力、真面目な精進を常に怠っていないのに、そのことがいっこうに報われない。断面図を見たことがありますか。ヒシと寄り集まって団結している無名の肉たち。p.208
メンチカツを、内面まで描写した文章は未来永劫ないでしょう。
そこに廃墟があった。p.13
すき焼き鍋を廃墟と表現する凄さ。豪華なのに、食べた後、目の前にある廃墟感。なべ料理の諸行無常。
お餅は踊る。餅がいじらしい?p.41
プクー。動画的食べ物。
ビーフジャーキー立ちはだかる。p.67
すごい題。柔らか全盛の中、固さ追求。
ぼくがクッキーの箱を開けたときにいつも感動するのは、クッキーたちの収まり具合である。p.76
四方八方、姿形も違うのに、見事。
そのころ角砂糖の地位は高かった。角砂糖には専用の容器が用意されていた。p.87
たしかに…。中身より、あの容器が、喫茶店と家を分かつシンボルだったような。
飲食店のテーブルの上の「あれ」。牧場の柵みたいなもので囲んでいるあれです。p.111
牧場の中は、爪楊枝、醤油、胡椒入れ。
いまだ凍土のバター。p.153
京都で食べたバターは柔らかかった。
人類は狂喜した。人類はそのとき初めて焦げ目を目にした。p.165
焦げ目と人類
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