サブカル大蔵経168『サブカルチャー世界遺産』(扶桑社)
真面目な資料。ロマンがサブカルそのものと看破した町山智浩インタビューもあるし、みうらじゅんと中森明夫のプロレスも糸井重里の影も垣間見える。その先輩方を疾走した町山智浩。それを照射する吉田豪か。分野別では、映画、漫画、アニメ、ゲーム、AVなど。
サブカルを語ることがもう遺産的行為なのかもしれませんが、そこに仏教を絡めていけないかなぁと夢想します。天皇や貴族や武士を降りた人たちが、国とつながる官僚的・公務員的な存在から逸脱した僧侶となる時代は、サブカルチャー的なうねりだったと思います。
歌謡曲やプロレスなど下世話文化を高尚に語るのが、80年代サブカルのはしりだった。p.16
平安末期の後白河法皇の『梁塵秘抄』と重なる。山口百恵を語る平岡正明。プロレスを語る村松友視。少女マンガを語る橋本治。いつの時代も語り手がジャンルを顕して、サブカルチャーのうねりを生んだのではないでしょうか。語っていいんだ、いや語るべきだと。
糸井は資本にとりこまれた!と非難されてた。もともとは中核派の特攻隊長をしていたバリバリの反体制的人物が、西武のコピーライターとして大活躍するという。で、90年代になったら、みんなとりこまれた(笑)p.17
語られる糸井さんからは「隊長気質」が感じられます。軍隊のような、芸人のような。
町山智浩。宝島水滸伝。漫画家になりたかった。ヤンマガ欄外一行知識やケイブンシヤ大百科シリーズ編集、渋谷ニューウェーブ、パルコビックリハウスは盛り上がっていた。出遅れた感ありました。その頃宝島はバイトに石丸君、編集部サロンに松沢、田尻くん、永江さん、馳くん、白石さんが書評。川勝さん、江戸木さん、青山正明さんが出入り。みうらじゅんさんが、可愛がってくれて、家で内田春菊さん、まついなつきさん、手塚能理子さん。お昼ご飯、泉麻人さん。私はバカ町山とさんざんおもちゃにされた。右翼の本からおたくの本。中村太。裸の自衛隊、プロレスに捧げるバラード、いまどきの神サマ、宝島30、根本敬さんと村崎百郎のゴミ漁りに同行。電波系。洋泉社に出向。トンデモ本出して立て直し、映画秘宝。平山夢明。96年パイ投げ事件。p.214
町山さんの可愛がられ方を見ると、個人の特質もあるけど、サブカルは環境だったんだな、とも思えます。そして「出遅れた」からこそ、突き抜けたのでしょうか。
サブは横じゃなくて下。サブマリンのサブ。アンダーグラウンド。p.215
私のサブカルチャーの先達たる親友が、名刺に「孤底の人」と書いてあったのを思い出しました。
竹熊。90年代はなかった。p.252
竹熊健太郎さんも、サブカルに殉じた感があります。今でもTwitterでの見立ては鋭敏です。