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サブカル大蔵経709「クレア」1992年9月号(文藝春秋)
1992年9月号の「クレア」(文藝春秋)。女性誌で当時珍しかった少女マンガ特集。この頃は〈少女マンガ〉の文字を見ると何でも飛びついて買っていました。
〈夢の永久保存版〉〈永遠の少女マンガベスト100〉。30年後に再確認にきました。
当時の文藝春秋は、文春ビジュアル文庫でジャンル別のマンガランキング本を出していましたが、アンケート対象の年齢層が高めで、自分たちの世代とはギャップがある感じでした(そのおかげで過去作品の発見もありましたが)。
本書の〈大アンケート〉も、主に業界人へのアンケートです。しかも約半数は回答拒否!誰に断られたのか気になります。逆に回答した人はガチの人が多いのかも。今までのアンケートよりは同世代も含まれていそうです。
マンガ好き業界人に絞っての点数付けアンケートは現在でも季刊誌「フリースタイル」の年に一度の企画〈このマンガを読め!〉に受け継がれています。
この特集巻頭ページのレイアウトは、松田奈緒子『少女漫画家』の表紙を思い出します。
この名作によって一人一人の〈人生と少女マンガ〉が描かれ、少女マンガを語ることの環境が認知されたと思います。
本書の解説は、故米沢嘉博さんでした。
1〜20位。『ポーの一族』圧倒的得票数。
メッセージ欄には、秋里和国、岩館真理子、おおや和美、田渕由美子、成田美名子、水樹和佳ら後輩漫画家たちの感嘆が寄せられていました。
山岸凉子へのメッセージ欄には、もたいまさこ、川西蘭、久間十義などバラエティ。
萩尾望都インタビュー。『ポーの一族』の続編への期待について
いえ、もう終わりです(笑)未来へ物語は続いているんですが、もう描けないでしょうね。私の絵柄も変わってしまいましたしね。だから読者から「続きが読みたい」っていわれると、「どうぞあなたが描いてください」って言うんです(笑)描きたい方がいたら、自由に続けてくださればいいと思ってます。もう描かないといいますと、じゃあ私の中でもう完結して終わってしまったのか、そう聞かれますけど、そういうんじゃないんです。作家とキャラクターというのはとても密接な関係なので、"終"って字を事を書いても、そのキャラクターはずっと頭のスミに住んでいるんです。p.82
山岸凉子インタビュー。
マンガ家になってから、画集で聖徳太子・二十五皇子の昇天図を見つけて、ええっ、なんでこれだけの数の皇子がいっぺんに死ぬのって。それで、やっぱり聖徳太子ヘン!という気持ちを強めたわけです。p.84
そして友人との酒の席で、梅原猛の『隠された十字架』を勧められて読んでみたら、
それでさっそく読んでみたら、もうゾクゾクゾクーッと来ました。やっぱり私の思った通りの人だったんだと。それからいっぺんに世界が具体的になって、あの聖徳太子像が完成したわけです。p.84
『一度きりの大泉の話』で会話のシーンがたびたび挿入されていた萩尾望都と山岸凉子の二人がツートップです。
ベスト10唯一の連載中作品で、7位に『動物のお医者さん』の快挙。佐々木倫子は高校の先輩で、在学していた大学が作品の舞台だったので、不思議な感じでした。当時でもすでに名作の雰囲気漂う堂々のランクインだと思いました。
21〜50位も歴史的名作揃い。その中での『河よりも長くゆるやかに』の健闘。
51〜75位は、過去や現在のシブい名作揃いの中で『うわさの姫子』登場。リアルタイムで子供の頃から読んできたので嬉しかった。あさりちゃん、パンクポンク、姫子という学年誌での少女マンガの英才教育。
100位が『あさきゆめみし』というのも贅沢なランキングです。50位以下の大島弓子乱れ打ち。短編作品が良すぎて分散してしまうのはわかります。〈少女マンガとは大島弓子である〉と言ってもいいのかも。
一般的な知名度の高いこの2作よりポーと日出処が上だったアンケートの衝撃。5位はリボンの騎士でした。今までの文藝春秋のマンガランキング本では年齢層が高く、のらくろとかが上位を占めてました。逆にどちらにも登場するオールタイム手塚治虫のスゴさを再認識します。
作家別だと1位は大島弓子。推薦文はもちろん谷山浩子。ニャンニャンしてねーのANNが懐かしい。楳図かずおの推薦文は井田真木子!川原泉と坂田靖子のベスト10入りも当時は嬉しかった。
このランキングの中で異彩を放つ『おしゃべり階段』。〈クレア世代の青春白書〉!超人の中のジェロニモのようです。
「アンケートのとれない作家」と自虐していた竹宮惠子ですが『風・木』がベスト20入り。執筆時悩んでいた『ファラオの墓』や『空がすき!』もランキング入り。
『エロイカ』を見ると何故か安心します。
美内すずえから見た萩尾望都、山岸凉子、木原敏江らが語られています。特に『11月のギムナジウム』の背景の正確さと、セリフの自然さを絶賛しています。
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