サブカル大蔵経785庄野潤三『プールサイド小景・静物』(新潮文庫)
第三の新人と呼ばれた作家。阿川弘之、安岡章太郎、遠藤周作、吉行淳之介は、エッセイや短編を読んだことがあるのですが、
小島信夫、庄野潤三、島尾敏雄、小沼丹…
は、今まで読む機会がありませんでした。読んでみるともちろんそれぞれ個性がありますが、皆共通して現在の社会に通ずる描写が多い気がしました。現代の小説より現代を描いているような感触を覚えました。
大正までは遠い別の世界。そして、戦争を挟んで、現代の諦観的な世界はここから始まったような。
まず、庄野潤三。
「下宿してる人みたいね」p.20
本文庫では、三期にわかれた小品を一冊にまとめているとのことですが、初期作品の「舞踏」が柳沢きみお的で好きでした。家庭に帰宅しても下宿しているような感覚。それを妻に指摘される夫。『瑠璃色ジェネレーション』でこんな台詞なかったカナ?
どうでもいいことは、全部さらけ出したかのようにしゃべる。そして、それらの背後に、男が針の先もふれないものがあるのだ。メデューサの首。彼女はそれを覗き見ようとしてはならない。追求してはならない。そっと知らないふりしていなければならないのだ。夫に「何か話をして」と云い出した時には、彼女は夢にも思っていなかった。(「プールサイド情景」)p.66
こう見ると柳沢きみおの作品では一つの場面で男性と女性、双方からの心理描写場面が少ないか。逆に庄野潤三の個性なのか。
最後に逆さにして振り廻したのは、全く考えも何もなしに無茶苦茶にやったことであった。p.141
考えもなしにしたことが結果を出す。
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