サブカル大蔵経500『全国鉄道地図帳』(昭文社)
「地図屋が作った〈本気〉の鉄道地図帳」とHPで宣言した地図帳ですが…、これは日本の亡霊マップです。
もちろん現在の観光旅行のための地図帳としても使えます。しかし編者の視線は、その観光の背後にある過去に向けられています。今に至るまで、日本が捨てた線路をくまなく探し、刻印した、地図帳の名を借りた怨念の書が、令和の世に誕生しました。
こんなに多くの線路が廃止されてきたのか…。冒頭の文章や地図凡例が、グッときます。
《廃止路線》
本誌の地図には、戦後日本の発展を支え、消えていった多くの鉄道路線が描き込まれている。地図ではただ1本の黒い線ではあるが、その路線が結んだ町や村、運んだ多くの人やモノ、線路に託した人々の夢や希望を想像しながら、鉄道が輸送の主役であった時代を辿ってみよう。p.4
1赤字ローカル線
2炭鉱の鉄道
3貨物専用の鉄道
4役目を終えた鉄道
5夢を見た鉄道 p.5
絶景ポイントの説明には「席の移動や指定席を選ぶ手助けに活用してほしい」と。
昨年末、街の本屋もAmazonもhontoもすべて売り切れで、楽天で購入しました。
一生かけて読んでいきたいと思います。しかし、10年後、さらに路線廃止が進むと、大幅な改訂が求められるのかな。もう、鉄道自体が全て消えて、希望は過去にしか、この地図帳の中にしかなくなってしまうのかもしれません。
エネルギー革命までの常磐線は湯本・内郷付近を中心とする常磐炭田の石炭を京浜工業地帯に輸送する使命が第一であった。p.61
残念ながら、富岡や双葉あたりにはコメントは付帯されていませんでした。
【近畿日本鉄道山田線】松阪から大阪上本町まで、全国でも希少な行商人専用車両が走っている。伊勢志摩地区からの魚介類を運ぶため2020年3月までは日本最後の行商人専用「鮮魚列車」として運行されていたが、利用者の減少などから急行列車への専用車両「伊勢志摩お魚図鑑」連結に変更となった。p.124
今ちょうどBSで伊勢志摩の旅番組を放映していました。大阪と繋がってたんだ。
〈廃線〉【国鉄世知原線】明治期に軽便規格で敷設された石炭運搬用の専用鉄道を1933年(昭和8)から翌年にかけて地方鉄道化し旅客営業を開始した。その後この地域の他の線区同様、国有化と改軌が行われている。石炭産業が衰退し、臼ノ浦線と同じ1971年12月26日に廃線となった。p.173
同級生のいる世知原。遊びに行ったこともありますが、まさかあそこに鉄道が通っていたとは…。山間の茶畑のイメージなので、日本のダージリン鉄道みたいにならなかったかな。