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サブカル大蔵経198九龍ジョー『メモリースティック』(DU BOOKS)
現代の席亭、九龍ジョーさん。伝統芸能を最前線で応援し、プロレスと繋げてくれた刺激的な「kaminoge」での巻末エッセイが楽しみでした。忙しそうで、自虐的で、真摯で。多忙と連載に費やすエネルギーが尋常でないため連載を終了するとの文章を最終回で読んだ時は残念でしたが、カミノゲに対する手抜きできない愛情も感じました。
最近では神田伯山さんの活動をサポートされ、YouTubeの監修でギャラクシー賞に携わり、また坂口恭平さんのコーディネート的立場としてインタビューされたり、現代の〈芸能〉の目利き役だけでなく実際のサポート役として芸能の方々になくてはならない方になっている感じがします。
本書で描かれる松江監督との関係、ブレイク以前の志らく、マッスル…。今読むとまた一興でした。芸能と社会は無縁ではない。その葛藤と意義と矜恃を伝えてくれる伝道師なのかなぁ。かなり真面目なストイックな印象です。
死んではいけない。いつかは死ぬがその日まで死んではいけない。すべては生き延びるための技術なのだ。p.145
現代を生きる生の声を拾う。
原発制御装置を動かすための電力が足りず乗用車のバッテリーをかき集めてそれでも足りないと分かりその場で現金のカンパ募るフクイチ職員。カー用品店で買うのだと。事態の大きさと、対応策のキャップがブラックジョークとしか思えない。(中略)つい笑いが漏れる。しかしこの時東日本が終わるかもしれなかったんだ。p.194
芸能の背景にある日常社会を掬う。
藤浪よ、猪木を愛で殺せ!古舘の実況は叙事詩を内破し、叙情詩。p.246
プロレスを振り返り歴史的かつフラットに評価していく今だからの視点。
さくらえみ。女性は一度でいいから女子プロレスをやったほうがいい。p.253
さくらえみのプロデュース能力を教えてもらいました。私もIWAから見てましたが、まさかここまでの存在になるとは…。プロレスをあきらめない。
松江。マッスルはレンタルビデオぽいp.272
マッスルの評価。カミノゲ連載の後を継いだマッスル坂井。
談志。でなに、ブラック死んだって?あいつ(ブラック)は自分のことを完全に放り出すことができる。本当にすごいやつです。p.297
一般人と噺家の繋ぎ目、語り部。
志らく。フラ。談志曰く、志ん生の落語は己れを語っているから面白いんだ。p.304
この文章、「いだてん」を見ながら思い出していました。
いいとも!最終回、わずかに大きく見えた石橋、勢いずく太田、(中略)タモリの佇まいこそ超一流プロレスラーのそれだった。p.322
芸能史に残る一大事をプロレスに重ねる。タモリ、プロレスラー論。プロレスとな何か、表現とは何か、に繋がる示唆。
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