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サブカル大蔵経922萩田光雄/馬飼野元宏『ヒット曲の料理人』(リットーミュージック)
私は今まで歌謡曲を聴いているつもりが、実は「荻田光雄」を聴いてきたのか。
編曲家・荻田光雄の存在。
巻末の歴代編曲作品データを見ていくと、1971年から2018年まで、計3844曲。
木綿のハンカチーフ、イミティション・ゴールド、お化けのロック、乙女座宮、私のハートはストップモーション、サンタモニカの風、異邦人、さよならの向こう側、ひとり上手、さらばシベリア鉄道、待つわ、少女A、天国にいちばん近い島、恋におちて。アニメサントラでは、映画綿の国星、巨神ゴーグ、ロードス島戦記、声優では、堀江美都子や富永みーなら、さらには、高見知佳、森尾由美、角川三姉妹、荻野目姉妹、岡田有希子、堀ちえみ、早見優、井森美幸、河合奈保子、三田寛子、西村知美、南野陽子、坂上香織、中江有里、裕木奈江。そして、稲垣潤一、来生たかお、やしきたかじん、松山千春、さだまさし、和田アキ子、森光子。
一番びっくりしたのが、ガンダム0083のMIO「メン・オブ・ディスティニー」。あれこそ、荻田アレンジか…と納得。シーマ様の扇子が動くシーンのあの音響…。
編曲家、アレンジャーという仕事とは。
私の場合、主な仕事としてやってきた編曲とは、新作の楽曲を初めて世に出すための、いわば伴奏作りだ。だが、単なる伴奏だけではなく、イントロなどは半ば作曲と言ってもよいほどの大仕事になる。p.64
イントロと伴奏が曲に命を吹き込む。
その曲の世界をイントロで全部表現できていたんだから、すごいことですよ。(クリス松村)p.188
イントロや伴奏が凝りすぎてダサい感じもあって、歌謡曲は廃れたのかもしれない。でも、あらためてYouTubeで全部聴くと、当時の歌謡曲のイントロはすごすぎる。そして、それを捨ててしまった現在の貧弱。
カラオケ屋であなたが歌っているメロディーは、作曲家が作ったものです。それ以外に鳴っている部分が編曲です。p.64
本の扉にもドーンと記された言葉。
私の周囲で一番面白いけど迷惑な人、と言えば酒井さんだった。百恵さんの仕事は特に、酒井さんとの戦いだった。p.41
酒井政利。歌手を護る事務所。山口百恵から中森明菜への線。
小生意気なシンガー・ソングライターに「これは私のイメージじゃない」などと言われると、ちょっとがっかりした。私はあなたがなるべく売れるようにしたかったのだが…と、そこまでは言わないが、p.46
大人に歌わされているような歌手と、その対極の存在として勃興したシンガーソングライターの隆盛。しかし、歌わされているからこその色気は消え失せてしまった。
ある時期から五郎君はミュージシャン指向(ギターの腕はなかなかだが)になって、変わってしまった。p.52
野口五郎と、ひろみ&秀樹の分岐点。
「異邦人」は大ヒットしたが、私のアレンジに関しては、久保田早紀さん本人からは疎まれているかもしれないなと、今も思っている。そもそもの楽曲がああいうものではなかったのだから。「あれで良かったのです」と言ってもらえるのは夢で終わるだろうな。p.54
久保田早紀がいつも悲しそうに歌っていたのはそのせい?
編曲の場合は、仮に印税契約にしてもらっても、作詞家や作曲家のように、どこで使われても印税が入るというわけではない。p.81
編集者に印税ないのと同じでしょうか。最近は、漫画の単行本にも、連載時の編集者と単行本作成の編集者の名前が掲載されています。編集の時代。
一億総音楽家になってしまって、J-POPはその産物だと思っている。p.184
プロや職人が忌避された結果なのか。
歌謡曲っていうのは本来ゴージャスなものなんです。西洋文化も東洋文化も、エスニック的な要素も含めて、世界の音楽で成り立っていて、しかも現代的なであるのが歌謡曲の面白さです。荻田さんはその王道を歩み続けた。(佐藤剛)p.203
歌謡曲のすごさ。歌謡曲で育ってきた世代には現在のすべての音楽がどこか物足りないのはこういうことなのでしょうか。
ところで、お経にもイントロや伴奏があるのかも。付け加えたり削ったり、持ってきたり編み出したり。お経も宗派によってアレンジが違うとすれば、日常のお参りは、作詞家や作曲家より編曲家の影響下にあるのかも。
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