サブカル大蔵経521豊福きこう『矢吹丈25戦19勝(19KO)5敗1分』(講談社文庫)
一昨年、『あしたのジョー』を読破しました。読み終えた後の高揚感と虚脱感。長編ゆえのさまざなに浮かんだ想いをあらためて語りたくなる漫画でした。
力石の登場シーンのヤバさ、丈の流浪、梶原・ちば両先生の関係性、寺山修司の力石葬儀、ちば先生の苦悩など、さまざまな検証本や特集を読みました。
その中での一冊としての本書。講談社オリジナル文庫の肝煎りなのか、原画の掲載がかなり多くて、驚きました。少し著者の自分語りが多い気もしますが、貴重な〈データ主義〉の参考書だと思います。
豊福きこうさんは、水島漫画の検証本が刊行された時に飛びついて読んだ方でした。予選のデータ取りなど、私も似たような遊びをしていたので、それを突き詰めた著者の提示した漫画の楽しみ方・魅力の引き出し方に感服しました。昨年水島御大が引退された時、そのことを思い出しました。
ジョーのドヤ街救済計画構想、全体主義、まるで共産主義。p.16
初期のこの場面、指摘されてあらためて異様を感じました。橋本治『熱血シュークリーム』所収の、あしたのジョー論を合わせて読むと、また気になる箇所です。
ジョーは、一生力石には勝てなくなってしまった。p.19
そこからが、この作品の予想を超えた本質的なスタートになったようです。闘う理由を探すリング。
マンモス西の減量、13.62キロ。力石を凌ぐ。p.112
西のスゴさにも触れてくれました。ライバルも含めて脇キャラへのちばてつやの描き方が丁寧すぎます。たったひとコマの情報量のすごさ。
ジョー54度のダウン。段平、立て!ジョー!は三回。二回はリベラ戦。p.136
とにかく殴られるジョー。死因も含めて異様な作品といえます。その不可思議なところが、今でも読み継がれていく理由だと思います。
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