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サブカル大蔵経470高橋繁行『お葬式の言葉と風習』(創元社)
私も葬儀に立ち会うようになり、四半世紀経ちました。変化したことも多いですが、葬儀の今の形は、たまたま今だけなんだと思わされます。今の形がすべてではない。本書の匂い立つようなお弔いの世界。
味わい深い切り絵も著者の作品です。
【野送り】昔の野辺の送りは夜行われた。現代のように葬儀の開始が午前中という話はあまり聞かない。p.13
旭川は午前9時が一般的になりました。火葬場が混むと二番窯になるからと、先を競うように。少し前は10時が普通でした。本州はお昼からと聞いたこともあります。しかし、昔は日が暮れてからか…。
【笈巻く】女性参拝者の先達を務めた山伏が、彼女に言い寄った。今で言えば権力を嵩にきたセクハラである。悩んだあげく一夜を共にすると、たちまち山伏は死んだ。p.21
宗教者のセクハラ問題はかなり根深い。それが歴史を動かしている。安藤昌益が上京して見た僧侶の狼藉が、仏教批判につながる思想を生み出し、本願寺派3世覚如も稚児としてセクハラを受け、それが本願寺独立のモチベーションになったと考えるのは穿ち過ぎでしょうか。
【枕返し】滋賀県東近江市石堂町では、亡くなった人の膝を折るのは最後の親孝行と言われた。p.30
座棺にするため、折るんですね…。葬儀儀礼に触感、身体感があります。
今NHKのサンドのお風呂番組で、ゲストのIKKOさんが、和解できなかった父親の死化粧をしたのが最後の親孝行だったかもしれないという話を語られていました…。
【枕飯】長門の相島ではホトケは死ぬとすぐに信濃の善光寺に行くので、行って戻ってくるまでの間に枕飯を作っておかなければならないという。p.48
山口県から善光寺。枕飯スピード競争。
【泣き女・泣き婆さん】鶴屋南北の戯曲の中の泣き女「一升くらい二升位でもお望み次第、アアア〜」p.73
橋本治が卒論に選んだ南北。
【諷経】他宗派の僧が集まることも多く。滋賀県では各宗派いっしょに正信偈を唱えたという。p.100
〈フギン〉は道内でも使いますが、今は葬儀は導師のみのひとり僧侶がほとんどで、諷経の風習も伝説一歩前かも。もともとは超宗派、地域の寺の互助システムと言えるのかもしれません。
【穴掘り酒】土葬の葬儀で一番の大役は穴掘り役である。この役に就くものには酒が振る舞われた。p.114
酒振る舞い
【サカドモ】豊前の方言で濡れむしろのこと。低い温度にして死者をゆっくり蒸し焼きし骨の形がきれいに残るという。p.131
あえて骨を残す日本の火葬技術。
【ネフタ】野焼き火葬。座棺は燃えてなくなり、死体が踊って見えた。p.135
怖いけど、すごい世界。
【四十九モチ】血族の食い別れの行事。悔い別れ?p.180
死者へのお供えではなく、血族にとって最後の別れかもしれない振る舞いということなのか?
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