見出し画像

サブカル大蔵経172越野弘之『懐かしの昭和ドライブイン』(グラフィック社)

 子供の時、父の運転で遠出した時の夕食はドライブインでした。小上がりに座ってタバコ臭い店内でラーメンをすすり、帰りは後部座席で窓から星を眺める。それが私の旅の原風景のような気がします。

 それから40年、すっかり行かなくなったドライブイン。なので「ドライブインの本出ないかな〜」と昔から漠然と思っていた私にとっては本書は待望の書です。

 全国ドライブインカタログみたいな並べ方で、ウチの近くの「路傍」も載っていて嬉しい反面、閉店したお店もフラットに掲載されていて、行こうと思っても、もう行けない悲しさも、ページからあふれています。

 地域オタクとしてはたまらない情報が詰まった本なのですが、何か〈ドライブインという事象〉と〈カタログ〉は相性が悪いような気がしました。おそらくひとつひとつのお店に物語がありすぎて、それを通り過ぎれない自分がいるのかもしれません。

 おそらく著者も一軒一軒取材してお話しを伺っていただろうから、そのページをもっと読みたかったな〜という気持ちになりました。

 ドライブインは絶滅寸前の事象であり、その分可能性も秘めていると思います。ドライブインには、私たちが忘れてしまった昭和の時代が詰まっている気がします。

画像1

ドライブイン路傍。このお店の為に旧道は残された。p.24

 ある日何となくスマホでドライブインと検索したら、ウチから三キロくらいのところにあると地図表示が。えっ?と思って確認したら、40号線の「路傍」でした。そういえば看板出てるな…でも店の姿は見たことない。お店あるの?やってるの?

 そこですぐその地点に行ってみたら、国道から少し入った場所でちゃんと営業されていました。

画像2

 醤油ラーメンをいただいて、店内を見ると、お店ののれんに「創業昭和44年」の文字。私よりひとつ先輩だ。ほぼ同じ年月、すぐ近くで、ずっと頑張ってくれていたんだ…。五十年目にして初めて逢えました…。

画像6

画像4

画像3


愛山渓ドライブインp.32

 路傍は40号線の雄。愛山渓ドライブインは39号線のシンボル。旭川近郊で唯一通う温湯「愛山渓温泉」への入口にあります。昨年まではここの方が温泉の経営もされていましたが、今は違う経営者になり、どうなりますか…。

豊浦町いずみ、純喫茶内装、洋食メニュー、p.26

 道内の貴重な店舗。高速できた後どうなったか…。

雲沢観光ドライブイン、秋田県仙北町、最北の自販機ラーメンp.45

 最北の自販機ラーメン。この文言だけで行く価値ありますよね。レトロかつ近未来的な幻想的存在。

パイプ椅子、靴をぬいでこ上がり、コップ酒お冷や、おみくじルーレット、箸立て、コーラの冷蔵庫、p.55

 ドライブインあるあるですが、もう全てマストですね。「路傍」のテーブルはこんな感じです。

画像5

埼玉行田市「鉄剣タロー」自販機御三家。うどん、ハンバーガー、トーストp.72

 ここも今や観光地になってるのかなあ。

バスラーメン朝日軒徳島阿波市p.109

 ウチの近くにもバスラーメンありました…!バスを改造して車内で食べるお店。あれも今思えば幻の記憶…。旭川は寒いから屋台は無理。だからバスラーメンが唯一無二の「屋台」でした。そこにたまに夜遅く連れて行ってもらいました。あれって何だったのかなあ…。



いいなと思ったら応援しよう!

永江雅邦
本を買って読みます。

この記事が参加している募集